54・父娘
キーアリーハがオレを、きつく抱き締めてくれている……人間モード。つまりサー君と合体した状態だったら嬉しいとか思ったりするのかね?
ただ、通常形態の猫モードであるオレは、単に拘束されているだけにしか思えないわけだが。
「ちなみにキーアリーハ。ここに、どれくらい居るつもりだ?」
オレは聞いてみる。
エレンスゲが居る手前、ここまで、あのストーカーがチョッカイ掛けてくるって事は無さ気なふいんき。なら、オレ一人で単独行動しちゃっても構わねぇと思うんだ。
ウィル君も居るし、股間のアレも無くなってキーアリーハに対する興味も失せた感じなんで、安心してキーアリーハの護衛を任せられると思う。
「七日から十日ぐらいかな? 学園に帰る前に、いくつか回ってみたい街もあるしさ」
にゃるほどね。つまり七日と考えとけば問題無さげだわね。
「あのストーカーもエレンスゲが居る手前チョッカイ掛けられないだろうから、オレしばらく単独行動したいんだけど?」
「駄目。アナタはアタシの半身です!」
繰り返しキーアリーハから言われてるけど、オレには全然、キーアリーハを半身とは思えねぇんだけどな?
「お嬢様と一緒に行動すりゃ良いじゃん。オレ一人よりシャドウさんも居てくれたほうが、お嬢様の守りも堅くできるしさ」
ウィル君もキーアリーハの肩を持つように言ってくれる。
いや、ここに居る以上、キーアリーハの安全確保は万全。そう思ってるからこそ、オレは一人で羽を伸ばしたいわけよ?
オレは身体を半分液化させキーアリーハの腕の中から抜け出し肩に乗る。
「オレ、この世界の事をもっと知りたいのよ。だから、街に出ばって情報収集したいワケよ?」
キーアリーハ同伴になっても構わねぇんで、そう言ってみる。
「じゃ、朝御飯が済んだら街に出ましょうか……でも、アタシから離れちゃ駄目!」
まあ、この辺りが適当な落とし所かね……
そんなワケで朝飯となったわけだけど……何ですかココはっ!?
朝っぱらから宴会でも始めるつもりですかっ!?
大きくて細長いテーブルの上に所狭しと豪勢な料理が並べられ、その両脇には給仕係が十人ほど整列している……
「なあ、キーアリーハの実家での朝食って、毎日こうなの?」
オレは思わず聞くが、たぶん違うと思う……じゃなきゃブランベルクでの晩飯との辻褄が合わねぇしさ。
「そんなワケ無いでしょう……」
絞り出すような声でキーアリーハは言ってくれたよ。
テーブルの席は二つだけ……たぶん、キーアリーハと父ちゃんの為だけに用意された料理だ。コレ、絶対に食べきれないぞ?
空気を読んだのか、ウィル君は黙って引っ込んで行く……特に不満はなさそう。後で、お下がりを回して貰えるんだろうけどさ……オレだったら文句は言わんにしても不満の表情ぐらい浮かべるぞ?
「猫用の檻も用意しておいた。猫は檻に入れ朝食を始めようか」
檻……まあ、別に構わんけどさ。
たぶん、オレなら出ようと思えば出られると思う……オレの体って変幻自在なワケだしね。つか父ちゃんや。そこまでオレが嫌いですか?
「お父様。シャドウはファミリアで私の半身です。シャドウを檻に入れると言うのなら、私も檻に入れてください」
「キーアリーハ。父ちゃんを困らせるんじゃ無い」
父ちゃんが困惑した表情を浮かべたのでオレは言ってやった。
昨日、キーアリーハから充電させて貰ったんで別に腹は減ってないのよ。それにキーアリーハと一緒に行動するなら、いつでも充電して貰えるんで切羽詰まった事にはならねぇしさ。
そしてオレは、キーアリーハの肩から飛び降り給仕係と並ぶように座ってやる……が、そんなオレを抱き上げてキーアリーハは席に着く。
「別にオレ、腹減ってねぇぞ?」
「アタシは空いてる」
「じゃ、オレは黙って大人しくしてるよ……」
たぶんキーアリーハの行動は、オレに対する抗議の意味もあるんだろね……で、父ちゃんの方はキーアリーハに、そこまで強気に出れない感じ。
こりゃ、オレの飼い猫生活は、あのストーカーさえ何とか出来れば安泰だな。
父ちゃんは、キーアリーハのご機嫌を取ろうと積極的に話しかけて来るのにキーアリーハは素っ気ない……父ちゃん可哀想。
……つかキーアリーハさん。結構、食いますね?
そりゃ、魔力をかなり消耗した気配がありましたけどね……オレの充電でさ。
……やっぱ、オレってキーアリーハのオプション枠からは逃れられないのね。
まあ、オレはキーアリーハに召喚された使い魔なんだし、仕方ないと割りきるしかないのか。
「お父様。食事が済んだらシャドウと共に街まで出掛けます」
「ならば、私も同行しよう!」
「お父様が街に出ると大騒ぎになるので結構です!」
父ちゃんの言葉に間髪入れずキーアリーハが応える……やっぱ、父ちゃん可哀想。
そして食事を終えたキーアリーハは立ち上がる。
「なにか、お土産を買ってきますので」
その言葉に、キーアリーハの父ちゃんが嬉しそうな表情を浮かべたのをオレは見逃さなかった。
……つかキーアリーハさん。
土産なら学園かブランベルクで買っておくべき物でしょうに?
半ば呆れるオレに、キーアリーハの意思が流れ込んでくる……やっぱオレって使い魔なんだよね。
だから、歩き出したキーアリーハの股の下に潜り込むと巨大化し、その背にキーアリーハを乗せる。
この流れから察し、キーアリーハはウィル君とは行動を共にしたくない感じだ……まあ、良いやね。
そんなワケで、オレはキーアリーハの意思に従い外に駆け出すと背中に翼を生やして空へ飛び立ったワケだ。




