ベビードール
受験も差し迫った頃だった。
真理とは別れ彩綾がひとりで歩いていると、下校中派手な格好のピエロを見かけた。
こんなところにピエロ?
ここは閑静な住宅街だ。
なにかイベントをやってるにしてももっと栄えた街中でやるはず。
彩綾は不思議に思いながらもピエロを間近でガン見してしまい、あまりの醜さに吐き気を催した。
必死に吐き気を堪えていたが、ピエロのせいで自分が吐き気を催したと思うと苛ついて、あろうことか石を投げつけたのだ。
「キモいんだよ!こんな所で仮装するな!不細工!!」
真理の話など覚えて居なかった彩綾は、ピエロに暴言を投げかけた。
ピエロはおどけて言った。
「君を夢の世界に招待するよ。
そこは君にとっての幸せの国。
この世界の何よりも尊くて美しい。」
「え?」
そう言うのも束の間、彩綾の周りは急激に変化し渦を巻いた。
瞬きをしている間に周りにはブリブリのピンクの可愛い部屋が広がった。
大きなベッドには、シュフォン生地のハートのフリルクッションに、オーガンジーの薔薇。
サテン生地のリボン。
ベッド横のハート型のピンクのテーブルには、女の子だったら誰もが憧れるような可愛いお菓子が山積みに積まれている。
可愛い壁紙に高級そうなレースのカーテン。
小さい頃に望んだお姫様の部屋。
壁いっぱいに広がる鏡を見つけ、彩綾は自分を確認する。
可愛いベビードールに、レースのティーバック。ガーターにニーハイの薔薇柄レースのストッキングを履かされていた。
高級な生地なのかとても肌に馴染む。
というより寧ろ気持ちいい。
そして、部屋にもよく合う。
我ながら悪くない。見とれてしまいそうだ。
彩綾は、自分にうっとりとして食い入るようにどこもかしこも確認した。
こんなことをしている場合じゃない!
彩綾は正気に戻ると、下着を着せられることに心底ムカついた。
そもそもこれはなんだ!?
女の子の夢を詰め込みましたと言わんばかりのブリブリの下着。
でも、そんな事じゃない!!
下着を着せられている事自体に怒っているのだ!
-まるで私が変態みたいじゃない!こんな嫌らしい下着着てるだなんて!!-
なにか羽織れるものは?と、探したがなにもない。
出口を見つけようとドアを開けると、童話の中のお姫様が入ってそうな可愛いピンクのバスルーム。
浴槽はハート型だった。
他はトイレ。
勿論トイレもゴテゴテの姫系デコレーションが施されてあり、便座以外の全てにラインストーンが貼られていた。
「お気に召しましたか?
それは全て本物の天然ピンクダイヤでございます。
そちら全てで時価数京円。
お嬢様にぴったりの代物で御座います。」
何処からともなくあのピエロの声が聞こえてきた。




