マズイ店。ウマイ店。
のんびりしていると、時計は午後1時を指し、母親と食事に出かけた。
母親は、俺に記憶があるか探るように
気になる店があったら教えてね。
と言ってくる。
覚えてないんじゃない。
俺は未来に来たんだ。
一昨日の夜まで大学生だったんだ。
…そう思ってたけど…、
母親の言うように本当に記憶喪失?
わからなくなってくる。
30分歩いただろうか?
一向に店に入りたがらない俺に母親が、お腹空いてるんじゃない?
気になるお店がないなら、食べたいお店でいいのよ。
と気を使って言ってきた。
「少し歩くけどいい?」
母親に聞くと、
「勿論。」
と目尻にカラスの足跡を濃くし言ってきた。
年取ったけど、優しそうな笑顔は変わらない。
最近父さんと行ったプチ旅行のことを母さんが一方的に話しながら、一緒に歩いた。
こんなの久しぶりでとても楽しかった。
高校時代は、母親と外を歩くのが恥ずかしくて一度も歩いたことがないから、中学の修学旅行の鞄を買いに行った時以来だ。
俺は、月1で行くボロアパート横の大盛り無料の大衆店に入った。
昨日から立て続けに中華だが特に中華が好きというわけではない。
ここだと激安で母さんの財布にも優しい。
大学に入って、贅沢したい時、俺はここで食べる。
交友の為に参加を余儀なくされる飲み会以外では、俺の唯一の贅沢。
化学調味料の味でとてもマズイけど、俺にとってはご馳走だ。
貧乏学生のことを考えて激安でしかも大盛り無料で提供してくれる店主の心意気が嬉しくて、それが最高の調味料になる。
俺と母親はお得なランチセットを大盛りで頼んだ。
母親は、余程口に合わないのか必死で食べてたが残してしまい俺が母親の残した分も全部食べきった。
昨日から立て続けに母親の分まで俺が食べることに驚いていたが、
そう言えば湊の小さい頃は、食べきれない分を母さんが食べていたわね。
と、ニコニコしながら語られて、とても懐かしかった。
帰りは、スーパーで買い物して帰った。
暫く食事は母さんが手作りするらしい。
マズイもの食べさせてごめん。母さん。




