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ファミリア  作者: あさま勲


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11・特攻

 猫は夜目が利く。反面、視力は、せいぜい0.2ってトコロだそうな。

 ちなみにオレの視力、人間だった頃は左右とも1.5あったし、この体でも特に視力が落ちてるとは思ってない。

 色覚も人間だった頃と違和感はないが、夜目は利くようになった……視力に関しては人間と猫の良いとこ取りができたみたいだ。ただ、夜間は色覚が失われるけどな。

 その視力でもって、追っかけてくる使い魔に視線を向けてみた。

 ……なんだアレ?

 群体型とキーアリーハが称した側は、小さな点の集まりとしか見えないが、大型の使い魔はしっかり目視できた。

 猛禽の尻から大型のネコ科動物の下半身が生えた翼を持つ四足獣……尻尾の先端は黒いフサ毛ってライオンだわ。

 ……うん、グリフォンだな。

 そのグリフォンが、滑空の姿勢を取るとオレたちに向かって大口を開いてくれた。

「オレたちに向かって大口開けてるけど……ビームでも撃つ気か?」

 羽ばたくのを止めて滑空状態ってのは、降下……重力で速度を稼ぐ以外の方法じゃ加速できず空気抵抗で、どんどん速度を失っていくはずだ。

 実際、滑空状態に移ったおかげで、ファルコンとの距離は徐々に離れて行ってる。

 だから、そう思ったワケだけと違うっぽいか?

「ビームって何?」

 キーアリーハに問われる……まあ、この世界の人間にはビームって概念はないかも。

 いや、ビームには建物の梁や桁……屋根の骨組みって意味もあったっけな。ただ、粒子や電子などの、一定方向に揃った細い流れって意味での理解は無理だわ。

「いや、あいつが口から、火やら電撃やらを吐いてこないかと思っただけだ」

 ビームを説明してる余裕なんてないので、オレはそう言ってやる。

 実際、デカブツも群体型も体の中で何やら魔力が蠢いてる気配があるのよね。

 けどよ、キーアリーハが電撃放ったりファルコンを呼び出した時ほどの魔力の高まりはないぞ?

「体を組み替えてる……生物原型の使い魔で、そんな事したら寿命が縮んじゃうのにっ!」

 追っ手の気配、その変化に気づいたキーアリーハが悲鳴交じりに叫んだ。

 いやね、たぶんアレって使い捨て前提の兵器だろうから、そんな事は気にしないだろ?

 そうは思うが、オレやファルコンとは違い、アレって本物の命を使った生物だから使い潰すような事は信じられないんだろう。

 使い魔たちの体から液体が噴き出す……遠すぎて判んねぇけど、たぶんアレって血だわ。そりゃ、あそこまで劇的に形を変えたら命を削るわね。

 そして口から尻まで大穴が空き躰が筒状になる。

 そして筒状になった胴体の中に何かが形成され穴が塞がるけど……もしかしてジェット・エンジンっすか!?

 だとすれば、連中の狙いは体当たりだろう。

 そう見当をつけた途端、デカブツが急加速しつつ突っ込んできたよ。

「急旋回っ!」

 俺は叫ぶ。

 キーアリーハは理解できたか怪しいが、ファルコンの方はバッチリ理解してくれたよ。

 おかげで、見事回避できたけど……正気じゃねぇな。

 爆音と共に、オレたちの脇を抜けていったが、強烈な熱風を浴びせられたよ。おまけに、その熱風からは、血の臭いと髪の毛が燃えるような臭い。

 自分の体を燃料にして飛んでるような物だ。文字通り命を削る攻撃である。そして、大きく弧を描きながら、再度オレたちを照準するつもりのようだ。

 まあ、デカブツの挙動さえ、しっかり把握しておけば避ける事自体はできそうだけど……たぶん本命は群体型だ。

 ちなみにファルコン……今の急旋回で速度を失っちまったもんだから、今は必死で羽ばたいて加速してるよ。

「チビッコ連中を防ぎきれる術はっ!?」

「あるワケ無いじゃないっ!!」

 バッサリ否定されたが、だからといってキーアリーハは諦めてないみたいだ。

 小声で呪文の詠唱に入ったっぽい。

「集え雷の子らよ……」

 ラッペトスで空振りした電撃魔法ね。広範囲に散らばらせて群体型を一網打尽にする気かね?

 そう思った途端、群体型の二割ほどがオレたちに向かって急加速してきたよ。

「壁となりて、我らに仇なす者どもを阻み焼き払えっ!」

 詠唱が終わると同時に、キーアリーハの手から放射状の電撃が放たれる。

 実際は壁じゃ無くて網だったが、見事に突っ込んでくる群体型の大半を捉える事ができたよ。

 キーアリーハの放った電撃は、たぶんギガワット級だったと思う。

 電撃に触れた群体型は、一瞬で黒焦げになって、中には体液が沸騰し爆発する物まであったんだ。

 そして、運良く電撃に捉えられなかったやつも、燃料切れ……というか命を使い切った感じで落っこちてゆく。

 ちなみに群体型……元はカラスっぽい鳥だわ。

 そして、まだ群体型は大半が残ってるワケよ。

「降下で速度を稼ぎつつ急旋回っ!」

 デカブツを避けた急旋回で、ファルコンは結構な速度を失ってる。車だってドリフトかましてUターンしたら、一から加速をやり直す必要があるってのと同じだ。

 けど、空に居るファルコンなら急降下……重力を使う事で加速は可能なんだ。

 オレの言葉に従ったのかは判んねぇけど、ファルコンは急降下で加速し急旋回で第二波を回避する。

 回避された第二波は、途中で速度を失って落っこちて行くよ……事切れたんだろう。

 一度の攻撃で、群体の二割を消費する……つまり、あと三回ほど回避すれば、群体型は居なくなるし、デカブツも回避に徹すれば、いずれ事切れる。

 厳しいけど勝機はあるな……

 キーアリーハが、再度電撃で第三波を防ぎきったのを見届けオレは、そう判断する。

 けど、この三回の波状攻撃って、オレたちの手の内を探るための攻撃だったんだよな。

 キーアリーハは、一回電撃を放つと次を放つのに時間がかかる。だからファルコンの回避が追いつかないタイミングで使うようにしているわけで、そのタイミングが、ファルコンが急旋回を行った直後なワケだ。

 つまり波状攻撃の間隔を狭めれば、回避も迎撃も追いつかなくなるわけで……第四をファルコンは上手く回避してくれたが、その直後の第五波は回避できずキーアリーハも迎撃準備が間に合わなかった。

 ファルコンの翼が千切れ飛び、土手っ腹に幾つも穴を穿たれている。おまけにキーアリーハに向かって突っ込んでくる一体の群体型の気配……

 だから、オレは後ろ足で、キーアリーハを思いっきり蹴飛ばしてやったよ。

 火事場の馬鹿力か、キーアリーハを蹴り飛ばせ直撃は避けたけど……ここって空中なんだよな?

 でもって、ファルコンの翼が片方千切れ飛んでる。

 ……影法師の使い魔なんだし、翼の再生ぐらいできるだろ?

 そう思った途端、ファルコンの意思がオレに流れ込んでくる。

 ……難しいだと?

「出来ないワケじゃねぇんだなっ!? オマエが飛べなきゃ、キーアリーハが落っこちて死んじまうだろ! 形振なりふり構うな今すぐやれっ!!」

 俺は叫ぶ。

 直後に、ファルコンがオレに食いつき、そして丸呑みした。

 ……ああ、オレって魔力の塊だってキーアリーハが言ってたっけ。つまり、翼の再生にオレが必要って事か。

 別に構わねぇから使ってくれよ。

 ……と思ったわけだが、オレの意識は失われる事も無く、体にはスゲェ違和感。

 なんつうか、右手が思うように動かず姿勢が整えられない。

 動けぇっ!

 そう思った途端、右手の感覚が戻り翼が風を切る感覚と共に姿勢が整う。

 ……って、翼って何よっ!?

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