表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
木笑み風~木枯らしのなかで奏でる~  作者: 玉時雨
動いて、消えて
11/53

11

 帰る方向が同じみやはと霧彦は皆が帰るのを見送ってから、自分たちも帰路に就く。


「大丈夫か?」


 霧彦は気づいていた。彼女は必死に隠していたが、後ろで組んでいた手だけは今もなお、震えていることに。


「霧彦はすごいな~」

「なにがだよ」

「いやね、すぐそういうところに気づくところだよ」


 やっぱり彼女の手は震えていて。


「みやはちゃんのこと好きだから、すぐ気づくのかな」

「みやは……」


 霧彦はみやはの震えた手を握る。みやはは驚くが霧彦の手を振り払おうとはしなかった。


「わたし、消えたくないよ……」


 震えが増したように感じた。


「消えたくないんだよ。みんなと一緒にいたいよ」


 彼女は震えながら涙を流していた。

 みやはが小さいときに流さなかった涙を、成長してから流さなかった涙を、流していた。


「消えないよ。俺たちは消えない」


 子供をあやすように優しく声をかける。

 みやははこう見えても、精神的には弱い。みやはは断じて認めはしないが、霧彦はこういう面を何度も見てきた。

 小学生の時に学校で飼育していたウサギが死んでしまったときも、何日かはずっと塞ぎ込んでしまった。その時のみやはは——わたしがちゃんと見てれば、この子の変化を見落としていなければ死ななかった、そう思い込んでいた。

 何でも自分を悲観して見てしまう。それがみやはの脆い一面だ。強情で、ぞんざいで隠されたそんな、孤独に対する不安がみやはを苦しめる。


「消えたとしても俺はお前のことを忘れないから」

「……うん」


 気持ちの整理がついたのか、霧彦の言葉に寄りかかるようにみやはは霧彦の手を握り返す。

 優しい言葉を噛み締めるように強く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ