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俺の隣の美久先生  作者: ぜよ
4/11

工藤あかり

 新学期が始まって、2か月、いよいよ期末テストだ。

 自分もテストの準備で忙しい中、美久先生は、俺に勉強を教えてくれている。分からない問題の解説がすごくわかりやすい。しかし、先生との距離が近いからか、時々、緊張してしまう。香水のいい香り、髪をかき分けるしぐさに見とれてしまう時がある。


「ちょっと、ちゃんと聞いてる?」


「あぁ、すみません、真面目にやります」



 期末テストが終了し、掲示板にテスト順位が張り出されている。


「今回はどうだ…。あれ、1位だ!マジかよ」


「すごい、春人君、私なんて、23位だった。見習わなきゃね」


「俺は、ほとんど変わらずか。15位。でも、なんで、1位なんてとれたんだ」


 去年は、5位~10位のあたりを行ったり来たりだった。これは、美久先生様様だ。お礼においしいスイーツでも買っていこう。


 そんな喜んでいる俺に冷ややかな視線が感じられた。

 それは、工藤あかりだった。俺と同じ2年4組で、去年の全テスト成績学年トップだった。それが、どうだ。今回は2位。相当悔しいのだろう。


「工藤さん、どうしたの?」


「いいえ、何でもありません」


 工藤さんは、寡黙であまり友達がいない。寄るなオーラを出しているようにムスッとして、誰とも話そうとしない。いつも休み時間は、一人で昼食をとった後、読書している。


 ―本当にそれで楽しいのか?



 その日の帰り道、今日は、雨が強く、傘が飛ばされそうだ。今日は、バイトが休みでよかったと思う。


 玄関を出ると、一人の女子生徒が立っていた。

 それは、工藤あかりだった。

 今日、あんなに睨まれたら、気まずい。でも、話さないわけにはいかないし。


「工藤さん、傘忘れたの?」


 その瞬間、鋭い眼差しがこちらに向く。


「はい、雨が弱まるまで待ってようと思います」


「今日はこのまま降り続くらしいよ。良かったら、俺の傘使って」


「それじゃあ、安田さんが濡れます」


「いいって、アパートまでそんなに遠くないし、工藤さん家、結構遠いでしょ。俺は、大丈夫だから。」


 工藤さんは、戸惑ってはいたが渋々傘を受け取ると


「ありがとうございます」


 ―いつも無表情の工藤さんが笑った。なんだ、笑えばとてもかわいいじゃん。


「それじゃあ、俺はこれで」


 そこで二人は別れた。



 来週は、林間学習がある。山奥で登山・バーベキューをする二泊三日の旅行。夜には、肝試しもあるらしい。俺にとっては、どうでもいいことだ。

 

―ここに美久先生がいればなぁ。

 

今まさに、クラスで話し合いをしている。


「それでは、四人組の班を作ってくれ」


 俺はたちは、三人、あと一人、どうしようか。ふと、目をやると、工藤さんが一人で話には入れていないことに気づいた。


「あと一人、工藤さんでいいかな」


「あの氷の女王かよ、まあ、春が言うなわいいけど」


「私もいいよ。結構どんな人か気になってたし」


 そして俺は、工藤さんに声を掛けた。


「工藤さん、班は、もう決まった?」


「まだですが…」


「俺たちの班に入らない」


 その時の工藤さんは、無表情の中にも少しほっとしているように感じた。

 班での話し合いは、工藤さんが仕切ってくれたおかげで、早く終わった。


「工藤さん、助かったよ」


「いいえ、皆さんに誘ってもらったので、これくらいは」


「そんなに畏まらなくていいよ、クラスメイトなんだしさ」


 その時も、あの時のような笑顔を見せた。


「工藤さんって、笑ってた方が可愛いよ」


「な、何を、そんな恥ずかしいことを」

 工藤さんは、少し照れていた。それを見た翔と唯は笑っていた。


「工藤さん、私、桐谷唯、こっちは、斉藤翔、これからよろしくね」


「よろしくお願いします」


 これなら、工藤さんもこの班で打ち解けられそうだ。



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