01・そこは雪国かと思った
模試の結果も上々だった。
これなら、一次志望の大学にも十分手は届く。無論、一次志望は旧帝大の最高峰だ。
オレは笑うと、大きく伸びをした。
さて、眠気覚ましにコーヒーでも飲んで勉強再開と……そう思った途端、唐突に妙な声が聞こえてきた。
『我が半身にして真なる盟友』
どこか幼さを残す女の声だった。
なんか、頭の中に直接響いたようにも感じたな……
空耳かよ……寝不足気味かもしれないが、幻聴聞くほど根詰めて勉強やってないぞ?
内心ぼやきつつ立ち上がった。そして眠気覚ましのコーヒーを。と、部屋を出るべく扉に手を伸ばす。
部屋を出ると、そこは雪国かと思った。
いや、雪国じゃなくて全部真っ白な、何もない単にだだっ広いだけの空間だったね。その真っ白な空間の中に、オレは一人、ポツンと立っている。
開けたはずの扉も消え失せ、周囲に広がるのは地面と空の区別もつかない真っ白な空間。
思考が停止し、思わず固まってしまった。
そして再び声が聞こえる。
『常に我と共に歩み、我と苦楽を共にするもの……ファミリアよ来たれ!』
その言葉と同時に、自分の体が指先から消えてゆく。
……ちょっと待てよ!
オレって将来エリートになるべく、小学校の頃から学級委員や生徒会役員を勤め、できうる限り内申点稼ぎまくって来たんだぞ?
大学だって旧帝大の最高峰にも十分に手が届くって予備校でも太鼓判押された。そうなるよう、幼い頃から努力を積み重ねたから当然だろう。
それも、オレの明るい未来のためだよ!
そのために、六・三・三と十二年の学生生活を勉強と内申点稼ぎに明け暮れ、色んな楽しみを棒に振ってきた。
だ~か~ら~……オレは、この世界に未練があるのっ!
ここが、あの世への入り口だか、異次元への入り口だか知らないけど、そんなトコロには行きたくないっつーの!
そう叫んだが声なんて出なかった。
そして、オレの体と意識は真っ白な世界に溶けていき、世界は真っ黒に反転する。