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貴方は、守りたいものの為に自分を殺せますか?
それが正しいことだと思いますか?
正しければそれでいいのですか?
それでもわたしは信じましょう。
自分の為に、貴方の為に、世界の為に……。
それでもこの開け放たれ、
何もかも枯らす、
澄み切ったこの青空は、
誰にでも平等に光を運んでくる。
学校というものは、いかに自分を隠せるかということを競わせるところだと思っている。なぜかというと、教師という人種に目をつけられれば授業中に指名され、空き時間に教材を運ばされ、終いには自分を笑いものに仕立てるからだ。
って言うのは建前で……ただ騒がしいのが嫌いなだけで。
黒髪で覆われた頭を擦りながら、窓の外に広がる青い空を眺めていた。
「きーりひこっ」
やっぱり、来た。
安寧はやはり、やってこなかったようだ。
「来るなよ、来るなって」
きりひこというのは名前で晏御霧彦が本名だ。
元気な少女は神殿みやは。霧彦にとって小さい頃からいる腐れ縁というやつだ。
桜色の肩ほどまで伸びた髪と赤みがかった金目が目の前で飛び跳ねていて、霧彦は鬱陶しいと内心思っていた。そのせいか、無意識に嫌そうな目をしてしまっていた。
「霧彦はもっと学校を楽しむべきだよ。ほら見て? こんなにもみんなが笑ってるよ」
「違う、みんなは学校が楽しくて笑ってるんじゃなくて、俺たちがおかしくて笑ってるんだ」
皮肉じみた言い方で言うと、彼女はムスッとしてしまう。
「なんだよ~、わたしといるのがそんなに不満なのかよ~。そんなこと言う霧彦は嫌いだぞ」
「不満とかそういうことじゃなくて……」
彼女は——。
「今、ホームルーム中」
場所や時間を考えずにやってくる。要は、アホなのだ。
しかも、同じクラスだというのに。
考えるに、今まで寝てて起きたらつまらなそうな顔してたから絡みにきた、そんなところだろう。
女教師が困りながら──。
「晏御~、もう大丈夫か~?」
「すみません、黙らせたんで続けてくださーい」
そのまま担任が明日の連絡事項を伝える。これがいつもの光景。これが、雪原学園の日常だ。