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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
第一章 転生編
4/60

勇気と出会い

 俺は魔法が使えることがわかったおかげで、今の生活がもどかしくなってしまった。

 平穏な日々もいいものだが、早く魔物と戦いたいという気持ちが今までよりも大きく、激しくなってしまったのだ。

 だが、まだ俺には1人でこっそり戦うだけの実力も、勇気も足りない。


 この世界は確かにゲームのような世界だ。

 だからといって、全てがゲームという訳ではない。

 人は死ねば生き返らない。

 五感はもちろんのこと、痛みもちゃんと感じる。

 本物のゲームは決して自分に影響はないし、死んでも生き返る。

 これは絶対に覚えていなければならない、この世界で生きていくためには忘れてはいけない。

 ここはゲームの世界であっても、ゲームじゃないということを。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「プランばあちゃん、これなんて草?」


 やっぱりゲームの世界だここ!

 だって、鑑定士がいるんだもん、分野別だけど。

 初期の村には、鑑定士とか冒険のヒントをくれるNPCっているよな。

 俺は今までにないくらい、ゲームの世界に来たんだってことを実感がしている、これこそまさにRPG世界だ!!


 俺は最近、森に入っては植物をもって、このお婆さんのところに行くのが日課になっていた。

 事の発端は魔法が使えるとわかった翌日。

 魔法の練習は夜にやることを決めた俺は、なにかすることはないかと、村をふらふらと回っていると、何やら人が集まっている家を見つけた。

 近くにいた、知り合いのおじさんに聞いてみよう。


「おじさん、ここで何かあったの?」

「ん?別に何かあった訳じゃないぞ。ここはプランって言う婆さんがいてな。その人は、植物のことならなんでも知っていて、しかも多くの植物を1人で育てているんだ。今ここにいるのはこの村の近くにある、他の村から来た調合師や薬剤師が貰いに来たり、買いに来たりしているんだ。」

「おぉぉ、すげー!」


 お婆さんの話も驚いたが、ここまで懇切丁寧に答えてもらえるとは思わなかった。

 村の門のすぐそこで「ここはーー村です。」って言うNPCを見つけたくらい驚いた。


 それは一旦置いておいて。

 この村には植物のスペシャリストがいたようだ。

 この村にはまだまだ知らないことがたくさんあるみたいだ。

 そういえば、この村なんて名前なんだ?

 7年も住んでいて知らない、というかそのことに疑問を抱かなかったな。

 人と話す時も「この村」って言ってたし。

 さっきのおじさんに聞こう。


「おじさん、この村の名前ってなんだっけ?」

「?変なことを聞くな。今自分で言ったじゃないか。」


 ん?


「どういうこと?」

「ここはコノ村だぞ。」


 マジか。

 この村、コノ村って言うのか。

 そりゃ、「この村」って言ってたら、音は同じだから通じるよな。


「ありがとう、おじさん。」

「おう。」


 おじさんに礼を言って別れた。

 とりあえず俺も、そのお婆さんの家に行ってみるとするか。


 中を覗くと、何人かの人が座っているお婆さんの前に列を作っていた。

 座っているお婆さんがプランという方のようだ。


「プランさん、これはうちの村の近辺で取れた薬草なんですが、どうですか?」

「そうだねぇ、これを取ってから何日目だい?」

「だいたい10日程です。」

「ほほぉ、なかなかいい薬草みたいだね。それだけ時間が経っていれば、もう少し色艶が落ちてもおかしくはないんだがねぇ。これが取れた辺りはいい土なんだろう、大事にするんだよ。」

「わかりました、助言ありがとうございます!」

「なぁに大したことじゃないよ。また困ったことや聞きたいことがあれば、いつでもうちに来な。」

「はい!」


 といった具合にお婆さんは、みんなの相談や薬草などの売買、物々交換をしていた。

 それにしてもこのお婆さん、とても元気である。

 齢70-80位に見えるのだが、身体から溢れるエネルギーはとても若々しく見えた。

 なにかいい植物でもあるのだろうか。


 お婆さんの前に出来た列が解消されたので、俺は少し緊張しつつ話しかけることにした。


「お、お婆さん。お婆さんは植物のことならなんでも知ってるの?」

「そうだねぇ、だいたいのことは知っているよ。」

「じゃあさ、森でとってきた植物で、わからないことがあったら聞きに来てもいい?」

「あぁ、いつでも来ていいよ。」

「ありがとう!」


 よし、これで森に入る口実が出来たな。

 俺の両親は心配性だから、外に出ることは許されているが、森に入らせてはくれなかった。

「森に入る理由がない」や「森は魔物がいて危ない」と言われなかなか許可がでなかった。

 だが、村の近くに生えている植物を取りに行くだけなら、渋々かもしれないが許可がでるだろう。

 そして、こっそり訓練をしようと考えている。


 俺の両親は大の心配性で、庭で剣術指南書とにらめっこをしながら、自作の木剣で素振りをしていると、いつも家からこちらをチラチラと見てくるのだ。

 傍目に両親が見えるので集中出来ない、かといって止めに来る訳でもない。

 両親は自主性を尊重してくれているから、止めには入らないということはわかっている。

 だが、心配なのは変わらないようで、こちらとしても申し訳なく思ってる。

 そこで、森の中なら両親の目につかず、いい訓練場所になると考えたわけだ。


 お婆さんの話を聞かなければ森に入れるようになるにはもう少し時間がかかっただろう。

 即興で思いついた割には、上手くいきそうだ。

 後日、両親にこのことを伝えると、予想通りあまり快くは受け入れてはもらえなかった。

 だが、なんとかお願いしてようやく森に入る許可を得たのである。


 お婆さんに適当な植物を持っていき、その後もう一度森に入った。

 今度はお手製の木剣も一緒だ。

 森の奥の暗いところに魔物は出るので、あまり深くは入らずそれでいて村の人の目につかない程度の距離で訓練している。

 とは言っても、ただ木剣を振り回したり、太めの木を切りつけてみたりと、なんとも子供っぽいことしか出来ない。

 前世も含めて、生まれて23年間一切武術に触れていないのだから仕方ないといえば仕方ないのだが。

 せめて師匠でもいれば何か変わるかも。


 などと、想像を膨らませていると背後でガサガサと音がした。

 なんだろうと、振り返るとそこには見たことのない、でも見覚えのある生き物がそこにいた。

 緑の肌に黄色の目、小柄で今の俺と大差ない身長の醜い顔とボロきれを纏った生き物。

 そう、RPGのド定番、ゴブリンだ。

 初めて魔物を見つけたことに俺はとても震えた。

 否、震え上がった。

 嬉しいのではなく、怖かった。

 ゲームでは、最弱モブの1つとして知られているゴブリンだが、今の俺にはゴブリンに勝てるだけの実力はあるのか?


 あるわけがない。

 もしあったとしても、ゲームの主人公のように初めから果敢に立ち向かえるほどの勇気が持てない。

 俺はまた死ぬのか?

 そう考えたら、体が震えてまともに動けなくなった。

 そうこうしているうちにも、ゴブリンはこちらに気づきゆっくり近づいてきている。


 俺はどうすればいいんだ、どうすれば。

 何も出来ない。

 まだ子供な俺にはゴブリンより身体能力は明らかなほど劣っている。

『フィジカルアップ』を使っても遠く及ばない。

 そう感じるほどの威圧感を感じる。

 ただのゴブリン、されどゴブリン。

 小さな俺には、最弱の魔物は大きすぎた。

 俺は今、2度目の死を迎えようとしている。


 嫌だ、まだ死にたくない。

 俺はまだこのゲームをクリアしていないんだ。

 転生して、何もできない、何も知らない、何も成し遂げていないのに死んでられるか!

 震える体に力を込めて、木剣をゴブリンに向ける。

 勝てないなんてわかってる、でも何もせずに負けるなんて、ゲーマーの俺が許すわけがない。

 俺は自分に喝を入れるため、相手を威嚇するために吠えた


「さぁ、どっからでもこい!」


 ゴブリンは醜い顔に歪んだ笑みを浮かべて飛びかかって来た。


 その時、一陣の風が吹いた。


 グゲャァッ……


 ゴブリンのものと思しき弱々しい声が聞こえた。

 それと同時に、俺の目の前に誰かがいるのに気づいた。

 その人は着物を着ていて、右手には木刀が握られている。

 その人は振り返って俺に笑顔を浮かべた。


「ふぉっふぉ、大丈夫かの?」


 その人は齢70-80、プランお婆さんと同じくらいの年齢のお爺さんだった。


 今の俺にはわからないことだが、この出会いはこれからの俺の人生を大きく変えていった。

 ここから、俺の世界攻略が始まっていくのである。

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