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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
二章 修行編(仮)
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魔法学校にて 一日目 その3

諸事情で毎週投稿が途切れてしまった。

「何だいまの?」

「魔法じゃない?」


 前の席で生徒たちがざわざわしている。彼らも俺達と同じように見当が付いていないようだ。


「皆さん、お静かに」


 講師が手を叩いて、注目を集める。


「イデアさん、でしたね。今、あなたが生み出した大剣、それは外成魔力操作と呼称されている技術によって出来上がったものです」


 講師が右手を伸ばすと、体を覆っていた魔力が手先に集まり、その手先から青白く光る剣先のようなものが突出した。

 おー、と歓声が沸く。朝礼の時も思ったけど息ぴったりだな。


「魔力には内成と外成があり、体の外を覆う魔力を操作することを外成魔力操作と言います。」


 講師は突出させた剣先を壁に押し当てる。

 するとその剣先は、音を立てることもなく壁をすり抜けた。

 手を戻すも壁に傷跡はなく、剣先は消えていた。


「このように、外成魔力操作で作り出したものは物理的な影響を与えることができず、なにかにぶつかった時点で霧散します。使い道は多くありませんが、内成と外成で魔力操作の感覚が変わることはありません。目で魔力を見ることができるので練習としてちょうどいい技術とも言えます」


 へー、と生徒たちが口をそろえて反応する。仲良しか。

 じゃあ、あの大剣は張りぼてってことか。

 使い道は多くないというのは本当の話だろうが、有効な使い方があるということだ。

 それに、精密に作られたものには本物に迫る力があると思う。


 対人戦を想定して考える。

 誰しもそうだが目に見えている武器はすぐに認識できるだろう。

 対人戦に慣れていれば、隠している武器があるかもしれないと警戒する。

 だが、無数に生み出される武器の幻影をすべて対処するのは相当骨が折れるはずだ。

 外成魔力操作は魔力を動かしているだけで消費はほぼない。 

 相手に直接攻撃を当てることができなくとも、本物に酷似していればいるほどフェイントとしての有用性は上がる。

 武器を一本だけ持っているのといくつ武器があるのかわからないのとでは、相手も慎重に行動せざるをえなくなる。

 たったそれだけでも、有利になり勝利することもできるだろう。


 自分の戦い方を考える。

 はっきり言って、正面戦闘は苦手だ。

 イデアを筆頭に力押しで勝てない人は多い。

 師匠にも言われたが武器を扱うこと自体があまり向いていないため、素手で戦うことをメインとしている。

 身軽かつ武器を奪われることによる大幅な戦闘能力の減少が起こらないというメリットはあれど、リーチが短いことや替えが効かないといったデメリットもある。

 武器を持っていてもそれぞれに得手不得手があるから何とも言えないが、こと力負けしている場合において武器の有無の差はとてつもない。

 じゃあ、魔法ならどうだろう。

 俺自身、得意であるという認識はあるが、それが誰にも負けないほどかと言われるとそうではない。

 イデアのように莫大な魔力があるわけでもないし、学長みたいにいろんな魔法を知っているわけでもない。

 魔力の操作に長けているとも言えない。学長とかさっきイデアがやったことを考えるとなおさら。

 どの分野においても格上の相手の方が多いだろう。

 そんな奴らに勝つには何が必要か、師匠と一緒に考えた。

 その結果、手数と相性で勝るという形に着地した。

 すべての分野を熟知・活用することで、どんな状況・相手に対応できるようになれば、最悪勝てずとも負けることはないだろうと。


 この技術を自在に使えるようになれば手数がかなり増える。

 徒手空拳がメインと相手にばれなければそれでいい。

 ただ、さっきの大剣とまではいかないが、相手を騙せるようになるには練習が必要そうだ。


「先程イデアさんが生み出していた剣ほどとまではいきませんが、皆さんにも一度試していただきましょうか」


 一連の流れをそのまま講義の内容につなげる講師、うまい。

 生徒たちは思い思いに外成魔力操作を行っている。

 中にはかなり緻密な操作を行っている生徒もいて、複雑な幾何学模様を浮かべていたり拡大した雪の結晶みたいなものを作っていたりしている。


「ねぇねぇ」


 イデアが袖を引っ張った。


「みんな、先生が何をしてたのか見えてたの?」

「え?……あー、自分のしかまだ見えてないのか」

「うん」


 生徒たちは当たり前かのように魔視を使って講師の説明を聞いていたが、まだそれすらできていないイデアは何もわかっていなかったようだ。


「魔力操作はできてるからすぐに見えるようにできるぞ」

「どうやってやるの?」


 俺は師匠に教わった魔視のやり方をそのまま教えた。


「おぉー!すごーい!」


 案の定、すぐに魔視をマスターしたイデアは、生徒たちが行っている外成魔力操作を見てはしゃいでいる。

 けれど、イデアはちょっとだけがっかりした表情を浮かべながら、ぽつりとつぶやいた。


「これなら講義、受けなくてもよかったかなぁ」

「なんでそう思うんだ?」

「だって、私ができることとできないこと、ちゃんとわかって教えてくれる先生がここにいるもん」


 照れくさそうにしながらも笑顔でそんなこと言わないでくれ。

 めちゃくちゃドキッとしたわ。

 うわぁ、顔が爆発しそう。


「ま、まぁ俺も知らないことを教えてるし、聞いて損はないと思うぞ」

「そうなの?じゃあ、聞いておこうかな」


 なんとか取り繕って言葉を紡いだ。

 本当にびっくりしたよ、いろんな意味で。

 ……よし、気を逸らして講義を聴こう。


「でも、わかないことがあったら聞いていい?」

「おう」


 だいぶ心のこもっていない返事をしてしまった気がする。

 今、まともに取り合うとぼろが出そうなんだ、許してくれ。

 その後、淡々と進む講義を真面目に聞く模範的な生徒になるのだった。

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