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俺の隣の美久先生  作者: ぜよ
2/11

お邪魔します!

 春人は、玄関の扉を開けた。


 すると、そこには、隣の水野美久さんが鍋を持って立っていた。


「遅くにすみません。肉じゃが作りすぎたので、もし、良かったら、食べていただけませんか」


 急のことに俺の頭は、真っ白になっていた。


「食べていいんですか。ありがとうございます。どうぞ、汚い部屋ですが、あがってください」


「はい、お邪魔します」


 俺は、何をしているんだ。そのまま鍋をもらって、帰ってもらえばいいのに、部屋にあげてしまった。

 心臓の高鳴りがやまない。部屋は、そんなに物がない分、散らかることはないけど、緊張する。


 春人は、リビングに招き入れた。


「今、お皿用意するので、水野さん、適当に座っていてください」


「とても綺麗な部屋ですね」


「いえ、何もないですよ」


 皿を準備し、水野さんの肉じゃがをご馳走になった。


「とてもおいしいです。スーパーで買ったものよりおいしい。」


「そう言ってくれて、うれしいです。そういえば、安田さんは、高校生ですか?」


「はい、泉谷高校の2年生です。水野さんは、どんな仕事をしているんですか?」


「私、高校の先生。教科は、英語を教えてます。と言っても、まだ、今年で1年目ですけどね。」


 歳は22歳、白鳥女子学院高校に今年赴任したとのこと。


 高校の先生・・・。別人なのは、分かってはいるのに、あの人と重なってしまって、どう表現したらいいか分からない感情に俺の心は、少し押しつぶされそうになった。


「そうだ、俺のことは、春人でいいですよ。敬語もいいです」


「それじゃあ、春君でいいかな?私のことも美久でいいよ」


 ―あの人にも、そう呼ばれていたなぁ。


「美久先生でいいですか?」


「ちょっと恥ずかしけど、うん。春君は、普段食事どうしてるの?もしかしたら、インスタントラーメンばっかり食べてるでしょ」


「その通りです」


「これからは、朝と夕飯は、私の部屋に食べに来なさい。高校生は、健康が第一だし、遅くまでバイトしてるんだから、遠慮しないで。お昼の弁当も作るよ。」


 なんでこの人は、数回しか会ったことのない、この俺のために世話を焼いてくれるのだろうか。美久先生とこれから、一緒にいられる時間が増えることは、とてもうれしい。


「ありがとうございます。もし、時間があるときでいいので、勉強も教えていただけませんか。わがままを言ってることは、十分承知しています」


「わかった。お役に立てるのなら。ご飯食べ終わったら、教えてあげる」


 今日は、幸せな1日になった。


 次の日、俺は、先生の部屋で朝ご飯を食べた。料理は、とてもおいしい。それだけじゃなく、心までほっこりする。弁当も用意してくれた。手作り弁当なんて、中学校以来だ。



 学校の昼休み、

「春、購買のパン買ってたやつが、弁当作るわけないし、その弁当どうした」


「春人君、絶対怪しい」


「誰に作ってもらったんだよ」


「どうでもいいだろ」


 結局、二人のしつこさに負けた俺は、美久先生が作ったことを話した。


「だから、この頃おかしかったんだ。もしかして、その人のこと好きになったんじゃない。」


「うるさいなぁ。まあ、そうだよ。でも、彼氏とかいるんじゃないの」


 唯がニヤニヤしながら、俺の方を見ている。



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