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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
二章 修行編(仮)
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次の約束

なんだかんだ続けられてる週一投稿(前回は誤差)

このまま頑張れ、俺。

「次は魔力操作なんだけど、どうする?」

「ちょっと待って。」


 魔力の感知に続けて、魔力の操作・魔法発動の基礎・実践まで説明しようかと思っていたのだが、手で制されてしまった。


「教えてくれるのはうれしいんだけど、私すでに限界なんだけど…。」

「あー…。」


 よくよく見ると、制するために伸ばした手がプルプル震えている。

 それはもう生まれたての小鹿のようにプルップルだ。

 この使い古された表現が、完璧に当てはまる人を直接見るのは初めてかもしれない。


 今のイデアは筋肉の疲労ではなく、魔力疲労というちょっと特殊な状態によって震えが引き起こされている。

 主な症状としては、疲労感・気怠さ・全身の震えが上げられる。

 魔力疲労は筋肉の疲労と同じように、基本的には魔力の継続的な使用により発生する症状だ。

 特定の条件で症状が出やすくなることがあり、初めて魔力感知・魔力操作・魔法使用をした日に起こりやすい。

 あまり運動していない人がいきなり激しいスポーツを行った翌日に筋肉痛になっているようなものだ。

 しかも、魔力は筋肉のように部位で分かれているわけではなく、一塊として扱われるらしくそれが全身の震えとして表れている。


 この症状は、魔力が肉体の動きに反した流れ方をすることで起こるため、魔力操作がある程度できれば症状の緩和・解消が可能。

 毎日のように魔法を使っている人にはあまり発生しない症状であり、期間を空けて魔法を使用した時に発症して思い出すようもの。

 それに、そもそも発症するかどうかも個人差があるので一度も経験することなく魔法を使っているような人もいる。

 俺は父さんの書斎でいろいろと調べているときに知ったことと、筋肉でいうストレッチに値する魔力操作の練習を行っていたことが功を奏して、未だに経験がない。


 イデアは今日初めて魔力を感知したということ、俺が無理やり魔力の流動を促したために症状が出たと予想できる。

 言っていた通り、強引なやり方なので発症するかもしれないとは考えていたが、まさかそこまでとは。


「そんなに負荷大きかったか…、すまん。」

「謝らなくていいよ、やるって言ったの私だし。」

「いや、やっぱり事前にいろいろと説明すべきだった。」


 今回の食事は雪山での慰労と感謝のために誘ったのに、対象の相手を疲れさせてしまっては元も子もないない。


「うーん…、じゃあ貸し一つね。今日の続き、また今度してね。」


 これはもう一回なにがしか別の形でお礼するか、と考えていたところイデアは指を一本立て提案を持ちかけてきた。

 しかも、俺にとっては願ったり叶ったりの提案だ。


 俺以外だと魔法を使っているところは師匠と刃狼の二者だけ、他を見たことがない。

 俺の白い魔力がどんな特徴があるのかわからないということと、図書館等で調べた限りでは何も情報を得られなかった。

 それには様々な魔力・魔法・人種・環境等などといった実地で得られた情報をもとに、自分で調べ考えるしかない。

 知っている人がいるのならその人に聞くのが一番手っ取り早いのだが、居るかどうかすらわからないものに頼ってはいられない。

 元からそういうつもりがあったわけではないが、イデアが自分からやりたいというなら乗らない手はない。


「それでいいのか?」

「うん!その代わり魔法がつかえるようになるまで、ちゃんと面倒を見ること!」


 ニッと朗らかな笑顔を向けられてしまった、天使やぁ。


「お待たせいたしました。」

「あ、どうもー。」


 そうこうしているうちに頼んでいた料理が届いた。


「「いただきます!」」


 俺が頼んだサニーパックは四角いパン生地の角を持ち上げて包み込んだ形だ。

 四辺の隙間からほんのりと湯気が見えることと、ふっくらとした見た目から中に何か入っていることがうかがえる。

 こぶし大のものが六個ほど、一つを掴んでかじりつく。

 すると、中からじゅわぁっと熱を持ったソースが口の中に広がり、やわらかな酸味と甘みを感じた。

 これは…


「ピザだ。」

「ん、はにかひった?」

「いや、なんでもない。」


 心の中で復唱、ピザだ。

 間違いなくトマトベースで作られた中身は、いいとこのピザ屋のハラミをスライスではなくブロックで使っている作りのソースだった。

 言うなれば、餃子をもとに作ったピザって感じだ。

 うまい、とてもうまい、うまいんだけど…。

 なんというか、なじみがあるのが違和感というか、もっと「ファンタジー!!」って感じの料理を期待していた。

 いや、前世でも見たことないけどさ。


「おいしー!!」


 ぱっと見だとスペアリブみたいなものを食べてとても喜んでいるイデア。

 それも前世で見たことあるなぁ、味が同じかはわからないけど。


「あれ、食べないの?」

「ん?あぁ、食べるよ。」

「…一個もらってもいい?」

「…いいよ。」

「やったー!!」


 …いっか、別に。

 俺の心のもやもやを太陽のような笑顔で晴らしていってくれる。

 こんなに喜んでくれてるんだ、それで良しとしよう。

 その後、夕食を楽しんだイデアを見送り一日が過ぎていった。

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