そいつ
プルルルルと電話が鳴る。
スマホを取り電話に出ると警備会社の人が管理人と共にきたらしい。
玄関先まで出迎える。
中に上げ麦茶を出すと、タブレットが渡された。
タブレットには玄関、駐車場、階段、俺の部屋近くが四分割されて写っており、早送りで再生をした。
小一時間、警備会社の人や管理人に状況を説明しながら画面を見たが、どれにも不審者は写っていなかった。
警備会社の人と管理人に謝り、帰って貰った。
入れ違いに両親が到着し、両親と病院へ行く。
予約をしてきたらしい。
何故か今回はすぐに診察となり、診察室へ通された。
診断結果は統合失調症だった。
入院を勧められたが、現時点は普通に生活ができているので、断固拒否をし、薬を貰ってまたこのマンションに帰ることができた。
危なかった。
車の中で俺は考えた。
先生の言う通り俺は、統合失調症なのだろうか。
本当の俺は36歳で、自分は大学一年生と思い込んでるだけなのだろうか。
記憶が抜けているのは自分が大学一年生であることを正当化するため。
どう考えても大学生一年生からいきなり36歳になったのだが、それが統合失調症の症状なのだろうか?
絶対に違う!
でも、もしそうなら全てにおいて説明がつく。
心に引っかかるものがあったが夜は家族で和気藹々と過ごした。
父さんは焼肉を奢ってくれた。
やっぱ高級焼肉はウマイ!
たらふく食べて、ビールを飲んでお腹がはちきれそうだ。
「よく食うな。もっと食え!」
と、父さんがドンドン勧めてくるから。
父さんの仕事の都合でその日、両親は帰った。
「また来るよ。今度は有給取るからな。」
そう言い残して。
-6日目-
今朝は早く目が覚めた。
近所を散歩する。
見慣れた道を歩いていると、見たことのある奴が目の前に現れた。
確かに見たことあるんだ。
俺が元いた世界で。
大学一年生の俺は知っている。
俺は声が出せず、身体が動かず硬直したままそいつを見ている。
まるで金縛りにあったかのようだ。
ニヤリ。
気持ち悪い笑いを俺に向けたかと思うと、そいつは走ってその場から去った。
ー待て!ー
俺は、やっと身体が動くようになり、そいつを追いかける。
いくら追いかけても追いかけてもそいつは俺を小馬鹿にするかのようなペースで走り、追いつけない。
俺がペースを上げると、そいつもペースを上げ、俺が息切れしてくるとそいつはペースを落とす。
-俺を誘っているのか?-
俺はそいつのペースに飲み込まれながら、追いかける。
路地を走り、公園を抜け、また大通りに出て、それでも走り続ける。
ハァハァハァハァ。
さっきから、ずっと限界なんだよ!!
止まれ!
止まれぇーーー!!!!
心臓がドクドクとなり、肺が熱い!!
足は重く、腕が上がらなくなってきた。
追いかけても追いかけても追いつかない。
と、そいつはある場所に入って行った。
俺のボロアパートじゃねえか!!!!




