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木笑み風~木枯らしのなかで奏でる~  作者: 玉時雨
正義とヒーロー
34/53

 蘇芳と別れてみやはは帰宅する。

 相変わらず寒い空はみやはを寂しくさせた。

 いつも隣にいた彼は、気づけばいなくなっていて。

 だから寒いのかもしれない。

 そんな寒さの中で。

 突然、温かい春の風が吹いたような気がした。

 風で靡く髪の毛の間から見える人のシルエット。

 それは見慣れたもの。

 彼のことなど見間違えるはずもなかった。


「おい、霧彦さんやい」


 わたしは彼に話しかけた。ふざけた笑顔を彼に見せつけるように。そうして彼に、今までの会えなかったことなんて気にしてないように見せたかった。

 彼は驚いたように振り向く。

 彼と話そうと思った。

 今まで話せなかったことを話そうと思った。

 けれど。


「神殿さんだ」


 わたしはまだ彼に会うことを許されないらしい。

 周りに人が集まってくる。霧彦と話そうとするといつもこうなる。まるで邪魔をするように。

 霧彦が寒そうな顔をした。心が冷え切った顔だ。そんな顔をさせてしまっているのはわたしだ。周りに集まる人間でも、不思議な力でもない。わたし自身がそんな顔をさせてしまっている。

 だから、それを破ろうと思った。

 これまで話してこなかった時間を、わたし達は歩まないといけないから。

 わたしは初めて群がる人に拒否の感情を突き付けた。

 それは一歩目の成長だった。

 これからわたしは変わっていくんだ。

 それからのわたしは逃げるのをやめた。

 逃げてばかりの自分を塗り替えようと思った。

 これまで以上に霧彦との距離を縮めようとした。雪原に入ってからも自分を奮い立たせて。

 性格も変えた。元気で在れるように。霧彦に馬鹿といわれようが元気に振舞った。

 彼はわかってたのかもしれない。わたしが偽りの元気を纏っていることに。それでも彼は黙って見守ってくれた。事情も聞かずにただ黙って見守る。それが霧彦の優しさだった。

 失踪事件が起きてからも、わたしは変わらないように努めた。わたしだけは霧彦の傍にいれるように。

 わたしだけは絶対に離れたくはなかった。

 わたしが存在ごと消失してしまって、忘れてしまっていても。

 彼は帰ってきてくれた。

 走って、息を切らして。

 これだから、霧彦はカッコいい。

 これだから、わたしは、好きになったんだ。


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