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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
二章 修行編(仮)
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試験の結果は?

まただいぶ期間が空いたような気がするけれど、気のせいということにしてほしい作者。

 はぁ、休んでいたはずなのに一瞬で疲れた。

 結局ここはどこかわからないし、でも無事なだけ良しとしよう。


「さて、と」


 ベッドから立ち上がって、伸びをしたり軽くジャンプしてみる。

 うん、体はもう大丈夫そうだし、立ち歩いても問題ないだろう。

 …ん、俺の服は?

 いつの間にか病衣らしき白い服を着ているので、誰かが着替えさせてくれたのだろうか。

 病衣、というかただの貫頭衣だな。

 気絶している人に普通の服を着せるのは手間だろうから、確かにこっちの方が効率はいいが…。


「まさか下まで脱がされているとは…。」


 そう、俺は現在布っ切れ一枚しか着ていないのである。

 すごく股下が涼しいです。

 …落ち着かない、俺の服求む。


「それに俺の荷物もない。」


 少なくともベッドから見渡した限りじゃ、見当たらなかった。

 だが、この世界じゃ持ち主のもとから離して別に預かってるということは、ないんじゃないか?


「近くに………、あった。」


 この部屋にあるベッドは三床、俺は真ん中のベッドを使っていた。

 扉から見て奥の、カーテンで閉ざされているベッドの上に俺の服と荷物は置いてあった。

 でもなんでわざわざ隣のベッドに?しかもカーテンまで閉めて。

 ……まぁいっか、さっさと着替えてしまおう。


 …ここがどこだかわからないままなのに着替えるのは、少々暢気(のんき)すぎるだろうか。

 傍からみたら完全に無防備だろうな、まぁもう脱いでるけどね!

 さて、下着は履いたが次は上と下どちらから着ようか、と手を空中で彷徨わせていると。


 ガララッ


「失礼しま…」

「ん?」


 何の前触れもなく開けられた入口の扉、そこには見知った顔があった。


「え、あ、起きて、へ?着替え、って下着、え?」


 イデアである。

 非常に動揺している様子。

 うーん、前世じゃ学校で男子が女子の着替えを除けば多方向の死が待ち受け、反対に女子は男子が着替えていようとも関係なく教室に入ってきていたものだが。

 どうやらイデアは耐性がなかったらしい、初心(うぶ)だなぁ。

 あ、俺は下着さえ着ていれば見られるのあんまり気にしないタイプです、流石にジロジロ見られるのは恥ずかしいけど。

 ……あわあわしているだけ、なのか?

 いきなりのことで頭が回ってないのか、その場であたふたしてはちらちら見られている。

 雪山ではあんなに頼りになったのになぁ、かわいいからいいけどね!!

 だがまぁ、このまま放っておくのもかわいそうだ。


「えっと、着替え中なんで一旦部屋から出てもらっても?」

「へ!?あ、うん、そそっそうだね!しっ、失礼しましたぁ!」


 イデアは勢いよく扉を開けて、外に飛び出ていった。

 うむ、いい反応が見れて個人的にはうれしいが、前世だったら露出狂の思考なんだよなぁ。

 別に見られたいわけじゃないし、俺から見せに行ったわけじゃないので大丈夫だと信じたい。

 まぁいいや、ちゃっちゃと着替えてしまおう。

 結局のんきに着替えをし、持ち物も特に問題ないことを確認していると、再度扉が開かれた。


「ん?」

「起きたようだな。」


 少し間を開けて、入ってきたのはギルマスのガルートさんだ。


「ここギルドだったのか。」

「厳密にいえばここはギルドではない、ギルドと提携をしている医療施設だ。敷地はギルドの中だがな。」

「へぇ。」


 それ、『ここはギルドだ』って言ってもよくないか?


「あぁ、間違ってもギルドの一部だなんて言われたかないねぇ。まぁそう思われても仕方がねぇ場所にはあるが。」

「来たか。」


 ガルートさんの後ろからひょっこりと現れたのは、白衣を着た無精ひげの男性。

 年のほどはガルートさんよりも低く見えるが、見た目から判断するのは早計だろう。

 深く曲がった猫背と温和そうだが威厳もある顔つきが特徴的だ。


「この人は?」

「この医療施設を受け持っている医者だ。」

「ニシロだ。呼び方は、まぁオジサンでいいぞ。」

「あぁ、よろしく。」


 普通に優しそうな人だけど、そこまでギルドを毛嫌いする理由でもあるのか?


「少年、体の調子はどうだ?」

「まぁ、大丈夫だと思うけど。確認がてら素振りでもしないことには完全に本調子かどうか、明確にはわからないな。」

「妥当な判断だな、俺から見た限りでも特に問題はなさそうだ。」

「あぁ、世話をかけてすまない。」

「気にするな、仕事だからな。そうでもなきゃ冒険者の相手なんぞやってられんからなぁ。」


「おい医者、いいのかそれで。」

 とは言いませんけど。


「すまん、こいつは大の冒険者嫌いなんだ。」

「ふん、そう思うなら給料上げるかほかの冒険者の医務室の扱いをどうにかしてくれ。」


 そういうと手をひらひらと振りながら、部屋から出て行った。


「そんなに扱い悪いのか?」

「うむ、何かということを聞かない奴に限って長期入院することが多いからな。そいつらの面倒を見ていればそういう愚痴が出てもおかしくない。」

「それ、ギルマスから注意とかしないのか?」

「俺が注意してよくなるようなら、あいつがあんなことをいうことはないだろうな。」


 うーん、どうにもできないのか。

 がんばれオジサン、影ながら応援してるぞ。


「あ、あのー、もう入ってもいい?」

「あぁ、そういえば。入っていいぞ。」


 扉越しにイデアの声がした。

 俺が返事をすると、おずおずと入ってきた。


「えーっと、…ご、ごめんなさい!」

「え?」


 それは、さっき下着姿を見たことに対しての謝罪ですか?


「私、先輩なのに、君に頼ってしまった。本当なら何かおかしいと感じた時点で、街に帰る判断をするべきだった。」

「イデア……?」

「そうしたらあんな危険な目にあうこともなかったのに。本当にごめんなさい!」


 …………。


「なんでそんなことで謝るんだ?」

「え?」

「あの熊と遭遇したのは確かに探索を続けたからだけど、もし何の確認もせずに帰ってきていたら被害がでたかもしれない。それに、もし俺一人だったら初めにあいつとあった時に死んでた。『私は命の恩人だよ?感謝してね!』くらい言ってもいいんだぞ?」


 そうだ、イデアは俺を助けてくれたんだ。

 だから、そんな悲しそうな、申し訳なさそうな顔をしないでくれ。


「お礼は、そうだなぁ……。今度、ご飯一回おごるとかでどうだろう?」

「……うん、ありがと。」

「こちらこそ。」


 ニッと笑いかけてやると、ぎこちなくではあるが微笑み返してくれた。

 うんうん、やはりかわいい女子には笑顔が似合うぜ(キリッ)。

 まぁ、咄嗟に口に出ただけでそこまで深い意図はなんですけどね。

 お礼はもちろんする、冒険者が危険な仕事なんてとっくに知っている。

 助けるのもそれ相応のリスクが伴うのだから、お礼はして当然である。

 問題は命を救ってもらったお礼に見合ったものがどの程度のものなのか、判断がつかないところか。

 まぁ、なんだったら相手に決めてもらえばいいか。


「ンンッ、話は済んだか?そろそろこちらの話も進めたいんだが。」

「ああ、そういえばギルマスいたんだったな。」

「イチャついているようだったから、気配を消させてもらった。」

「「イチャついてねーよ(ないよ)!」」

「フッ、どうだかな。少なくとも第三者目線での物言いだ、そこまで否定することもないだろう?」


 ギルマス(このおっさん)、さてはスルーされてたの根に持ってやがるな。

 というか、この人そんなキャラだったか?

 言うなれば、仲のいい女友達と遊んでいるときに親戚のおじさんから、『いつ結婚するんだ?』って言われている気分に近い。

 そんな気あるかい!と否定すればするほど沼にはまるやつだ。

 どこのギャルゲー展開だよ、現実(リアル)にそんなの存在しないわ。


「で、話って?」

「昇進の話だ。」


 あぁなるほど、すっかり忘れてた。

 試験で雪山言ってたんだったな。

 もう普通に依頼をこなしに行っている気分だった。


 今回は不合格だろうな。

 一人で行ってたら確実に死んでいたであろう人間に、情けで昇進させるようなことはないと思っている。

 前世よりも簡単に人が死んでしまう世界だし、できる限り減らそうとするならそもそも危険な目に合う機会を減らすのが効果的だ。

 そういう面でいうと、冒険者の階級のあれこれはまさにそれだろう。

 故に、昇進試験の真っ最中に死にかけるやつを、さらに危険な目に合わせることはさせまい。

 よって、昇進はなしってことになる、仕方ないよね。


「単刀直入に言うと昇進は保留だ。」


 ん?


「不服申し立ては、聞くくらいはしよう。」

「保留?保留って言った?」

「あぁ。」

「なんで保留?不合格とか失格じゃなくて?」

「昇進試験には判断がつかないため保留になる条件ってのがある。」


 ギルマスは手を出し、指折り数えながらその条件を言っていく。


「一、試験内容が判断基準に満たないものでありながら完了となった場合。二、試験官の判断が不当なものであった場合。三、試験中に予期せぬ妨害が発生した場合。四、その他試験にかかわる内容外に逸脱した問題が発生した場合。今回は四番が適応された。」


 ギルマス曰く、俺を背負って連れて帰ってきたイデアに事情を聴き、ヤツの落とした戦利品袋の中身を見分したところで納得、すぐに対応に走ったらしい。

 ロックベアーの希少個体として、上・中級冒険者に対して緊急指定で依頼を出し、メル雪山の調査をしているとのこと。


「まぁ、亜種希少種が短期間に二度も現れるのは明らかにおかしいからな。現状を詳しく調べておかなければ、いざというときに何の対処もできない、なんてことになるからな。」


 ひとまず安心、ってことか。

 まぁ無理した甲斐はあったってことかな。


「それで、俺はどうすればいい?再試験になるのか?」

「選べる選択肢としては、再試験を受ける・ギルドが指定した依頼をこなす、このどちらかだな。」


 んー、再試験より指定した依頼の方がよさそうだな。

 再試験ということはまた試験官がつくわけで、魔法とかいろいろと見られたくないものがあるし。

 できるだけ一人でやれる方がいいんだよなぁ。

 まぁ、イデアが試験官ならもう半分くらい見せてしまったし、試験中に魔法のこととか教えるって言ったしなぁ。

 だけどイデアが特別なだけで、他の人は何も知らない。

 試験官をまたイデアにしてほしいっていうのもなくはないが、それが通るかどうかわからないし。

 正直、望み薄だろうな。


「どちらにせよ、現状では希少個体と思わしき存在の報告等いろいろやることがあってな。最終的な結果は明日までに準備をしておく。それ以降であればいつ顔を出してくれてもかまわない。」

「了解。」


 もちろん休養はとるが、明日にはギルドに顔を出そう。

 十分に休養を取っていいと言ってくれているのだから、日取りにある程度の余裕は持たせてくれるのだろう。

 だが、後にするということは中級に上がるのもそれだけ送れるということ、可能ならできるだけ早く中級になりたい。

 やれることの幅が増えるに越したことはないからな。

 そうと決まれば、体が動くのだしここに長居する必要はない、早々に立ち去ろう。

 それにちょっと体を動かして調子を整えておかないと明日に響きそうだ。


「それじゃあイデア、またな。」

「あ、うん。」


 医療施設、というか医務室から出てこれからのことを考える。

 …素振りとか体を動かすのにいい場所、知らないなぁ。

 まぁ、適当に山の方にでも行こうかな。

 なんとなく体の動きが重い気がしないでもない。

 あぁ、早く体動かしてぇ。


 前世の俺だったら考えもしないことだなぁと、街の外で軽く走っているときに思った俺だった。

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