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20・蚊帳の外

 なんとも深い溜め息をキーアリーハが吐いてくれたよ……

「男同士、共通の話題で盛り上がってくれるのは良いんだけど……シャドウ! アンタはアタシの使い魔! ガウスっ! アナタはアタシん家の使用人っ! そして魔獣使いのアンタは迷惑なストーカーっ!」

 うん……まあ、ストーカーってのは間違っちゃいない気はする。

 あと、さっきのやり取りって、キーアリーハは完全に蚊帳の外だったわね……お嬢さまというか、お姫様だったキーアリーハとしちゃ、そりゃ面白くはないわね。

 が、ストーカー呼ばわりされた方は、そうは思わなかったみたいだ。

「誰が貴様のようなガキに興味など持つか……私が興味を持ったのは、貴様が呼び出したファミリアの方だ!」

 ……つまり、オレのストーカーですか。いや、勘弁してよ?

「つまり、この魔獣マンティコアを放った術者に、お嬢さまは何度か襲撃されていると?」

 ガウスさんが、ストーカーの言葉に食いついたようだ。なら、この際、全部ブっちゃけちまおう。

「オレたちが街に辿り着けなかった本当の理由は、コイツに襲撃されたからで、このアホ、ガチでオレたちが死にかねないようなコトをやってくれたぞ?」

 オレの言葉に、ガウスさんは即座に反応した。

 鉄貨の散弾を、躊躇無くマンティコアの顔面に叩き込んだんだ。

 人面……中年男の頭が轟音と同時に弾け飛び、コウモリの翼を持つライオンの身体が崩れ落ちるように倒れる。

「容赦無いな……」

 思わずオレは呟いた。

 振り返ると、キーアリーハはドン引きしてるよ……

 けど、だからと言って恐怖に震え上がっているワケでもない……大したタマだ。

「お嬢さまに……いえ、公爵家に害を成す物の存在を許す気はありませんので」

 うーん……ガウスさんの忠誠心って、キーアリーハじゃなくて公爵家自体を対象にしてるっぽいな。って事は、父娘喧嘩の結果、ガウスさんがキーアリーハの敵に回るってこともありそう。

 とは言え、そこまで深刻に考える事もないか。深刻に考えなきゃダメなのはキーアリーハの父娘関係じゃなくて、このマンティコアを放ったアホの方だよ……

「前も言ったけどさ……コレって、相手を激怒させる事だと思うんだけど?」

 影法師の使い魔を放った時も、相手の言い分なんか聞かず使い魔をかき消しちまったし、今回もあいつは何か言いたげだったのに聞く耳持たずで使い魔を殺しちまってる……

 いや、頭が吹っ飛んだのに、まだ死んでないっぽいぞ!?

 頭が吹っ飛んだ直後は、マンティコアが放つ魔力量は激減してたのに、今はガウスさんの散弾による傷の再生時以上の魔力を放ってるよ……

 吹っ飛んだはずの頭が再生される……中身のデータというか記憶はどうなってるんだろうね?

「流石は転生者……同じ転生者の思考はよく理解できているらしい」

 頭を再生したマンティコアは言ってくれる……けど、オレは死んでねぇから転生者じゃないんだが?

 まあ、あえて突っ込まないけどさ。

「転生前も社会になじめず、転生で得た力に傲り更に孤立を深めた小者……とでもいったあたりか?」

 あのねガウスさん。

 コイツは遠隔操作の使い魔で、本人は安全な場所に居るワケ。対し俺たちは身を危険に晒してる。

 だから、このアホが癇癪を起こして暴れたら、オレたち、とっても危ないのよ……判る? ……とストレートに言えたらなぁ。

 コレをストレートに言っちゃうと、このアホが激怒するだろうからなぁ……

「遠隔操作で魔獣を操るのみならず、吹っ飛んだ頭の再生までやってみせる……転生で得た力は相当なものだとは推察できるわね」

 だから、オレは煽ててみることにする。

「その通り……手の内さえ知れば、キワモノ魔術師のコイルガンも脅威ではない」

 アンタ、手の内知ってたのにガウスさんのコイルガンにアタマ吹っ飛ばされてたじゃん。

 そう思ったけど、それを口にしない程度の分別ぐらいオレにはある。

 が、ガウスさんはカチンと来たようだ。

 だから、躊躇無く第二射を放った。

 ……見事直撃したけど、今度はアタマは吹き飛んでいない。

 再生されたアタマ……表面が赤茶けた色をしてたんで瘡蓋かと思ったけど、コレって海老や蟹みたいな固い殼だな。いや、強度は海老や蟹の殼の比じゃなさそう。

 だって、散弾が音速を超える際に発生する爆音がしっかり聞こえたし、それを至近で喰らっても無事みたいだし……って、全くの無事ってワケでも無さそうだわ。

 殼のアチコチが割れて、血も流れている……が、戦意は失っていない。

 ガウスさんは、あと三回分の散弾が残ってるけど弾切れまでに仕留めきれるかは微妙だな……つか、全部使いきる前に殺られちまう可能性の方が高いから、色んな意味でヤバい。

 ご主人たるキーアリーハは……ガウスさんと一緒にマンティコアがバリバリに警戒してるんで、行動を起こせない感じ。

 幸いオレは、ノーマークっぽいんでオレが何とかするしかないか。

 問題は、オレが自分の魔力の残量を把握できないって点だが……まあ、やるしかねぇわ。

 だからオレは四肢を踏ん張り、翼を持つ大猫モードに身体を変化させた……この身体なら、恐らくマンティコア相手でも戦えると思うんだ。

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