63・一心同体っ!?
力強く羽ばたいちゃいるけど、なかなか高度を上げられない。
まあ、重力に逆らっての上昇なんで当然なわけだけどさ……渡り鳥なんかは上手く上昇気流なんかを使って高度を稼ぐみたいだけど、オレ達は渡り鳥じゃないのよね。
そーいや、ファルコンも高度を稼ぐのに苦労してたっけ……だからキーアリーハは偶然会った風の長に突風が来るタイミングを尋ねたと。
けど、今は自前で突風を呼ぶつもりっぽい。
「風の子らよ! その力でもって我を高所へっ!」
キーアリーハの言葉に上昇気流が巻き起こされ、それを両翼で捉え一気に高度が上がる。
……風の小精霊って、にゃんかオレ達の事を怖がってにゃいか?
「怖がって逆らえないから、アタシ達に従ってくれるのよ」
オレの心を読んだかのようにキーアリーハは言ってくれたよ。
「それって、精霊との折り合いが悪くならないか?」
今度は口に出して言ってみる……うーん、オレの口調なんだけど声はキーアリーハだよ。
「わかんにゃい。風の長が力を貸してくれた名残を察して小精霊が怖がってるのか、それともシャドウを怖がって風の小精霊が力を貸してくれるのかで、色々と違ってくるのよ?」
なんか猫口調を使ってくれてますね、キーアリーハさん……ひょっとこしてオレの思考を読めたりしてる?
「ひょっとこしなくても、読めてるわよ?」
……オレのプライバシーは何処に?
「表層しか読めないから、大騒ぎすることでもないでしょっ!」
分離を図ろうとするオレを、両手で押さえ込みつつキーアリーハは言ってくれる。
十分な高度はあるんで、大猫モードでキーアリーハを回収する余裕も、そのつもりだってオレにはあるぞ?
「それは全然、心配してないわよ! あたしは、この状況で、もっと色々試してみたいことがあるの!」
ほう、町を一つ消し飛ばし『見ろ。人がゴミのようだ!』と高笑いしたりとか?
「なワケ無いでしょうに……」
冗談で思っただけの事にも、しっかり反応してくれますね?
「まあ、単純に自在に空を飛んでみたいって事だけな気配は察してるけどさ」
「風の精霊を従える事ができれば、もっと空を自由に飛べるのに……って、ずっと思ってたの」
ファルコンでも、結構自由に飛べたんじゃね?
「自分だけの力で飛んでみたかったの!」
……今、オレの力も使って飛んでないですかい?
「完全に自分の意志で飛んでみたかった。そういえば正しく伝わるかしら?」
まあ、ファルコンじゃ垂直に近い上昇は無理だろうけど、今のキーアリーハなら風を使った垂直上昇も可能……鳥より自在に空を飛べそう。
「合体しなくてもオレが風の精霊使えるなら、もっと便利じゃね? 試してみたいけど良いか?」
「今日はダメ。今はアタシが、この身体の力を確かめてみたいの!」
そう言うと、キーアリーハが左手を強く握りしめる。すると左腕が紫電を帯びた……雷の小精霊が大喜びして集まっているのだ。
にゃるほどね……キーアリーハは雷の精霊とは比較的、相性が良いのね。だから暴発気味だったけど雷の魔法はラッペトス戦でも一応は使えたと。
そんなことを思っているオレを尻目に、キーアリーハは真横に向かって雷を放つ。
嵐の時に見るガチな落雷。それに匹敵しそうな雷がキーアリーハの左手から水平に伸びてゆく……もし真下に向かって地面を直撃していたら、轟音が響いていたと思うな。
……今のキーアリーハなら、あのストーカーも怖くないんじゃね?
「うん。シャドウと組んだ今のアタシなら、あのストーカーも怖くないわね。たぶん、今のアタシなら地水火風の四大元素に、それ以外の精霊も以前の比じゃないぐらい上手く扱える!」
自在に扱える……とは言わないのね?
「精霊は気まぐれだから、突然嫌われるとかもあるのよ……酷使しすぎると嫌われるかしら?」
なら、一族が得意とするノーライフキングの力に磨きをかけたらどうね?
「アタシもお父様も、人形遊びは正直、好きじゃないのよ」
オレの考えに、声で答えつつキーアリーハは楽しげに空を舞う。
でも、それが取り柄の家系なんだろ?
「そうなのよね……好きじゃなくても便利に使えるし、他に才はないしで一芸者は辛いのよね」
不完全ながらも精霊を扱えるってのは、魔法の使えない一般人とじゃ雲泥の差じゃん。
「……その発想はなかったわね」
オレの考えに、キーアリーハは今初めて知ったとばかりに言ってくれるよ。
「じゃあ、アタシはこれからどうすれば良いの?」
知らねぇよ! ……とは思うが、別に行動は変えないで良いと思う。
ブランベルクでも町中歩いたけど、御領主様の娘だからといって特別扱いされてなかったしさ……周囲を警戒して張り付いてるのはオレとガウスさんぐらいなモンだったよ。
特別扱いしないよう御触れが出てたとしても、護衛がオレとガウスさんの一匹と一人だけって状況から、御領主一家が領民から嫌われていない……というか、護衛不要なぐらい領民から慕われてるって事でもあるわけだしさ。
「つまり、シャドウはアタシにお父様みたいな立派な領主になれと……そう言いたいわけだ」
いや、オレが御気楽極楽に飼い猫ライフを遅れるんなら、手抜きな統治でもとやかく言わんよ?
「つまり、足元を掬われないよう善政を敷けと」
……突き詰めるとそうなるのか?
つか、この合体状態って、にゃんかヤバい感じ。
どこかでオレがオレじゃなくなりそうな気配をバリバリに感じますぜ? にゃんか、オレがキーアリーハに呑み込まれそうな感じ……
だから危険を感じたオレは、とにかく自分の本体部分を最優先してキーアリーハの胸から飛び出した。
その力の大部分は、キーアリーハの身体の中に残したままだ……まあ、元々はキーアリーハの魔力なんで返しただけだ。
オレが飛び出した事を、キーアリーハは信じられないと言いたげな視線を向ける。けどね、オレはキーアリーハの使い魔って立場に不満はないが、キーアリーハに成りたいワケじゃないのよ?
黒かったキーアリーハの髪と瞳が、ゆっくりと元の栗色の髪と緑の瞳に戻る。
……オレって魔力の大部分をキーアリーハに置いてきちまったけど、なんとか行けるか?
そう思い、意を決しオレは翼大猫モードに変態……もとい変身しキーアリーハを背中で受け止めた。
まあ、強引な分離を強行したことの罵詈雑言は甘受するぜ?




