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帰る方向が同じみやはと霧彦は皆が帰るのを見送ってから、自分たちも帰路に就く。
「大丈夫か?」
霧彦は気づいていた。彼女は必死に隠していたが、後ろで組んでいた手だけは今もなお、震えていることに。
「霧彦はすごいな~」
「なにがだよ」
「いやね、すぐそういうところに気づくところだよ」
やっぱり彼女の手は震えていて。
「みやはちゃんのこと好きだから、すぐ気づくのかな」
「みやは……」
霧彦はみやはの震えた手を握る。みやはは驚くが霧彦の手を振り払おうとはしなかった。
「わたし、消えたくないよ……」
震えが増したように感じた。
「消えたくないんだよ。みんなと一緒にいたいよ」
彼女は震えながら涙を流していた。
みやはが小さいときに流さなかった涙を、成長してから流さなかった涙を、流していた。
「消えないよ。俺たちは消えない」
子供をあやすように優しく声をかける。
みやははこう見えても、精神的には弱い。みやはは断じて認めはしないが、霧彦はこういう面を何度も見てきた。
小学生の時に学校で飼育していたウサギが死んでしまったときも、何日かはずっと塞ぎ込んでしまった。その時のみやはは——わたしがちゃんと見てれば、この子の変化を見落としていなければ死ななかった、そう思い込んでいた。
何でも自分を悲観して見てしまう。それがみやはの脆い一面だ。強情で、ぞんざいで隠されたそんな、孤独に対する不安がみやはを苦しめる。
「消えたとしても俺はお前のことを忘れないから」
「……うん」
気持ちの整理がついたのか、霧彦の言葉に寄りかかるようにみやはは霧彦の手を握り返す。
優しい言葉を噛み締めるように強く。




