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37・朝チュン……じゃないぜ

 机に向かい問題集を片付けていく。

 でもオレは、何の為に勉強しているんだっけ……?

 オレは、明るい未来の為に勉強していたわけだけど……でも、その明るい未来って何だったんだっけ。具体的な目標もない状況下じゃ、人間の努力なんて続かないモンなんだけどな?

 なんか、誰かの為に勉強してたような気がするんだけど……誰の為だっけ?

 親兄弟の為では……なかったと思う。

 でも、自分だけの為だけでは無かったと思うんだけど……全然、思い出せねぇよ。

 なんか、大事な目的があったんだけど……

 ……

 ……

 と、そこで目が覚めた。

 オレはキーアリーハに抱きつかれた状態のまま、朝を向かえたってワケだ。

 まあ、寝不足でないってだけで良しとしようか。

「もう朝だぜい? キーアリーハ……そろそろ起きてオレを解放してくれよ」

 その言葉に、キーアリーハはオレを抱き締める力を強める。

「シャドウ……あなたはアタシの半身なのよ?」

 全然、それがピンと来ねぇんだが?

 キーアリーハに言われて、オレは真っ先にそう思っちまう。

 オレが、この世界に喚ばれた理由も、そこに在るんだろうけど……さっぱりピーマンだぜ?

 昨日、覗いたキーアリーハの記憶も何かしら関係……してるんだろうかね?

「そう言われても……オレには全然、ピンと来ねぇんだわ」

「アタシは、一目見た時からピンと来てるっ!」

 はい、そーですかい。

「まーいーやね。オレに取っちゃキーアリーハが一番大切な人ってのは同じだしさ」

 オレにとってキーアリーハは大事な大事な寄生先……じゃなくて共生相手だ。

 そんなオレの本音なんか気付けないキーアリーハは、何を勘違いしたか身体が熱くなりましたね……たぶん赤面してるんだと思う。

 いや、オレって猫なのよ? ……いや、キーアリーハによると人間の姿にも成れるらしいけどさ。

 ……考えてみるとオレってキーアリーハに猫の姿にされたワケなんだよな。まあ、別に恨んじゃいないけどさ。

 オレって一体、何者なんだろうね?

 人生とは自分が何者であるかを知るための一生涯かけての追求である……なんて哲学的に考えると、オレが人間だった頃と変わらねぇか。

「じゃあ、シャドウ……早く人間の姿になって?」

 え~……嫌だよ? この小っこい身体の方が場所食わなくて色々と都合が良いんだぜ?

「犬猫って、その気になれば二足歩行できるんだけど二足歩行する必要性をヤツラは全然感じてねぇんだわ。だから二足歩行しねぇと……オレも同じで人間の姿になる必要性を全然感じてねぇよ」

 コレってオレの動かぬ本音なのよね。

「シャドウと手を繋げるじゃない?」

「前足で良ければ繋いでくれ」

 そう言って差し出したオレの右前足を握り……そして肉球を弄り出す。まあ、好きにしやがれ。

「へぇ……こうすると爪が出てくるんだ」

 オレの前足弄って感心したように呟くキーアリーハに、違和感が沸いたので聞いてみる。

「本物そっくりな黒猫を造れるんだし感心するような事か?」

「影法師は、アタシの意思や感情に結構、左右されるのよ。だからアタシが影法師で猫を造っても、本物の猫みたいには動いてくれないのよ」

 オレの問いにキーアリーハは答えてくれる。でも、その答えには違和感ありまくりなんだなオレは。

「いや、それを言ったらオレだって本物の猫じゃねぇんだが?」

「でも、シャドウは本物の猫を知ってる」

 知ってるのかオレってさ?

 いや、たぶん知ってるんだろうけどさ。その辺の記憶が全然無いのよねオレってさ。

「朝飯食ったら出発だろ。ならファルコンじゃなくてオレがキーアリーハを乗せて飛びたいんだが?」

 この身体って、結構な拡張性があるみたいで、この身体をバンバン使うことで色んな能力が自覚できるかも……ってのがオレの考えだ。

 そしてキーアリーハは大容量な外付けバッテリー……電池切れの心配も無くなるってワケ。

 オレとしちゃ人間の姿になりたいなんて思っちゃいないが、大事な大事な共生相手を守る力ぐらいは持っておかないとリストラされかねない。

 仮にキーアリーハにリストラされたとしたら、オレって放免されるのかね?

 ……もしかして消えちまうとか?

 そして、この世界での出来事が全部夢で、また受験の再開って事になるのかね?

 そりゃ構わんが、キーアリーハの安全が確保できてないって状況は頂けないな。とりあえずは、あのストーカーと何らかの形で決着を付ける必要があるか……

「シャドウがアタシを乗せて飛びたいなら、そうしてくれて良いわよ……」

 なんか照れたような小さい声だな?

 まーいーやね。

 オレはキーアリーハが背中に乗っかるよう意識して巨大化する。

「まずは飯……いや、顔を洗うか?」

 そこまで聞き、オレが人間だった頃の記憶が甦る。当たり前なことを忘れてたよ。

「やっぱり最初は小便だよな?」

 その問いに対するキーアリーハの返事は、小突くような拳骨だった。

昔飼ってた犬

はよ飯寄越せと二本足で立ち上がって、しかも二足歩行までしてくれたときは普通に驚いた

そんな芸、あたしゃ仕込んだ覚えは無いぞとね

元気で健康な犬なら、その気になれば二足歩行できると思います

しない理由は作中に書かれれる通りで良いかと

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