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ファミリア  作者: あさま勲


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44/59

44・人型になれた?

 首を跳ねられた翼猫の身体が、まるで空気に溶けるかのように消えて行く。

「ちょっと、シャドウっ!!」

 キーアリーハが泣き叫び、そしてオレの身体……翼猫が消えた場所へと向かってファルコンを急降下させる。

 いや、オレって死んでないんだけどさ……キーアリーハ殺られちまったと勘違いしたっぽい。

 そして砂巨人が、キーアリーハに向かって魔力の刃を振りかぶった。

 ヤバいじゃんっ!

 そう思ったから、優先順位をウィル君からキーアリーハへと切り替える。

 あのストーカーもキーアリーハを殺す気は無かったようで狙ったのはファルコンだった。

 片翼を切り飛ばされたファルコンは、バランスを崩しキーアリーハを振り落として周囲に溶けてゆくかのように消える。

 だから、オレはキーアリーハを受け止めるべく落下地点を目指し走った。

 たぶん、今のオレってウィル君と同じぐらいの速さで動けるんじゃないかな?

 じゃなきゃ、キーアリーハをこうやって受け止めることは出来なかったと思う。

「もう一回、ファルコンを呼び出せるか?」

 キーアリーハに呼び掛けつつ砂巨人に視線を向ける。

 巨人といっても縦に引き伸ばされた針金みたいな身体で全然、強そうに見えねぇな……

「シャドウなのっ!?」

 身軽に動きたいのでキーアリーハを降ろしたわけだが、オレの首ったまに泣き笑いで抱き付いてくれたよ。

 仕方ないんで再び抱き上げ、そして砂巨人の斬撃を避けるべく後ろに向かって飛び退いた。

「どうやら、そうらしいな……ちぃと暴れたいんで、安全な場所に待避してくれると有難いんだが?」

 オレの言葉にキーアリーハは、ようやく首から手をほどいてくれた。

 コレで、この身体の全力が出せる。そう思いつつウィル君の刀を抜こうとするが……抜けねぇっ!

 いや……鞘の鯉口って、刀をしっかり咥え込んで簡単には抜けないようにする安全装置って側面があったんだったっけ。

 それを思い出したんで、左手で鞘をしっかり握り、親指で鍔を力一杯押し出してやる。

 途中で親指からの圧が抜ける……コレが鯉口を切るって感覚ですかい。

 抜刀術ってのは事前に鯉口を切った状態かつ相手に、それを悟られず切り伏せる技って事で、ある意味、卑怯者の剣術ですなぁ……

 そんなことを思いつつオレは抜刀する……いや、この刀って馬鹿にできない魔力を帯びてるじゃん。

 オレは刀に感心しつつも砂巨人への警戒は怠っていなかった。だから、砂巨人の繰り出した斬撃を正面から受け止める。

 ……なぜ避けなかったのかって?

 そりゃオレの近くにご主人様たるキーアリーハが居るからだよっ!

 この魔剣を握った事で、魔剣の性能が大雑把に理解できる……『分子振動刃・紫電改しでんかい』大半の物をブった斬る事ができるらしい。

 岩巨人を刻んだのはウィル君の実力だけじゃ無理で、この魔剣の性能によるところが大きかったわけね。

 だから、砂巨人の振るった魔力の刃をブった斬るイメージを浮かべた途端、その魔力の刃が断ち斬られた。

 すげぇぜ、この魔剣っ!

 そんなことを思いつつも、オレは別の事に驚いてたりする。

 サー君は全身真っ黒で造形も皆無な、のっぺら坊な人型だったんだけど……今のオレって黒い長袖シャツと長ズボンを身につけた人間の姿っぽい。

 だってさ、黒い長袖シャツから飛び出した剥き身の手が、ウィル君の持ってた魔剣を握ってるしさ。

 アレ? そう思って、刀を握っていない手で自分の顔と頭を触ってみる。

 目、鼻、口があって髪だって生えてるじゃん!

 そしてオレに視線を向けるキーアリーハは、どこか顔を赤らめてる。

 ……で、キーアリーハ。

 丈の短いペラペラのシャツに、腰に丈の短い布を巻いているだけの、あられもない格好で……胸は無いけど何か色っぽい。いや、猫だった時は、何も感じなかったんだけどなぁ……?

 ……って、見とれてる暇なんかねぇよっ!!

 オレは、魔剣を片手にキーアリーハを抱き抱え、砂巨人から距離を取る。

「ウィルも、大丈夫みたいね……」

 キーアリーハの言葉に、オレはウィル君に意識を向ける。

 ウィル君を飲み込んだ砂の中には、三つの核らしい気配があったけど、その三つが一ヶ所……たぶん、ウィル君の手の中に在るんだと思う。それが砕ける気配。

 ウィル君を囲んでいた影法師の障壁が消える……キーアリーハは、もう必要ないと判断したんだろう。

 そして、ウィル君が砂の中から姿を表す……砂で汚れた程度で無傷っぽいな。放つ魔力も、ほとんど減ってないしさ。

「コイツら相手は素手の方が、やり易いわ」

 ケロっとした声で言ってくれますねウィル君。

 オレは核の位置は正確に判るけど、砂巨人の中に全身で突っ込む勇気なんてありませんよ?

 そんなことを思いつつ、砂巨人の中にある二つの核を魔剣で破壊してやる。

『成る程……もう、手加減は不要なようだな』

 いまだ余裕を見せたいようですね? ストーカーさんよぅ!

 そんなことを思うオレを尻目に、サンド・ゴーレムの身体を固まったセメントみたいに高質化させる……でも、この魔剣なら、簡単に切り裂けるぜ?

 問題は、オレの近くに守らなきゃダメなキーアリーハが居るってことだわね……

 オレが大立周りするためにも、ファルコンを呼び出して安全な場所に待避してくれません?

 そうキーアリーハに言おうと思った途端、ウィル君が固まったセメント状態ゴーレムに素手で突っ込んで行く……この魔剣なしで決定打なんて無理だろう?

 オレはそう思ったんだよなぁ……

 ウィル君がセメント・ゴーレムに繰り出したのは張り手だった。ただの張り手ではなく、突進力や足腰の捻りなど、全身で紡ぎだした運動エネルギーを相手に叩き込むかのような一撃である。

「新古流奥義……しん二打不要にのうちいらず!」

 静かな声でウィル君は言ってくれたよ……

 次の瞬間、セメント・ゴーレムの全身にヒビが入り……そして、崩れ落ちる。

 ちょっと、ウィル君。今の君って身体能力の底上げ以外じゃ魔法を使った気配がありませんよねっ!?

 そう疑問を持つオレを尻目に、崩れ落ちた瓦礫の中からウィル君は核を拾い出し、そして握り潰す……

 ……えっとね、ウィル君って実は素手の方が強くないですかい? 

ウィル君……『虚空の支配者』の20話から登場する同名キャラと同じ口調を意識して書いてます。

ただ、『虚空の支配者』のウィル君は、男を演じるよう育てられた女性ですね。

一人称が『オレ』な女の子です。

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