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17・公国?

 オレはファルコンを見上げ……そして一人で行った方が無難だと判断する。

 いや、オレが、あそこで野宿してたとして、ヒグマサイズの猛禽を連れた猫に声かけられたら普通に腰抜かすよ?

 単に喋る猫ってだけで、十分驚きなんだけどさ。

 まあ、魔法が存在する世界だから話は通じると思いたい。

「ファルコンって、結構賢いんだな……」

 オレの言葉に、ファルコンは黙って目を閉じる……魔力の消耗を抑え明日の飛行に備えるつもりなのだろう。

 これだけの判断力を持つ使い魔でも、使い捨てされる……魔力を使い果たしたら消えちまうんで仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。

 だからかね?

 積極的にオレに関わらないのはさ。

「大丈夫だとは思うが、獣の類が近づいたら追っ払ってくれ」

 オレの言葉に、ファルコンは大きく息を吐き出すことで返事をする。

 獣にしろ人間にしろ、ファルコンに喧嘩売れるほど度胸のあるヤツは滅多にいないだろうからキーアリーハに危険はないだろ。

 そんなワケで、オレは焚き火へ向かって歩いて行く。

 途中、振り返って、キーアリーハが作った影法師のゲルを振り返ってみるが……全然、明かりが漏れてないんで夜の闇に埋没しちまってるよ。

 こりゃ出入りの際しか、普通の人間には見えないわ……ちなみにオレには見える。猫の暗視能力と使い魔としての魔力探知能力があるからな。

 焚き火までの距離は一キロぐらいかね?

 仔猫の身体にされ人間時代とは感覚が変わっちまったんでイマイチ距離が判らんのよ。

 焚き火は大きな木の下で、一頭引きの荷馬車と御者と憶しき男が一人。

 何かを焙って食ってるな……歳は、三十前後ぐらい?

 なんか行商人っぽいから、食い物を売ってくれそうだ。

 オレは男に声をかけようとして考え直し、そして猫の鳴き真似をする……いや、完璧に猫の鳴き声を再現できたよ。

 ……いや、オレって猫の身体にされちまったから完璧なのは当たり前か。

 男はオレに気づき……そして怪訝な顔をする。

 まあ、そうだろう。

 こんな人里はなれた場所でイエネコを見かけるってのは普通に不自然だからな。

「猫……じゃないな。使い魔か?」

 おや、話が早いな。これなら喋っても問題なさそうだ。

 まあ、腰横に置いた短剣に手を掛けたことには気づいてるけど、警戒されるのは当然だわね。

「そう。使い魔だよ。オレのご主人が腹減らしてヘタってるんで、食い物を売って欲しいんだ」

 オレの言葉に、男は短剣から手を退けた。

「喋る使い魔か……力ある術者の使いだな。是非とも、お会いしたいところだ」

「オレのご主人って結構なポンコツだぜ?」

 力ある術者かも知れんが、オレの見立てじゃ色々経験不足だ。

 ちなみに、オレを使い魔であると一目で見抜けた当たり、この男、只者じゃないな。

「言葉を喋り、主人の悪口も憚ること無く言うか……主殿の尊顔を窺いたい。食料の件もお受けしよう」

 そりゃ助かるわ。

「んじゃ、ご主人を連れてくるんで待っててくれ。カネも一緒に持ってくるよ」

 オレは、喜んでそう答える。

 たぶん、この男も術者じゃないのかね?

 オレが使い魔だと一発で見抜いてくれたしな。

「いや、こちらから伺おう」

 うーん……なんか話し方から察し、学はありそうな感じだな。

「オレのご主人は影使いで、番犬代わりに馬鹿デカイ猛禽が張り付いてるぜ?」

「無礼を働かねば問題ないだろう?」

 まあ、そうだけどさ。

 本音を言えば、よく分からん男をキーアリーハに近づけたくないのよね。

「オレは、キーアリーハが使い魔のシャドウ。ご主人は、何処ぞの公爵令嬢らしい」

 そーいやオレってキーアリーハのフルネームも知らねぇな?

「公王ラルフ三世の御息女……キーアリーハお嬢さまかっ!?」

 男は驚いたように漏らす。

 公王って公爵が国王を兼ねてるって事だよな?

 いやいや、別に公爵が居るかもしれないし……

「実はオレって、この世界に呼び出されて、まだ数日なんよ。つまり基礎知識も常識も持ってないんだけど、他に公爵は居ないの?」

「この国に公爵は一人だけだ。その一人娘がキーアリーハ様で、術士の才があるということで王都の魔法学園に呼ばれた際、王家と大いに揉めたとか」

 王家と折り合いが悪い理由って、その原因がキーアリーハなのね……

「で、話を聞くと、アンタもラルフ公国の人かい?」

 焚き火に土を被せ火を消す男にオレは問う。様付けしてるし、そんな感じっぽいぞ?

「公国所属の魔術師、ガウスだ。春節なのに帰郷しないお嬢様を心配した公王陛下の命で王都に向かっていたところだ」

 えっと……つまりアレですか?

「長期休暇なのに帰郷しない娘が心配で父ちゃんが様子見に人を寄越したってコト?」

「まあ、そう言うことだ」

 ってコトはつまり?

「ガウスさんはキーアリーハと面識はある?」

「あるにはあるが、今は行商人に変装している……だからお嬢様には黙っていてくれ」

 いやね、オレってアンタが信用できるのか判断できねぇんだわ。だからアンタの名前出して確認は取るよ?

 まあ、アンタの居ないトコロでさ。

「んじゃ、こっちだが準備は良いか?」

 なんか無茶苦茶、手際よく馬車の準備まで終えてるじゃん……って、馬車で行くの?

 オレって猫の姿なのに、このガウスさんには何を思ったかが判ったみたいだ。

「馬車で行く。学園からの距離と、この場所……あのお嬢さまが、この程度の距離しか移動できないというのが腑に落ちない。学園生活が辛く疲弊しているかも知れん」

 キーアリーハの実力は正確に把握してるっぽいな。

 ……ガチで命を狙われたことについては黙っておこう。

「まあ、良いや。こっちだ」

 そう言い、オレは馬車を先導しつつ真っ直ぐ帰るが……オレの帰りをゲルの戸を開けて待ってたキーアリーハは、馬車……つうか馬車に乗ってるガウスを見て驚くと、オレに駆け寄り抱き上げ慌ててゲルに引き返し戸を閉める。

 えっと……ガウスさんや。

 アンタ変装してるって言ったけど、一発で見破られたんと違う?

 ちなみにファルコンは警戒モードに入ってないね……

 なによりキーアリーハの雰囲気から察し、警戒対象だけど危険は感じていないみたいなんで、オレはアンタを敵じゃないと認識させてもらったけどさ。

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