59・伏兵ですかい?
唐突に爆音が響く。
何事? そう思ったら花火のようだ。
「お父様ね……アタシに早く帰ってこいって言ってるんだと思う」
まあ、結構、ガチな戦闘をやっちまったからなぁ……
「ああ、あのストーカーから閃光を浴びせられたとき、体を削られて工房で貰った首輪を落としちまったよ……」
「シャドウが無事なら、それで良いわよ」
そういいつつ、キーアリーハはオレを抱き締める……猫状態だと、あんまり嬉しくないなぁ。
「ガチな空戦やっちまったけど……って、街にも、まだ魔物が居るじゃん!」
「でも、司令塔である遠隔操作の魔物は叩いたから、大した事はできないと思う」
グリフォンやサンド・ゴーレムとの戦いから察し、複数の体を同時に操るってのは、あのストーカーには荷が重いみたいだな……オレも複数の影法師は同時に操れそうにないしさ。
キーアリーハも無理っぽいが、キーアリーハの影法師は自立行動ができる上に学習能力もあるんで、大雑把な指示で動いてくれる……あのストーカーの放つ使い魔は指示に従わなさそうなんで、体を遠隔操作して使うしかないわけね。
……人望のない総大将なんだな、アイツってさ。
「オレ達が戦ってたことに、父ちゃん気づいちまったかな?」
「たぶん……いや、絶対に気がついてる。影法師を使うのは日常レベルだけど、ここでは滅多に使わない精霊魔法を使っちゃったね……あそこまでの威力は前のアタシには絶対出せなかったしさ。いや、アタシ一人じゃ、あの威力は出せなかった」
そーいや操り人形が乗ってた大コウモリ。紫電の魔法で焼かれ爆発してたっけ。
なんか謙遜してますが、たぶん自覚できた段階で次からできると思うんだがね?
「父ちゃん心配してるだろうから、ちゃっちゃと帰っちまおうかい」
キーアリーハは何か嫌そうな気配を漂わせてますね……まあ、ガチバトルやっちまったあとで、洒落にならない大喧嘩が親バレした直後みたいなモンだ。そりゃ帰りづらいわ。
でも、正当防衛……って、この世界に正当防衛の概念があるかは知らんが、ああでもしなきゃ命に関わるわけで間違ったことはやってないぞ?
まあ、この一件でキーアリーハが学園に戻れなくなるかも知れんけどさ……父ちゃんとしては、キーアリーハを実家に縛り付ける格好の口実にできるしさ。
「お父様用に作ったお土産……もう持っていかれちゃったかなぁ?」
「帰りによって確認すりゃ良いじゃん。そうは時間食わねぇぜ?」
オレは、そう言ってファルコンを工房へと直行させる。
「姫様、ご無事でしたか!?」
着地と同時に、工房から人が駆け出してくる……いや、状況的にオレ達が勝ったってのはわかるが、無事で済んだかまではわかんねーか。
「無事よ……学園で、ずいぶん腕を上げたからね」
いや、あえてツッコミは入れないが、腕を上げたのは学園から実家に帰る道中だし、ここ二三日だぞ?
……それ考えると、キーアリーハの化け物っぷりが鮮明になるな。
「お父様へのプレゼント……もう持っていっちゃった?」
「ええ、もう届いているかと……」
工作終えて、この工房を出て、そんなに時間経ってないんだけどなぁ?
……って、ヤバ気な気配。
恐らく司令塔になる使い魔も一緒に街に忍ばせたんだろう……が、この使い魔。数は多いがそこまで強くなさそう。
コレなら、オレだけでも手に負えそうだわ……いや、ちと数が多すぎるか?
もう一回、キーアリーハと合体すれば楽勝だろうけど……
そんなことを考えているとキーアリーハも気づいたようだ。
キーアリーハはオレを抱き抱えてるわけで……キーアリーハの探知能力をオレも借りられるわけだ。
……やっぱ、オレより探知能力も上じゃんかよ。オレってキーアリーハに必要なのかねけ?
とりあえず、キーアリーハと離れて完全自立行動できるってのは大きなメリットだけどさ。
キーアリーハは、周囲に悟られぬよう迎撃体制に入ったっぽい。影法師の槍触手をいつでも伸ばせる状態に入ったようだ。
あと、ストーカーとは別の魔法の気配が無数に……って、なんでキーアリーハは迎撃体制を解除しちまうのよ?
オレが疑問を持った途端、ストーカーの使い魔がガンガン数を減らしてゆく……味方ってことをキーアリーハは知ってたわけね。
「お父様が兵を放ったみたい」
……兵隊つうか人間の気配じゃないんだけど?
「キーアリーハん所って、人外も兵隊にしてるの?」
「甲冑に仮初めの命を吹き込んで使役する……コレがお父様の得意な魔法。まあ、甲冑である必要性はなくて柔らかかったり関節みたいな物がある無生物なら何でも操れるみたいだけどね」
キーアリーハの父ちゃんも尖った魔法使いなんだねぇ……いや、キーアリーハ同様、苦手なりに精霊魔法とか他の魔法も使えるかもしれんけどさ。
で、兵隊ってのは一種のゴーレムの事か……
中身空っぽの甲冑が害虫駆除に動いてるよ……とりあえず司令塔だけはオレが叩いておこうか。
そう思い、キーアリーハの腕から抜け出すと小石を咥えつつ大きく鼻から息を吸い込む……風船みたいに体が大きく膨らんだよ。
その状態で咥えた石を飲み込み……当たり前だが喉につかえた。その喉につかえた石を、体に溜め込んだ空気の圧力で司令塔に向けて打ち出したわけだ。
射撃は見事命中……仕留められたみたいだ。あとはキーアリーハの父ちゃんに任せてもかまわねぇだろ。




