痴話喧嘩なのか?
今回、少し短いてす。
御笠川の質問は、何故、簡単に別れを受け入れたのか?
と言う事だったが、俺的には、そうなるのが最善と思ったからなのだが、どうやら御笠川の方はそうではなかったようだ。
見舞いに来ない彼女と治らない俺、入院が長期間し、それでもお互い連絡を取らず、とどめに俺の留年、御笠川程の美少女なら、留年坊主の俺なんかと付き合っていると、周りから好奇の目に晒されるかも知れない、それに、御笠川なら、俺よりも遥かに良い男と出会えるかもしれない。
そして、とどめの御笠川本人が、別れを切り出してきたのだから、何もしてやれなかった彼氏として、最後の彼女の我儘ぐらい、笑って応えてやらなければと思ったからなのだと、当時の心境を振り替えって御笠川に説明した。
御笠川は、目に涙を溜めて、
「沢村君が、あの時、別れたくないって言ってくれたら、私達まだ恋人同士でいられたのに………」
「何言ってるんだ?御笠川さん、それなら別れ話なんかしなければよかったんじゃないか!」
「だって沢村君、入院中、一度も連絡くれなかったじゃないの!私の事好きじゃないんじゃないかって勘ぐったりするわよ!」
「御笠川だって見舞いに来ないって言ったじゃないか。」
「そんなの、好きな人の痛々しい姿なんか見れる訳ないじゃない!
それに、見舞いには行かないって言ったけど連絡するなとは、言ってないじゃない!」
「それなら、連絡はOKって最初から言ってくれよ、分からないじゃないか!」
「兄貴、兄貴!」
御笠川と言い合ってると、いつの間にか登校して来た妹の美月が俺を呼び、
「痴話喧嘩もいいけど、見物人増えてきたよ。」
妹の美月に言われ辺りを見回すと、遠巻きに結構な人数の生徒がこちらを見ていた。
ヤバい校内でもトップクラスの人気を誇る美少女と、留年した事や、試験の成績なんかで、にわかに有名になった俺がエントランス前で痴話喧嘩なんて学校中に噂のネタをばらまいてる様なものだ。
「御笠川さん、話しは途中だけど、周りが増えてきたので、日を改めよう。」
御笠川は、何も言わず首を縦に振り、その場を後にした。
俺の方はといえば、妹の美月に、
「どうせ痴話喧嘩するなら、もっと人目に付かない所でしてよ、私が恥ずかしいじゃない。」
納得である、俺と美月が兄妹という事は、校内では結構有名だし、美月も御笠川程ではないがファンが多い女生徒の1人だ。
俺は、美月に「済まない、迷惑をかけた。」と軽く詫びを入れて、自分のクラスへと向かった。