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霧彦たちは書かれた住所の元へ向かう。
瑠美の言葉は正確に示していた。
「なにもなかったよ。家も土地も番地ですらもね」
そこにあるはずの家と土地は何もなく、あるのは一軒家とマンションの間に通るマンションの陰に埋もれた細い一本道だけ。
「番地は……何番だっけ?」
「雪原、二―四十二」
「四十二なんて番地、ふられてないよ」
そう、ふられていたのは四十一と四十三。四十二なんて番号はすっぽりと抜けていた。
「なんだよ、これ……」
振り出しに戻らされた。振り出しなのかも怪しい。そもそもこれは手を出していい問題なのか。なにもかもがわからなくなる。
暗いところに突き落とされるような感覚。
外の冷えた空気がいっそうに冷えた感覚。
気持ち悪い……感覚。
一斉に押し寄せるそれらが霧彦たちを鈍らせ、硬直させた。
霧彦たちはその場を後にする。早く、その場を離れたかった。いつもうるさいみやはでさえ黙りこけてしまっていた。
それほどまでに、目の前で起きた光景は理解の範疇を超えたものだった。
それが自分たちにも降りかかるかもしれない、そんな不安と恐怖が霧彦たちを掻き立てる。
皆、それぞれの家の方向へ散らばっていく。これからどうすべきかを考えるために。
「あ、あのさっ」
一際、大きな声でみやはが皆を呼び止める。
「み、みんな明日も学校で会おうねっ!」
恐怖からなのだろうか、みやはの声が震えていた。
それでも元気と、勇気を振り絞って声を上げたのだ。
自分たちは大丈夫なのだと、消えたりせずに明日も会うと。
そう胸に刻まないと本当に消えてしまいそうで。
それは彼女とて一緒なのに。
「みやはは学校サボる気だったのか? 僕は行くに決まってるだろ」
蘇芳が当たり前のように言う。
これが蘇芳の馬鹿なところであり、蘇芳の良いところだ。
「なんだよ、それ~」
みやはの震えは取れ、緊張と恐怖は拭い去れていた。馬鹿げた日常が戻って、みんなに笑いが戻っている。それが、当たり前だとそれぞれが胸に刻んでいた。
みんな少しの勇気をみやはから貰い、それぞれの帰路に就く。
明日も学校で会おう。
何気ない言葉が何気なくなる。
狂気じみた現実。
けれどそれも含めての日常なのかもしれない。
この四人の関係は崩れないと信じて。




