表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファミリア  作者: あさま勲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/40

16・貨幣

 ファルコン二号に乗ったまま日没まで飛び続けた。

 もっとも学園を出発したのは既に昼過ぎで、あげく変な輩にチョッカイだけならまだしも冗談抜きに命まで狙われたような感じで……まあ、再出発から一時間程度しか飛べてないけどな。

 ただ、さすがファルコン。空を飛べるだけあって、徒歩の十倍以上の速度が出せるわけだ。

 だからまあ、徒歩で丸一日歩いたどころではない距離は余裕で稼げたはずだ。

 そして我がご主人様たるキーアリーハ。

 無茶苦茶、遠いとか言ってたのに着の身着のままで出発しちまって……なんでオレ、ツッコミ入れなかったんだろ?

 野宿は全く問題ではない。

 キーアリーハが影法師のテントを作ったからな。

 このテント……テントと言うか遊牧民が使うような、分解組立が容易なモンゴルではゲルと呼ばれる移動式家屋だな。家具まで完備されてる……ベッドと机に椅子だけだけどな。オマケに全部が真っ黒。

 まあ、色はともかく使い勝手は悪くない。じゃあ、何が問題かって?

「お腹空いた……喉も乾いた」

 ベッドに突っ伏したキーアリーハが呻くように漏らす。

 そう、食い物である。

「食料持たず長旅に出発って……無謀だったな」

 ちなみにオレは飢えや渇きは全く感じてなかったりする……猫って一週間ぐらい食べなくとも平気だって聞いたが、そのおかげかね?

「邪魔が入らなきゃギリギリ街まで飛べたのよ……?」

 ああ、そう言うことか。

 考えなしな行動に見えたが、ちゃんと考えてたっぽいな。

「ちなみにカネはあんの?」

 オレの問いに、キーアリーハは頭を掻くような仕草の後、髪留めをオレに差し出す。

 コレって装飾品だけど、見せる気なんか無くて髪の毛の中に隠してたみたいだな。薄い金色で青い宝石が埋まってる……コレを換金するってことか?

「金と銀の合金にエメラルド……財布持ち歩くより軽くていいわ」

 オイマテ。コレって釣り銭出してくれるのか?

「カネに替えたら、どれぐらいになる?」

「金貨で五枚。銀貨五十枚。銅貨で五百枚……大衆貨幣の鉄貨だと五千枚。重いからお金は持ちたくないのよね」

 ああ、この世界には紙幣は無いのね。

 そして、貨幣の材質で等級が決まると……

「ちなみに、カネ……現金は全く持ってない?」

 オレの問いに、キーアリーハは懐から小さな巾着袋を取り出し中をあける。

 五円玉ぐらいの金貨が二枚に銀貨が五枚。そして銅貨が三枚に鉄貨が一枚……小銭はあんま持ってないんだな。

 手……前足で触ってみるが鋳造っぽい。オレが居た日本……と言うか世界の貨幣はプレス加工で量産可能だが鋳造だと面倒臭いぞ?

「金貨が二枚あるから、コレで二日は大丈夫ね……髪留めを換金しないでも家に帰れそう」

 金貨を良く見てみるが、表面に傷が付いてるな……つまり柔らかいってコトで純度の高い金ってことですか?

 それが一日一枚って……この世界は金の価値が低い? ……ワケねぇな。

 なら鉄貨って金貨の千分の一価値しかない貨幣は不要なはずだ。

 で、鋳造貨幣は手間がかかるから、鉄貨でも五十円から百円ぐらいの価値はありそう……つまり金貨は五万円から十万円っ!?

「今日、食った飯代……あれって幾らなんだ?」

 オレの言葉に、キーアリーハは銅貨を一枚オレに差し出す。

「学園では無料ね。町の定食屋で食べたら銅貨一枚……店によっては二枚ぐらいかしら?」

「オイ、計算おかしいぞ!? 百食単位で飯が食える額を一日で使うのか!? 」

「重いから、釣り銭もらわないし……」

 アホですかアナタはっ!?

「いや、釣り銭もらえよっ!!」

 つか、キーアリーハなら飯さえなんとかできれば野宿も平気だろ、その気になれば家だって即興で作っちまえるんだから!

 いや、ガチでお嬢様だったんだな……あげく世間知らずだ。

「金貨だとお釣出せない店ばっかりだし……あと、お腹空いて弱ってるときに怒鳴らないでよ!」

 オレは溜め息を吐く。

「なんか食えるモン探してくる……戸を開けてくれ。あとファルコンを借りるぜ?」

「ネズミは食べたく無いなぁ……」

 そーかい。オレも食いたくないし捕まえたくもねぇよ。つか、オレが探しにいくつもりの食い物は木の実……果実の類いである。

 果実……あるかねぇ?

 ファルコンの手を借りられるなら、重いものでも運べそうだしな……あ、袋みたいなモンが無いと運ぶの大変か。

 いや、見つけた場所にキーアリーハを連れて行きゃ良いか。

 まあ、オレが食い物を探しにいくこと自体、キーアリーハには異存ないようだ……単に空腹で頭が回ってないのかも。

 周囲に人家も無い感じで、ここなら一人にしても危険はないだろ。

 そう判断し、オレはゲルから出る。

「ようファルコン。ご主人が腹減ったとヘタってるんで食い物探しにいくぞ?」

 出口横に鎮座していたファルコンにオレは声をかける。

 ちなみに影法師の使い魔……経験は積めるらしいが、せいぜい数日の命だそうな。いや、厳密には死ぬワケじゃないんだが、常に身体を構成する魔力を消費してるとかで魔力切れで存在が消滅すると。

 そうなると、積んだ経験は白紙化される。

 このファルコンの命も、明日の昼過ぎぐらいだとか……まあ、キーアリーハが魔力を追加してやれば延命できるそうだけどさ。

 ファルコンは、オレの言葉に明後日の方向へと視線を向けた……いや、ご主人の飯の調達って一代任務だぞ、そっぽ向くなよ?

 そう思いきや、ファルコンの視線の先に明かりが見える。ありゃ焚き火の類いだな?

 って事は、あそこに人がいる?

 なら、食い物分けてもらえないか交渉してみようかね。

ゲームとかラノベでも有耶無耶で流されてますがファンタジー世界で貨幣ってのは厄介な存在ですね。

コンピューターゲームの四次元財布を導入してる小説もありますが……

ファミリアでは、その辺は極力リアルに書いてみたいなと。

ソードワールドRPGでは金貨と銀貨しか無かったっけ。持ち歩きを考えると買い物も大仕事ですよねぇ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ