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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
第一章 転生編
9/60

魔法陣に隠された秘密

 夜、いつも通り修行を終え夕食などを取り自室へ戻った俺は、父親から貰った『魔法使いになるために:初心者用』を再度読み直していた。

 今日の修行の間に感じ取っていた違和感は、今までにも何度も感じていたものだ。

 そういう時はいつも、寝る前にこの本を初めから読み直すようにしている。

 かれこれ数十回も読み返してはいるのだが、いまだにこの本のどこから違和感を感じているのかわからないでいた。

 本当はこの本に違和感を感じるようなところなんて何もないのかもしれない。

 それでも俺はこの本以外の魔法について書かれている本は読んだことがない、師匠に教わったことが間違っているとは思えない。

 と、なるとやはり、怪しいのはこの本だけになってくる。


 新しい魔法は、ほとんどがある二つのパターンに沿って世の中に広まるらしい。

 この世界に多く存在する遺跡や神殿、はたまたダンジョンや古文書に刻まれた魔法陣が、調査隊や冒険者たちによって公表されるパターン。

 魔法について研究している機関が、今の俺がやっているように手当たり次第の行き当たりばったりで、運良く生み出されるパターン。

 それ以外にもあるらしいが例が少なすぎて把握しきれていないのが現状らしい。


 この二つのパターンのうち、前者のほうは明らかにおかしな点があると俺は思う。

 一つ目は、前者のパターンで見つかった魔法の数だ。

 現在、世界で一般に公表されて使われている魔法は有属・無属あわせて五十個ほど、その全てが過去の人たちが残した魔法なのだ。

 勿論のこと、これらの魔法は魔力さえあれば誰にでも使える魔法で、ほかの誰もが手を施す必要のない完成された魔法であるといえる。

 後者のパターンで生み出された魔法は、実用性や個人で使うには魔力を多く消費してしまうものがほとんどで、前者のものより格段に質が落ちる。

 昔の人々には今魔法を研究している人たちよりも多くの時間があっただろうが、それだけで五十個もの完成された魔法をうみだすことができるのだろうか。


 二つ目は、先ほどの話の中にもあった魔法の完成度についてだ。

 たった五年間ではあるが、これでも毎日のように魔法陣を描いては試し、描いては試しを繰り返してきたのだが成功例、つまり魔法が発動したことが残念ながら一度もないのだ。

 成功することがめったにないということは、完成された魔法が運よく発動することはさらに確率が低くなる。

 にもかかわらず、少なくはない数の魔法を生み出しているのはどう考えても不自然だ。

 現代の人が一つでも完成された魔法を生み出していたのなら話は変わってくるが、それはないということは確認済みだ。


 この二つから推察すると、昔の人には魔法陣を描いた時それがどんな魔法になるか、どうすればもっとよくなるかがわかっていた可能性があるということだ。

 それはつまり、魔法を作るのにもっとも大切な魔法陣はなんらかの法則性で成り立っているんじゃないか、と俺は考えたわけだ。

 そのヒントは、故人たちが残したこの完成された魔法から得られるはずだ。

 なにかないか、なにか、なに、か。




 朝になった。

 目を開くとそこは真っ暗。

 あれ、朝じゃない?

 ……本が被さっていただけだった。


 どうやら俺はあのまま眠ってしまったようだ。

 朝になったら、いつものように修行に行く準備を始めなければならない。

 昨晩も結局なにもわからなかった、いつもこうなっているのだが考えないようにしよう。

 本を棚に戻し、大きく伸びをした。

 さて、今日も張り切って行きますか!




「今日は修行は休みにしたいんじゃが、いいかの?」


 ハウラスさんの唐突な言葉に思わず開いた口が塞がらない。


「突然どうしたんだよ、何かあったのか?」

「うぅむ、実は婆さんが風邪をひいてしまってのう。まぁあやつのことじゃから大事には至らんとは思うが、年じゃからのう。看病してやらねば知らぬ間にあの世へぽっくり、なんてことがあっては困る。お主もこれを機にゆっくり休むがよかろう。」


 あんたも年だろう、という言葉が喉まで出かかったがまじめな話だ、茶化しては悪い。

 婆さん、プランさんのことか。

 あの人はそう簡単にぽっくり逝くとは思えないが、万が一もあるし俺も心配ではある。


「後で見舞いに行くよ。確かにプランさんなら寝て起きたらぴんぴんしてそうなくらい元気な人だけど、老体には変わりないもんな。」

「すまんのう、恩に着る。」

「気にすんな、師匠の頼みだし俺も知ってる人だからな。明日からまた頼むよ。」


 そこでハウラスさんとは一度別れ、俺は自宅にあった果物をもってお見舞いに行った。

 プランさんは布団でぐっすりと眠っていたが、心なしか顔色が悪そうにも見えた。

 ハウラスさんに果物を渡し、家に帰った。


 家に着いた俺はすぐさま自分の部屋に向かった。

 これはまたとないチャンスでは?

 毎日のように修行から帰ってきては本を読むのだが、まともに考えることもできずにものの数分で寝落ちしてしまっている。

 だが今は違う、今日は修行が休みで時間も体力もある。


 早速俺は『魔法使いになるために:初心者用』を手に取った。

 昨夜からの続き、魔法陣の解析を始める。

 と言っても、見ていて何かわかるようなものではないと思うが。

 そんなに簡単に法則性が見つかったとなると、この世界の研究者は無能になってしまう。


 じー。


 じーー。


 じーーー。


 ダメだ、わからん。

 模様が複雑すぎて目が痛くなってきた。

 んー、でもなんとなく似ている模様がないでもないな。

 ただこのままじゃ全然わからないしなぁ……。

 あ、そう言えば父さんの部屋にあれがあったような。

 行ってみよう。


「父さん、白本(ノート)炭筆(ペン)ってある?いくつかもらえないかな。」

「おぉ、リュートか。たくさんはないが、あるぞ。なんだ、何か書くのか?」

「まぁ、ちょっとね。もし完成したら見せてあげるよ。」

「本当か?楽しみだなぁ。」

「あんまり期待しないほうがいいと思うけどなぁ。」

「いやいや、自分の子供に期待しない親はいないぞ?それに俺の息子だからな、何かすごいことをするに違いない。」


 そんなにいいドヤ顔しなくてもいいのでは?

 相変わらず親ばかだな。

 とにかく、書くものは手に入れた。

 これを使って、魔法陣を写して書いて……。


 この日は、ずっと部屋に引きこもって魔法陣を解析するのに勤しんだ。

 おかげでいろいろわかった。

 これは確かに研究者の人にはわからないだろう。

 前世の知識を持っている俺だからこそわかったと言えるだろう。

 この魔法陣に隠された秘密を!

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