68・ブランベルク別邸到着
お茶会の後、キーアリーハとウィル君に金子が渡される。
「軽々しく使うと、変な輩に目を付けられるから気を付けなさい?」
渡された金額に驚くウィル君に、キーアリーハは釘を刺す。
……キーアリーハも金銭感覚がオカシイ感じがあるんだけどなぁ?
あと軽くするためとは言え、全部金貨って使うとき困るじゃん。釣り銭が出せない店があるって事はキーアリーハも言ってたしさ。
「王国の学園近くにある公爵家の息がかかった店で両替して貰って……確かに面倒臭いけど、金貨百枚は嬉しい!」
金銭感覚は、ウィル君の方がキーアリーハよりしっかりしてそうだね。
「ガウスと合流したら、金子はガウスに渡せ」
父ちゃんに言われ、ウィル君はガックリと肩を落とす。
「王都の高級料亭……行ってみたかったのに」
「アタシが連れて行ってあげるわよ……大ポカしなきゃ卒業までにね?」
キーアリーハの言葉に、ウィル君は畏まる。
「不肖、私ウィルは、お嬢様に絶対の忠誠を誓います!」
いや、そう簡単に食いモンに釣られなさんなや!
オレは呆れるけど、ウィル君は簡単に掌返しはしないだろう……ヘッドハンティングを受けても応じなかったみたいだしさ。
色気より食い気な所はあるけど、ウィル君は普通に義理堅い感じだし裏切ったりとかはないと思うけどさ。
……まあ、そんなわけで、オレ達は学園に戻ることになったわけよ。
まあ、その前に落っことした首輪の回収に行ったけどさ……父ちゃん達には内緒でね。
山を越えたあと低空飛行で引き返し、あのストーカーに撃墜された辺りまで戻ってきたわけだ。
「この辺りだと思うんだけどなぁ?」
キーアリーハは周囲を見回しながら言ってくれる。
「首輪の材質って何スか?」
「革……つまり革細工の首輪ね?」
ウィル君の問いにキーアリーハは応える。
「革細工……獣に食われちゃってるかも?」
……有り得るかも。
ウィル君の言葉にオレは思う。が、キーアリーハは慌てていない。
目を閉じ周囲を見回し……何かを見つけたようだ。
たぶん、魔法を使ったのだろう。
小走りに木陰に向かうと何かを拾い上げる……あの首輪である。
「うん、特に汚れてもいない……」
首輪を拾い上げ、キーアリーハは嬉しげに笑う……正直、オレって首輪は付けられたくないんだけどなぁ?
そう思うオレの気など知らないキーアリーハは、尻尾に首輪を巻き付ける……今のオレ、大猫モードなのよね。
尻尾の首輪が抜け落ちないよう尻尾の太さを変えて対策を取る……また強烈な光を浴びせられない限り落とすことはないだろ。
「じゃ、今日はフランベルクまで行って一泊だな?」
オレの問いにキーアリーハは異存無いようだ。夜通し飛べば学園まで一気に行けるけど、そこまで無理する必要なんて感じてねぇしさ。
ひょっとこしたら、ブランベルクでガウスさんと合流できるかも? そんな期待もあったわけだ……ガウスさん、オレの同郷人だしさ。
でも、辿り着いたブランベルクの別邸にはガウスさんは居なかった。あの後、ここに一回も顔出しもしてないんだとか。
て事は、学園の周辺で、未だ情報収集をやってるわけね……目立たず動いてるから、あのストーカーにも目は付けられていないってことだ。
……だと良いなぁ?
あのストーカーの性格からして、ガウスさんを退けてたら大喜びしてオレ達に自慢するだろうから大丈夫だと思ってる……思いたいけどさ。
そう、ガウスさんの心配をするオレを尻目にキーアリーハは言ってくれたよ。
「ご飯の前にお風呂ね……トイレの後、お尻を拭いてないシャドウをキレイにしてあげる!」
「いや、オレって身体洗われた後、一回も糞してないんだけどっ!?」
オレって召喚されてから、まだ一回しか糞してないぞ?
新陳代謝が普通の生き物とは違うっぽくて便意や尿意は、あんま感じないのよ!
助けを求めるようウィル君に視線を向けるが、ウィル君は目を閉じオレに向かって合掌する……
猫の身体のオレって、身体が水を弾かないのよ……キーアリーハのお肌は水を弾くんだけどさ。
だからオレは濡れるのが嫌なの!
逃げようとするが、キーアリーハの影法師の触手に捕まる……ガチで逃げに徹すれば触手を引きちぎって逃げられなくもない。が、オレは使い魔でキーアリーハは主人という関係もあるんで強行策も取りにくい……つうか取れない。
そんなわけで、オレは例の高級浴槽のある風呂場に連れ込まれ、ケツの穴と股間のアレまで素っ裸のキーアリーハに念入りに洗われたよ……猫の姿じゃ全然嬉しくねぇよ!
人間モードになれってか?
なんか、今の関係性が壊れそうで、それも嫌なんだよな……普通に欲情しそうだしさ。
……ともかく、オレは風呂が大っ嫌いだ!




