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30・ブランベルクの大通り

 この世界で、オレが初めて見る街である。

 高さは一メートル半ぐらいかな? 低いとは言え城壁に囲まれた街だ。

 城壁というのも烏滸(おこ)がましいな……瓦礫を積み上げただけの簡易な壁だしさ。

 そして城門を抜けると左右に広がる商店街と長い真っ直ぐな道が続いている。番兵らしき兵士がガウスさんを見て会釈し……キーアリーハを見て慌てて(ひざまづ)く。

 つまりキーアリーハを知ってるわけで……この街が公爵家と深い関係にあるって事を顕著(けんちょ)に表してるわけだ。

 ちなみにキーアリーハ……そんな番兵なんて目に入ってないようで大欠伸(おおあくび)してる。はしたないぞ、公爵令嬢。

 道の広さ……学園と大差ねぇな。

 建物は石造りとコンクリ……じゃなくて漆喰で塗り固められた堅牢な造りの物が多い。あと建物が隣接してるんじゃなくてくっついてる。つまり両隣の家と壁を共有してるわけだ。そして、向かい合った家の軒先が簡易な店になってるみたいだ。

 横路なんて無いようで、ひたすら真っ直ぐな商店街が続いてるな……

 人混みでごった返しており馬車も、なかなか進めない状況だったりする。

「ここが、ブランベルクの大通りだ」

 大通り? ここが?

 ガウスさんの言葉に、オレは面食らう。

 だってさ、大型トラックと普通自動車がすれ違うのに苦労するような道幅しかないんだぜ?

 一応、左側通行ってルールがあるみたいだから何とかなってるが……人も馬車も同じ道なんだよな。みな、のんびりゆっくり歩いてくれてるし歩行者ばっかでも渋滞は普通に起こるわね。

「ガウス……アンタ、ナニ言ってんのよ?」

 キーアリーハが呆れたように言う……そりゃオマエにとっちゃ常識レベルの話でも、オレはこの世界の常識を知らないんだぜ?

「ご主人様。ガウスさんは同郷(どうきょう)のボクに、この世界の常識を教えてくれてるんですっ!」

 だから、できるだけ可愛らしく言ってみる。

「シャドウ……気持ち悪い言葉遣いは止めてって言ってるでしょ」

「そうだ。あまりお嬢様を困らせるんじゃない」

 キーアリーハの言葉に、ガウスさんも賛同する。

「家同士がくっついてるのは、建物が城壁を兼ねているってこと?」

 ガウスさんも介入したし、もうちょっとキーアリーハを虐めたかったけど折れることにする。

「そのようなものだ……攻め込まれた際は、ここの大通りに敵軍を閉じ込め屋根から矢を射掛けたり、投石や煮えた油を撒いたりするわけだ」

 低い壁の内側の建物も、くっついて建てられてたな……アレは建物自体をが城壁を兼ねていて、街を城壁の外へ向けて拡張した結果が、あの瓦礫の壁か?

 瓦礫の壁の内側にある街への入り口って、ここしか無さげな感じだしさ。

 ……つか今、聞き捨てなら無い事を言いましたねガウスさん?

「ちょい待ちっ! 攻め込まれるってナニっ!?」

 だから、思わず叫んじまったいっ!

 だって、この街の入り口って、王国側に向けて門を開いてたんだぜ?

 敵を招き入れ袋叩きにするための仕掛けを何で王国側に向けるのよ!?

「お爺様の代まで、アタシん家も王国を名乗ってたのよ。曾お爺様の代ぐらいまで、冗談抜きに王国……学園のある方の王国と仲が悪くって小競り合いが何度もあったって聞いてるわ」

 つまり、キーアリーハの実家は王家に屈服し軍門に下ったってことか?

「だが、先代が、あちらの王家の姫に惚れ込み……色々とゴタゴタがあって姫を嫁に貰うかわり、公爵として王家に仕える事になったわけだ」

 キーアリーハの言葉をガウスさんが引き継いでくれた。

 はあ……惚れた女のために敵に屈服したって事か。というか、この落とし処ならば領陣営の連中も一応は納得できるわね。

 まあ、アッチの軍門に降る形とは言え、ワリと穏便な幕引きだと思う。

「今更だけどさ……王国の名前ってナニ? あと公爵家も」

「アルフォンソ王国……公爵領はブラムベル。これが王家や公爵家の姓でもある」

 にゃるほど。

「つまり、キーアリーハ・ブラムベルが正式な名前になるの?」

「キーアリーハ・アルフォンソ・ブラムベル……貴族王族はミドルネームに母方の姓が入るのよ。でも、学園じゃアタシは貴族じゃないって事になってるから、キーアリーハ・アルベルって名乗ってるわ」

 ほう……でも、身分を隠してるとは言え、王家の血を引くのにキーアリーハが学園じゃ扱いが悪いみたいなのが気になるな。姫といっても傍流の血を引いてるってことかね?

 それより切実な問題が一つ。

「キーアリーハって名前が無駄に長いんでアルベルって呼んで良いか?」

「絶対に嫌!」

 一言で切って捨てられちまったい……まあ良いけどさ。

「それはさておき、アルベルの母ちゃんって傍流なの?」

 その言葉に、キーアリーハは、オレを肩から下ろし抱き締める。

「アタシの名前はキーアリーハ……アルベルじゃないのよ?」

 そう優しく笑い掛けつつ、ギリギリとオレを抱き締める腕の力を強める。

「あの……ご主人様。ボクちょっと苦しいです……ボクが可愛すぎて愛おしいってのは大変よく理解できてるんですが」

 オレの言葉に、キーアリーハは大きく溜め息を吐く。

「アタシは、アナタに可愛さなんて求めてないわ……でも、頼りにはしてる」

 ほう……可愛い黒猫であるオレに可愛さなんて求めていないですか。……こりゃ、キーアリーハにリストラされた場合も考慮しなきゃダメかも?

 ……つか、いまの言葉って冗談ですよね?

旅に出てました。

https://ncode.syosetu.com/n9075jj/

だれも探しに来てくれなかった(当たり前)……

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