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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
二章 修行編(仮)
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魔法学校にて 一日目 その2

間に合わなかった……

 校庭という名の草原からエントランスホールに戻ると、またも受付の女性に俺たちが参加させてもらう教室に案内してくれた。

 たびたび案内とかいろいろとしてもらっているが、忙しくないんだろうか。


 魔法学校は三階建てではあるものの一つ一つの教室が広く、合計の教室数は二十を超えない。

 講師の数がその半分に満たないため、使わない教室ばかりになってしまい管理するのも面倒だから少なくしたんだとか。

 必要になれば簡単に増やせるから問題ないよ、と学長が言ったらしい。

 王城と同じデザインを特別にあしらっている建物を簡単に増築できるわけない、と思うと同時にできそうでもあるとも感じてしまう。

 これが底知れない学長の発言の重さか。


 講師陣は、魔法の基礎的なことを教える広範講師と各分野に特化したことや自身が研究していることについて教える専門講師に分かれており、俺たちが今から受けにいく一年次の講義は広範講師が行っている。

 二・三年次の講義は専門講師が行っており、四年次は自身の専門分野について研究を行うため講義はないが、職探しをしていて研究しないものもいるみたいだ。

 四年次まで上がれた時点で卒業はいつでもできる制度で、残りの一年の間で自分が何をやりたいのかを考えるために時間を設けてあげているとのこと。


 まれに広範講師にも専門分野を持っている人もいて、専門講師と同じように講義を行うことがある。

 とはいっても、専門講師とは違いマイナーな分野を扱っている人がほとんどなので、紹介程度に一度の講義でまとめて説明し、自学活動の時に興味がある人が訪れてくるのを待つ姿勢をとる。

 悲しいかな、その受け身のスタンスのせいか大きな発展はないらしいのだが、学長が楽しそうだから残そうと援助しているらしい。

 自分で研究すれば絶対進むだろうし楽しいから残すって言っている割に、直接手を出さない当たりよくわからん人だ。


 案内してもらった教室には、先程の校庭に集まっていた生徒のうち三分の一ほどがいた。

 四年次まであることを考えると少し人数が多い、年次が上がるごとに人数が少なくなっているとか?

 試験とかがあって不合格だと上がれないとかなのかもしれない。

 教室に入った俺たちを一部の生徒が一瞥したが、すぐに講師が話始めたので前に向き直った。

 それでも、いつもはいない人が後ろにいて気になっている様子ではあるが。


「それでは、魔力操作基礎の講義を始めます。本日は初めて受ける方がいらっしゃいますので、復習もかねて初歩の練習から行います」


 講師は腕を広げ、全身の魔力が揺らめいているのが見える。


「まずは、魔力感知です。体を包むようにしている魔力が流れていることを感じましょう」


 怪しい宗教の教祖が言ってそうな言葉だな。

 実際に魔力を感じて目で見ることができるとはいえ、びっくりするほど胡散臭い。

 生徒たちが一様に腕を広げて魔力感知を行っているのが見えると、余計怪しい宗教感が漂っている。

 イデアも同様に腕を広げて魔力感知を試みている。


「できるか?」

「…できてる、と思う」


 一応、魔力感知ができているかイデアに確認をとる。

 俺はもちろんできる、わざわざ腕を広げる理由はわからんが。

 他人がどう感じているかは、本人の言葉以外に確認しようがないので信じるしかない。


「では次。今、皆さんは全身を包む魔力を感じているでしょう。その魔力を皆さんが普段使っている食器や筆記用具のように触れられると考えるのです。『ある』と感じているものに『触れる』。これが一番難しく、反対にこれさえできれば魔法を使えるようになれます」


 なるほど、触れる感覚か。

 初めはあるとすら感じないものを感じ、それを意図した形で操るにはまずそれを扱えるものであると認識する必要がある。

 そう認識するにはどうするかと考えたときに、自分たちがすでに扱えるものに共通する『触れる』という感覚を持つことで扱おうとすると。

 理にかなった教え方だ、分かりやすい。

 だが、ここが難しいと講師は言った。ここまでかみ砕いた教え方が必要になるほど。

 じゃあ十年前に、あのわかりづらい教本から独学で魔法を使えるようになったのは、かなり運がよかったのか。


「普段、使っているもの…」


 合理的な講義をするなと感心しつつ隣を見ると、イデアがなにやらぶつぶつと独り言をつぶやきながら思考している。

 すると、何かに気づいたような顔をした後、背負っている大剣の柄に触れる。

 しばらくそうした後に、目を閉じ両手を前に出す。その姿はまるでその背にある大剣を握りしめているかのようだ。


 直後、その手に大剣が出現した。


「なっ!?」

「わう!?」


 俺の驚いた声に反応して目を開いたイデアは突如として出現したその大剣に驚き手放した。

 大剣は、自身を形作っていたと思われる魔力の粒子となって霧散した。


「……今の何?」

「……わからない」


 本当にわからない。

 魔力で形成した剣を作るだけなら今の俺にもできる。

 あの雪山では適当な形成をしたが、しっかりとイメージできれば可能だ。


 だが、それはあくまでも魔法を使えばの話だ。

 イデアは魔法を使っていない、いや使えない。

 詠唱なし、魔法陣なし、魔法の知識なし。

 そんな状態のイデアが魔法を使えるわけがない。

 にもかかわらずその手に生み出されたと思われる大剣は、一目見ただけでも背にある大剣と寸分違わない形をしているとわかった。


 常軌を逸している、としか形容できない。

 本人が自覚していないことで、余計わけがわからなくなる。

 あの学長が『素晴らしい』と表現したのはこういうことだったのだろう。

 彼女は、魔力量だけでなく魔力を扱うことにも天性の才能を持ち合わせている、と。

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