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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
第一章 転生編
5/60

師匠ができました

「立てるかの、少年?」

「あ、えと、はい。だ、大丈夫だと思います。」


 あぁ、見知らぬ人に声かけられたからって、俺動揺しすぎ。

 落ち着け、相手は恩人だ。

 失礼な態度はとっちゃいけない。


「あの、危ないところを助けていただいて、ありがとうございました。」

「ふぉっふぉ、なぁに気にするでない。ただの通りすがりの老耄が、悪い魔物を倒しただけじゃよ。それにしても、その年でしっかりと敬語が使えるとはお主の両親は中々にしっかりしておられるのじゃな。関心関心、ふぉっふぉっふぉ。」


 とても朗らかな雰囲気のお爺さんだな。

 でも咄嗟に出た敬語は前世で身につけたものだし、こちらの世界では礼を失する行為になっていたかもしれない。

 思わず出てしまったとはいえ、次から注意しよう。


 そういえば、ゴブリンはどうなったんだ?

 チラッ、とお爺さんの後ろをのぞき込む。

 だがそこにはゴブリンの姿はなく、代わりに手のひらサイズの皮袋が落ちていた。


「?……なんだこれ?」

「それは魔物を倒すと落とすものじゃ。戦利品袋と呼ばれている。倒した魔物は、体が魔力に変化し霧散するのじゃ。」

「なるほど、これがドロップ品の役割を果たすのか。」

「どろっぷ?うーむ、最近の若者の言葉はようわからんのう。」


 ドロップの意味がわからないのは当然だ、この世界にはノクス語の他は全て民族言語や古代語ばかりで、前世のように多数の言語が入り混じってはいない。

 まぁその方が国家間戦争や言語差別が起こりづらいので利点はある、ただ文化の発展は少々遅くなるが。


 そんなことは置いておいて。

 このお爺さんかなりの年(に見える)だというのに、目にも止まらぬ動きで一撃の下にゴブリンを倒してしまった。

 きっと只者じゃないはずだ。

 是非とも、俺にこの世界での戦い方を教えて欲しい!


 まずは印象よくいこう。


「お爺さん、お名前を聞いても宜しいですか?」

「ワシか?ワシはハウラスじゃ、お主は?」


 ハウラス?なんか聞いたことあるような………。

 まぁいいか。

 このお爺さんには素の俺で接しようこれから長い付き合いになりそうだし(確信)。


「僕、じゃなかった俺はリュートです。」

「ふむ、東洋の言葉じゃの。いい名じゃ、その名に見合うよう精進するが良いぞ。それじゃあの。」

「あ、待ってください!」

「なんじゃ?」

「先程の動き、かなりの達人と見ました。そこでお願いがあります。どうか俺に戦い方をお教え願えませんか?俺は将来、冒険者になるつもりです。そのためには強くならなければならない。貴方が言ったように、俺の名前に見合うように強くなりたいんです。どうか、お願いします!」

「うーむ、困ったのう。」


 ハウラスさんは頭をポリポリと掻くと、目を細め俺を見定めるように、じっと見てきた。

 俺は頭を下げたままハウラスさんの返事を待った。

 十数秒経って、ハウラスさんが沈黙を破る。


「面白い。」

「え?」

「いいじゃろう、お主はなかなか奇妙な雰囲気を漂わせておるし、何よりその若さで自らの将来をきっちり見ておる。ならば、ワシが力を貸してやろう。たいしたことは出来ん老耄じゃが、少しは役に立つじゃろう。」

「ありがとうございます!!」


 よっしゃぁぁぁぁぁあ!!!

 これで戦闘面での不安はある程度解消できる。

 あの憎きゴブリンもそうそうに蹴散らしてやる!

 そしていつかは、この世界の全ての物、場所、情報を知り尽くす、それが俺の最終目標だ。

 だからハウラスさんの助力は今の俺に最も必要なことの1つだ。

 それが得られるというのは非常に大きな進歩になる。

 思わず心が踊って叫びだしそうになったがなんとか抑えた。


「それじゃあ、早速。」

「まぁ落ち着くんじゃリュートよ。今日はもう日も落ちてきておる。お主も帰る時間じゃろう?今から行く場所に、明日来るが良い。そこがわしの家じゃ。」

「そうですね………、わかりました。」


 俺は渋々と言った表情でハウラスさんについていく。

 数分の間、互いのことを話しつつのんびりと歩いているとコノ村へ戻ってきていた。


「ハウラスさんもここに住んでたんですね。お会いしなかったのでてっきり別の村にお住まいなのかと。」

「無理もないじゃろ。ワシもコノ村に帰ってくるのは凡そ5年ぶりじゃ。ちょっと知り合いに用があって、遠くの街へ行っていたのじゃ。」


 そう言ってまたゆっくりと歩き始める。


「ここがワシの家じゃ。おーい、婆さんや。今帰ったぞう。」


 しばらくすると、見覚えのある場所にたどり着いた。

 そこは、プランお婆さんの家だったのだ。


「確かに年齢は同じくらいだし、夫婦であってもおかしくはないか。」


 世間は狭いとはまさにこの事だな、と少し思った。

 俺も遅れて中に入ると、2人は仲睦まじそうに話をしていた。


「これはお土産じゃ。どうじゃ?見たことあるかの。」

「いえ、まだ見たことはないですねぇ。またこれも育てておきましょうかね。長旅ご苦労様です。」

「なぁに、現役の時ほどとはいかんがワシもまだまだ元気じゃ。このくらいなんともない。」

「あまり無理はなさらないでくださいね。」


 2人とも笑顔で会話し、本当に仲が良さそうだ。

 すると、プランお婆さんがこちらに気づいた。


「……おや?リュートじゃないか、また植物を持ってきたのかい?」

「あ、いや違う、ますです。」

「なんじゃ婆さん知り合いじゃったのか。」

「そういうお爺さんこそ、いつお知り合いに?」

「ついさっきじゃ。ワシに戦い方を学びたいと言ってきての、今日はもう遅いから明日ワシの家に来るよう案内しておったのじゃが、必要なかったかもしれんの。」


 それにしても困った。

 俺プランお婆さんとはこっちの世界に合わせた話し方だったから、ハウラスさんと一緒にいられるとどっちの話し方すればいいのかわからんぞ。

 と、とりあえず今日は退散すればいいか。


「じ、じゃあ俺ー、僕はこの辺で。さようならっ。」

「おーい、ゆっくりしていってもいいんじゃぞー。………どうしたんじゃ?いきなり走って帰ってしもうた。」

「もう時間も遅いですし、あの子も両親が心配してはいけないと思ったんじゃありませんか?」

「そんな走り方ではなかったが……、まるで逃げるようじゃった。まぁいいかの。」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そして次の日、朝早くから俺はハウラスさん達の家へ向かった。

 流石に日も登ってすぐのことなので、プランお婆さんを尋ねに来た人はいなかった。

 その代わりに、家の前にハウラスさんが立っていた。


「おはようございます、ハウラスさん。」

「おー早いの、もう少し遅いかと思っておったんじゃが。いつもこの時間に起きておるのか?」

「いえ、今日が初めてですね。」

「ほほー、そうかそうか。やる気十分ということじゃな。よし、それじゃあ早速行くとするかの。」

「どこへ行くんですか?」

「森にある開けた場所じゃ。あそこなら誰の邪魔にもならんし、昨日のお主のように後から不意に魔物が現れることもなかろう。」


 俺はハウラスさんについて森の中に入る。

 昨日入った場所より更に奥に進んでいく。

 距離にしておよそ2倍といったところ、そこにはハウラスさんが言った広く開けた場所があった。

 確かにここなら修行するにはうってつけの場所だ。


「それじゃあ、始めるとするかの。まずはお主の今の実力を見せてもらうとするかの。ほれ、どこからでもかかってきなさい。」


 広場に着くやいなやハウラスさんは木刀を構えた。

 俺も木剣を構える。

 自作であるため、まだまだ握りなれていないし、そもそも1人で訓練を始めてまだ数日しか経っていない。

 知識だけなら申し分ないかもしれないが、経験が圧倒的に足りていない。

 そのため、非常に不格好な構えになってしまった。

 だが、ハウラスさんは今の俺の実力が知りたいと言ったのだ。

 形はどんなものであれ、俺の全力を見せるのだ!

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