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2 金星の祈り

 金星の祈り

 

 金星行き特急電車 ヴィーナスエクスプレスより、乗客の皆様へ


「ただいまより金星に向かいます。お客様は自分の席にお座りください。楽しい宇宙の旅を、お楽しみください」

 電車の中にそんな女性の声のアナウンスが流れる。

 そのアナウンスのあとで、キキの乗る金星行き、特急電車ヴィーナスエクスプレスは東京駅十八番ホームを発車した。(緩やかな加速度をキキは確かに感じた)


 ……えっと。キキは切符に書いてある自分の席を探した。

 あ、あった。

 その席はすぐに見つかった。


 その席は四つの席が向かい合わせになるようにして、設置されている席だった。


 一緒に金星行きの電車に乗った、ほかの五人の乗客の姿は三番車両にはどこにもなかった。どうやらみんな違う車両の席に座ったようだった。(これは運行会社の配慮なのだろうか? よくわからないけど、三番車両は、キキの貸切のような状態になった)

 キキは孤独が好きだった。

 だから、まあちょっとは寂しいと思ったけど、気持ちも楽にできるし、せっかくの旅行だし、まあ、一人もいいかな、と思って、この状況をなるべく楽しむことにした。

 金星までは、三時間とかからないはずだ。

 あっという間といえば、あっという間の旅立った。


「うーん」

 大きなトランクを荷物置き場に乗せてから、キキはそう言って、自分の背筋を伸ばした。

 それから席の横にある窓から、外の風景を見つめる。


 電車の外に広がっているのは、明るい宇宙の風景だった。(星々がたくさん、それはもう数え切れないくらいに紫色をした宇宙の中に明るく輝いていた)もう月が遠くに見える。速いな。とキキは思った。できれば月の姿をゆっくりと見ていたかった。


「はぁー」キキはため息をつく。


 するとがちゃという音がしてキキのいる三番車両のドアが開く音がした。(それは二番車両のほうから聞こえた)

 キキがちらっとその音のしたほうを見ると、そこには全身真っ白な服に身を包んだ一人の美しい金色の髪をしたその顔に大きなサングラスをかけている女性が立っていた。

 その女性はキキと目があうと、にっこりと真っ暗なサングラスの奥でキキに向かって微笑んだ。(そのあまりの神々しい微笑みに、キキは思わずどきっとしてしまった)

 美大生のキキは、思わず、その美しい女の人の姿を、そのまま、一枚の絵画にしたいと思ってしまった。(まさにその女の人は金星の女神ヴィーナスのようだった)

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