表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/40

25・『元』箱入り娘

 今度こそ、あのストーカーの気配は完全に消えた。

「あれ程の魔獣や幻獣を再現できる術士ならば、高位の宮廷魔術師か王国魔法士団、その幹部クラスの実力があると言えるわけですが……」

「けど、そんな術士はガウスさんは知らない?」

 ガウスさんの呟きから、オレは先読みして問う。

「キワモノ魔術師ゆえ、いずれも縁がありませんでしたので……公国に拾ってもらえたのは本当に運が良かった」

 ガウスさんの言葉に、キーアリーハは溜め息を吐く。

「魔法士団なら、アンタ歓迎されたはずよ? アンタの魔法は戦争じゃ使いどころが多いからね」

 オレの持った疑問。それと同じことをキーアリーハも思ったらしい……って、その答えも知ってそうだな?

「王国魔法士団に入る気は皆無でしたのでね……そもそも、軍人は性に合いません」

 ガウスさんの返事をキーアリーハは鼻で笑った……やっぱ答えは知ってたのね。

 王国魔法士団って魔法使いを集めた部隊なワケね……って、あのストーカーも軍人っぽくないな。

 戦力の逐次投入なんて悪手中の悪手だぜ?

 アイツの言動みてると『当人は賢いつもりのお馬鹿さん』ってな川柳になるな……まあ、お勉強自体は出来てたかもしれないけどさ。

「ちなみにキーアリーハだけど……アイツみたいに使い魔の遠隔操作って出来るの?」

 もし出来るなら、情報収集とかやりたい放題じゃん。

「出来るけど、それに集中しなきゃいけなくなるから他に何も出来なくなるわね……だから基本的に自立行動させてる」

 ほう、出来るけど基本やらないしデメリットもあるか……って、突然、オレの体の自由が効かなくなった?

 そう思った途端、体の自由が効くようになる……コレってもしかして?

「ひょっとこしてオレを遠隔操作しようとした?」

「けど、弾かれた……でも抵抗してないよね?」

 抵抗はしてない。つか、不本意な事をさせようとしない限り抵抗する気もないぞ?

「完全な自我を持つ存在の遠隔操作は難しいと聞きます。故に予め自我と身体を切り離せるよう細工をする場合が多いそうです」

 オレには、そんな細工はしてないって事か……で、あのマンティコアには、事前に細工がしてあったわけね。

「ちなみにファルコンなんかは遠隔操作できる?」

「この通り出来るわよ?」

 ファルコンがキーアリーハの声で喋ってくれたよ……で、キーアリーハ自身は虚空を見つめ心ここに(あら)ずって感じだ。

 コレなら背中に乗って直接コントロールし方が良いかも。

 あのストーカーも使い魔の遠隔操作中は、こんな感じなのかね?

 だとすれば、どっか個室に閉じ籠って遠隔操作に集中してるんだろう。

 組織に属してる魔術師ならば、そんなことに構けてる暇なんかないだろうから、アイツはフリーの魔術師って考えて良いのかね?

 もしくは長期休暇中なのか……

 そもそも、どうやってオレ達の事を知ったのやら?

 どっかで接点があったんだろうけど……って、ラッペトスの件がファーストコンタクトだったっけな。

 影法師の使い魔でラッペトスを倒したって事でキーアリーハに興味を持ち、そこからオレにも興味を持った……つまり、あのストーカーって学校関係者?

 学園は長期休暇に入ってるしで時期的に矛盾はないんだなぁ……

 ……今後の学校生活には嫌な予感しかしないなぁ。

 実家に帰ったらキーアリーハのパパに全部ぶちまけて、学園を退学した方が良いんじゃないかね?

 公爵令嬢なら学歴なんか不要だろうしさ。

「キーアリーハ……学園って退学しちゃダメなの?」

「ダメに決まってるじゃない。限られた魔法使いの卵を集め育て選抜して国の要にする……その選抜対象は貴族だろうと平民だろうと関係なく平等に行われる。まあ、実は建前で実際は全然平等じゃないから突き上げ喰らった王族貴族の顔を立てるため、大公爵家の長女が身分を隠し……ってのがアタシ」

 身分を隠してたのか? つか、隠せるのっ!?

 ……というか大公爵家と王家の折り合いが悪くなったのって、キーアリーハが原因?

 というか、王都から大公爵家が撤退しなきゃ、普通に正体がバレるよな?

 つまり、キーアリーハの存在を隠すため、公爵家と王家が仲違いを演じたって事か?

「実はオマエって影武者とかじゃ?」

 一応、オレは聞いてみる。

「なら、身分は隠さないわよっ!」

 そりゃそうだわね……本物の身代わり要員で避雷針役だもんな。どこか怒ったようなキーアリーハにオレは思ったりする。

 つか、そこまで考えが回るって事は、キーアリーハってホントに公爵令嬢なんだ……

「でも、正体を知ってる奴も居るよな?」

「そりゃそうよ……先生方の一部は知ってるし、どっから聞いたのか知らないけどソーノベンもアタシが公爵家の人間だって知ってたみたいだしさ」

 でも、それを口外しない程度の分別はあるみたいだな。

 つか、それが一般生徒に知れ渡ったらキーアリーハには無数の腰巾着が居るはずだ。

 けど、腰巾着はいない……本当に、ごく一部の人間にしか正体を知られてないって事だわね。

「ちなみに、身分隠すは良いけど卒業時に公爵令嬢って事は明かすの?」

 この事実を伏せたままじゃ意味ないから、どっかで公開するんだろうけどさ。

「別にチヤホヤされたいワケじゃないし明かすのは卒業後ね……」

 にゃるほど。

 キーアリーハの卒業後に、公爵家が長女を学園に差し出していたと言う事実を明かし、建前が実は建前じゃなかったという既成事実が出来上がるわけだ。

 で、ふいんき的に……じゃなくて雰囲気的に、コレってキーアリーハの発案っぽいな。

「オマエとしちゃ、故郷を離れ王都の学園に通うことに文句は無かったと?」

 だから、カマかけで聞いてみる。

「そりゃ、アタシの発案だもの……こうでもしないと監視抜きの生活なんてできないじゃない」

 ああ、やっぱ、そーゆー事ですかい。

「揉めなかった?」

「大いに揉めたけど、王族貴族が公国に集まっての会議でアタシが発言したし、お父様でも流れは変えられなかったわね」

 計画通りとばかり、得意気に言ってくれますね……父ちゃん、頭抱えてただろうに。

 だから、娘の安否確認も兼ねてガウスさんを派遣したと。

 キーアリーハって普通に可愛がられて育ったんだなぁ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ