掃除(戦闘)開始
翌朝、いつもより気持ち早く目覚めた俺は、昨夜のうちに用意した掃除用のクリーナー、重曹、雑巾等の確認を済ませ、隣の瑛里子さんが目覚めた気配を感じたので、朝食の用意を始めた。
メニューは、ベーコンエッグ、サラダ、鶏ハムを使ったバゲットサンドを2人分用意し、瑛里子さんを朝食に誘った。
年下の俺に、毎回、御飯の世話になるのは、申し訳ないと固辞する瑛里子さんを、大掃除の前にしっかりとエネルギーを摂らなければならないし、既に2人分作ったので無駄にして欲しくない!と突っぱねて、無理矢理部屋に引っ張り込み、一緒に食事する事になったが、テーブルの料理を見た瞬間に、
「朝から、和彦君の料理を食べられると言うのは幸せな事だ!」
と満面の笑顔で語り掛けてきた(笑)
食事の後、コーヒーを飲みながら、洗剤や雑巾等、勝手に用意しましたので、良かったら使って下さいと、バケツに入れた、お掃除セットを渡すと、
「和彦君は、まるでコンシェルジュの様だ。
君に遠慮するのは、無駄だと心得ているので、今回は、何も言わずに、好意を受ける事にするよ。」
そう言ってコーヒーを飲み干し、
「ごちそうさま、これから部屋の掃除を頑張る。」
と部屋に戻る瑛里子さんの後に付いて、彼女の部屋に入って行く俺に気付いて、この世の終わりの様な顔をして、俺の顔を見つめ、
「何で?」
「昨日、部屋の片付け手伝うって言ったでしょ。」
「いや、その前に君は、学校に行かなければ!」
「期末試験終わったから、授業が無いので、行く必要ないでしょう、既に留年が決まっているのだから。」
「………で……でも、こんな不意打ちみたいに部屋に入られては………もう少し片付けてから入って欲しかった………」
「もう、しっかり見ちゃいましたから諦めて、さっさと片付けちゃいましょう!」
「うう、君は、この部屋の惨状を見て何とも思わないのか?」
「いや~、何で言うか、久し振りにやり甲斐の仕事かなって(笑)」
「君は、大物になるよ!私は、この部屋を見られて女としての価値が駄々下がりなんだけどね。」
「まぁ、喋っていても部屋は片付きませんから、口よりも手を動かしましょう。」
「君は、私の母親のようだな。」
「瑛里子さんは、実家でも部屋を散らかして、お母さんに、片付けなさい!って言われているのですか?」
「今更、隠してもしょうがないけど、私は、昔から物覚えが良く勉強はよく出来たのたが、それ以外は、からっきしで、生活面では、よく母の手を煩わせていたのだ。」
「じゃあ、頑張って部屋の片付け方と掃除の仕方を教えますので、覚えて下さいね。
分からないなら、何度でも教えますから、何度でも質問して下さいね。」
「では、先ず何からどうすればいいんだ?」
「先ずは、手前の台所から、要る物と要らない物を分けていきましょう。」
瑛里子さんに棄てる物をピックアップして貰ってるうちに、俺は、掃除の仕上げで使う重曹水を作る為に鍋に張り流し台横のカセットコンロの火に掛け重曹を混ぜ溶け終えたところで、火を止めた。
しかし、瑛里子さんと何食わぬ顔しながら、喋っていたけど、本当に女性が住んでる部屋なのか?
炊飯ジャーと電子レンジは、床に直置き、茶碗とお皿は電子レンジの上で埃を被っていた。
ハッキリ言って、瑛里子さんの家の台所には、食器棚等の収納が無いので片付かない上に見映えが悪い、俺は家に戻り使っていなかった3段ボックス持って来て、1番上に電子レンジ、その上に炊飯ジャーを、下の棚には食器を洗って収納する事にした。
瑛里子さんがゴミ袋に詰め込んだ棄てる物が2袋目に入っていたので、満タンになった袋をアパートのゴミ集積所に放り込み、その後は流し台周りから先程拵えた重曹水を使い磨き上げる事にした。
昼迄には、台所は仕上げる事ができそうだ。
先程、奥の部屋がチラッと見えたけど、先は長そうだ。