42・砂遊び
ウィル君の強さには驚いたけど、まだ終わってない感じだ。
だから、ウィル君は警戒を解いてない……そりゃ、切り刻まれても魔力自体は全然減ってないから、まだ死んでないと判断するわね。
「キーアリーハ……アレ、どう思う?」
オレの問いに、キーアリーハは窓を開けつつ答える。
「バラバラになった塊の大半から魔力が感じられる……たぶん、複数の核がある群体型だと思うけど、なんでゴーレムを群体型に?」
その言葉で、オレはキーアリーハとの回線を開いてアンテナを貸してもらう。
確かに、なんか核みたいなモンが、それぞれの塊の中にあるな……全部で二十以上はありそう。
やっぱ、オレのご主人様だけあって、高性能なアンテナ……優れた探知能力を持ってるんだな。オレの探知能力は、キーアリーハには精度じゃ及んでないっぽい。
『まだだ……まだ、終わらんよ』
バラバラの岩塊になったストーン・ゴーレムだが、普通に声を発してくれやがりますね……耳障りな声だけどさ。
で、キーアリーハさん。
窓を開けたってことは、参戦しますってことですね?
何も言わないけど、キーアリーハの考えぐらい判る。だって。窓枠に足を駆けて飛び降りようとしてるしさ。
だからオレは、一足先に飛び出した。後からキーアリーハが飛び降りてくるってのは気配で判るよ。
そして、巨大化しキーアリーハを背に乗せた状態で着地する。
「さすがシャドウ……判ってくれてるじゃない?」
得意気に言ってくれますけどね、キーアリーハさん。あんま油断できない状態だと思うんだけどな?
バラバラになった岩塊が宙に浮き……そして、元通りの人形に戻る。
……いや、完全には元通りじゃねぇな。ウィル君に斬られた切断跡はしっかり残ってるよ。
「それぞれのパーツに核が幾つか在るみたいだけど……オレには正確な場所までワカンナイ」
そう言うウィル君ではあるが、その言葉からは余裕のようなものが感じられた。
「なんか手があるのか?」
だから、オレはウィル君に聞く。
「下手な鉄砲、数打ちゃ当たる! ひたすらブッた斬るのみっ!!」
そう言って、ウィル君は再びゴーレムに向かって行く。
いやまあ、ウィル君って普通に脳筋だねぇ……
石で出来た巨体ゆえに、ゴーレムの動きは遅い。だから、身軽に跳ね回るウィル君の動きには全く着いていけてないよ……
「まだ終わらんとか言ったけど、ここで終わってくれた方がお互い面倒が少なく済むんジャマイカ?」
再び刻まれ、無数の岩塊になったストーン・ゴーレムにオレは言ってやる。
ゴーレムからの返事はなく、その岩塊に無数のヒビが入って崩れ落ちた。
けど、コレで終わりってワケでも無さそうだな……だって放たれる魔力の気配は未だ健在なんだもん。
崩れ落ちた岩塊は、最終的に砂粒レベルにまで細かくなる。
……二十以上もある無数の核、そして砂になったゴーレムの身体。
コレってさ、砂のゴーレム。いわゆるサンド・ゴーレムが二十体以上も出てくるって事ですよねっ!?
オレの読みは当たってたみたいで、本当に砂で出来たのっぺら坊なゴーレムが二十体以上も姿を表す。
その内の一体にウィル君が斬りかかるが、砂の身体ゆえ一刀両断とは行かないようだ。
だから、ウィル君は立て続けに斬撃を放つ。その斬撃は、特定の一点を狙っての斬撃のようで……サンド・ゴーレムが一体、ただの砂くれとなる。
ウィル君。核の場所って、だいたいの範囲でなら判るみたいね。
ちなみに、キーアリーハと繋がってる今のオレなら、もっと正確に核の位置を特定できるぜ?
オレ達にもサンド・ゴーレムは向かってきた。
だから、魔力の爪を形成し、向かってきたサンド・ゴーレムの核を一撃で粉砕してやったぜ。
「アタシのシャドウは、そこのウィルより、もっともっと強いわよ?」
誇らしげに言ってくれますけどね、キーアリーハさん。オレってウィル君とタイマン張って勝つ自信なんて無ぇんだが?
『まだ、小手調べだ。あっさり叩き潰してしまっては楽しむことも出来ん』
砂になったお陰か、多少は声がマイルドになりましたねストーカさん。
そして、サンド・ゴーレムが、オレ達を囲もうとしてきたので、翼を生やしてキーアリーハと共に空へと逃れる。
でも、一人、突っ込んじまったウィル君を何とか拾わにゃいかんわね……
そう思い、ウィル君に近づこうとするが、砂の壁がオレ達の先を阻んでくれた。
『砂を使えば、その影使いのような変幻自在な使い魔も私には可能だ』
だから、それが一体なんだつーのっ! 変な対抗意識を燃やすんじゃねぇっ!
砂の壁を避けつつウィル君を見ると、ウィル君の左右と後ろに黒い壁がありますね……キーアリーハがウィル君を援護するため壁を作り、正面の敵のみに注力できるようにしてるっぽい。
でも、多勢に無勢かつウィル君じゃ一発で核を直撃できないっぽいんで、コレじゃジリ貧じゃねぇかい?
とりあえずは、包囲の外にキーアリーハを逃がしてウィル君に向かうサンド・ゴーレムを少しでも減らさねぇとな。
そう思いつつ、オレは着地する。
オレの考えが解ったのか、キーアリーハは黙って背から降りてくれたよ。
キーアリーハなら自分の身ぐらいは守れるし、いざとなったらファルコンを呼び出して空にも逃げられる。
とりあえずは、ウィル君を助けないとな。




