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俺の隣の美久先生  作者: ぜよ
5/11

心音

 林間学習当日、清々しい快晴だ。

 高校から、大型バスに乗り、約二時間で合宿施設に着いた。

 ついて早々、部屋に荷物を置き、体操着に着替え、ロビーに集合。


 今日の予定は、登山コースを班ごとに登る。初心者でも登れる簡単なコースだ。


「すごくワクワクするね。あかりちゃん」


「少し緊張しますが、皆さんとなら楽しめそうです」


「それじゃあ、行きますか。工藤隊長!」


「からかわないで下さい、斉藤さん」


「工藤さん、何かあったら、遠慮なくいつでも行ってください」


 こうして、俺たちは、山を登り始めた。

 思っていたより、あまり運動していないせいか、結構疲れてきた。

 区画ごとに給水ポイントがあり、2年の担任が何かあった時のために、見張っている。

 順調に登り、最後の給水ポイントまでたどり着いた。


「みんな、お疲れさん。あと少しだから、頑張って」


 2年1組の田中先生に励まされ、俺たちは、また登った。


「あと少しだ。頑張ろう!」


 後ろにいた工藤さんも結構疲れてきているようだった。

 ―工藤さんにペースを合わせないと


 その時だった。


「痛い!」


「どうしたの?工藤さん」


「少し、足を挫いたようです。大丈夫です。皆さんに心配かけたくありません。」


「歩くの辛そうだよ。どうしよう…」


「それなら、俺の背中に乗って。ゴールまでそんなに遠くないと思うし」


「そんな、安田さんが大変じゃないですか」


「いいから、遠慮しないで」




 私は、少し恥ずかしい思いでしたが、安田さんにおぶさりました。

 なんだか、すごく大きな背中、そして、安田さんの心音が身体に伝わってくる。

 どうしてだろう。私も、ドキドキしている。こんな感情、感じたことがない。もう少し、このままでいたいと私は思ってしまった。


「みんな、着いたよ!」


 ゴールに着くなり、工藤さんを先生たちのところに運んだ。幸い少しひねっただけで、それほどのケガではないようだ。その後は、痛み止めを飲んで歩けるようにはなった。


 施設に戻り、汗を流すために風呂に入った後で、夕食だ。



「お風呂の時間割、私たちだから、一緒に行こう、あかりちゃん」


「今日は、迷惑かけてごめんなさい」


「いいよ、そんなに考え込まないで。私たち、友達でしょ」


「はい!」


 私は、友達なんていらないと思っていた。一人で何でもできると。でも、こうして今日、みんなと一緒にいることの楽しさを知ることができた。友達と言ってくれた桐谷さんは、絶対に大切にしようと思った。


 お風呂にて、


「これからは、桐谷さんじゃなくて、唯でいいよ」


「恥ずかしいです。ゆ、唯さん」


「それでよろしい。あかりちゃんって、好きな人とかいるの?」


「急に何ですか、い、いないですよ!」


「怪しいな、絶対いるでしょ。誰?」


「言えません。」


「私そんなに信用ない?」


「わかりました。安田さんです」


「マジで、今日、それじゃあ、今日、ドキドキしたんじゃない。春人君におんぶしてもらったし」


「それは、そうですけど…」


「あかりちゃん、かわいい」


 この時間は、なんだかとても楽しい。唯さんとの距離も近づいた気がする。




 夕食を済ませると、今度は、今日のメインイベントの肝試しだ。

 工藤さんは、ちょっと無理そうなので、近くで見学しているそうだ。楽しみにしていたと思うのに。

 俺も一緒にいてあげよう。そうすれば、退屈しないだろう。


「先生、俺、調子悪いので見学しててもいいですか?」


「調子悪いんですか。私のせいですね」


「違うよ、一人じゃ、寂しいと思って」


 こうして、二人は、見学することになった。





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