理不尽
落胆しながら、窓の外を見る。
そうだ!
ここはどこだ?
ベランダから見る景色。
知らない景色だが、何故か見覚えがある。
服を勝手に拝借し、靴をこれもまた勝手に借り、外を歩いてみた。
ここ近所じゃん。
信号機に書かれてある土地名を見て、すぐに位置がわかった。
流石、俺。
歩いて自分のボロアパートまで戻ると、102号室の前に来た。
鍵がない!
大家さんに電話したくてもスマホがない!
考えた結果、トボトボと交番まで向かった。
今朝のことをありのままに話したが、警官は変なことを言ってくる。
「君?大学生?
だって、君の生年月日から見るに36歳だよ。
見た目からして、生年月日を間違えたということはなさそうだし。」
俺は唖然とした。
だって、警官が真顔でそんなこと言ってくるもんだから。
「今、令和何年ですか?」
「令和××年ですね。」
警官は答える。
俺を不審者だと思ったのか、怪訝な顔でじっと見られて、とてもじゃないがそこにいられる気分じゃなかった。
「帰ります。」
俺が言ったが、警察はすぐには返してくれなかった。
県外の実家の住所と電話番号を聞かれ、両親に電話をされ、しばらく話し込んでいた。
電話が終わると警官は、
「署まで送って行こうか?ご両親が迎えに来るまでそこで待ってなさい。」
そういうと犯罪者を扱うように俺に手錠を嵌め、奥で休憩していた警官を呼び、パトカーで連行した。
俺は、犯罪なんてしてねーよ!
心の中で何度も叫んだが、言葉にはしなかった。
反抗的な態度を見せて、業務執行妨害やらイチャモン付けられて濡れ衣を着せられるのは嫌だったから。
理不尽だと思う。
本当に理不尽だと思う。
朝からの緊張もあり、悔しさや歯痒さが重なり、涙がとめどなく流れた。
警察署に付くと個室に無理やり連れて行かれ、交番で言ったことをまた説明するように言われた。
俺は、黙っていた。
黙秘すること、5時間。
母親が到着した。
母親も老けていた。
それを見た俺はすべてを悟った。
俺、未来に行ったんじゃね?と…。
母親が俺の身分を証明したのと病院へ連れて行くと説明したので、すぐに手錠は外され解放された。
俺は、母親の車に乗った。
と言っても俺の知る母親の車では無かった。