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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
二章 修行編(仮)
39/60

大熊を狩れ 4

ちょっとずつ文章量が戻ってきているとっ思いたい。

 雪も降っていないのに完全に戻った雪道を全力で踏み込んで加速、直近のロックベアーの脇腹に火が噴き出る武器(と呼ぶべきもの)を叩き込んだ。

 熊の割には小さい体躯だがそれでも熊は熊、ただ殴っただけではびくともしない。

 だが、『属性付与』の効果による火属性のブーストで勢いと威力の増したこの一撃は、相手の体を浮かせ吹き飛ばすまでに至った。

 鈍い打撃音と猛獣の叫び声があたりを包み、奴らはようやく襲撃に気づく。

 消滅した一匹目には目もくれずに二匹目に突貫。

 相手の迎え撃つ体制が整う前に、側頭部を殴り飛ばした。

 一撃でノックアウトされたロックベアーは戦利品袋を残し、光の粒子となって消えていった。

 残りは三匹。


 流石に奴らも戦闘用の思考に切り替えており、一定の距離を保ちながら俺の周りを囲むようにぐるぐると回りながら警戒している。

 数秒の硬直状態の後、先に動いたのは背後のロックベアー、それに続けて他二匹も動く。

 四足歩行で初速・加速をつけ、俺を射程圏内に収めると二足歩行に切り替え奴らの特徴である硬質な両腕を大きく振り回した。

 まともに当たれば一たまりもない、だが当たらなければどうということはない。

 奴らは俺の予想に違わず身動きが遅かった、よって避けることは簡単だ。

 舞うようにすり抜けてすれ違い様に胴を叩く、一撃の威力はないが武器に付与された火属性が奴らの身を包む剛毛を焼く。

 気にするまでもないはずの小火が瞬く間に大火へと成長し奴らの身を焦がす。

 苦悶の叫び声をあげながらのたうち回り体を雪にこすりつけ、なんとか火を消そうとしている。

 黒煙を上げながらこちらを射殺さんとばかりの視線を浴びせてくる、ダメージはかなり大きそうだ。

 そのせいか奴らの攻撃は単調かつ精細を欠いたものとなり、大振りな攻撃で自らバランスを崩してしまっている。

 二度三度と奴らの攻撃を避けると、その隙に奴らの囲いから抜け、再度魔方陣を描き始める。

 そしてまた武器に重ねるが起動はしない、それに特にこの魔方陣には明確な効果はない。

 魔方陣と武器は互いに魔力でできているため、その性質により引き付け合い武器に魔方陣が追随するようになった。

 この状態になると俺から魔方陣に対して魔力の供給以外の干渉が放棄されている状態だ。


「これをこうして、ポーイ。」


 それを奴らの中心へ投げ、全力でバックステップ。

 同時に指向性を持たせた魔力を過剰に魔方陣に流し込み、魔方陣への供給回路を切断。

 魔方陣は、完全に俺の管理下から離れたことによって自壊し暴走し始める。

 暴走とはいっても暴発するわけではない。

 陣としての形を失い魔力そのものへと戻り霧散する、普通はそれだけだ。

 しかし、さっき流し込んだ魔力には火属性になるように質を変えてある。

 それによって一部の魔力の指向性が武器も含めた魔力すべてに伝播し、粉塵爆発かのように急速に燃え広がった。

 発生した大火が雪を溶かし水蒸気となって膨張し、猛烈な突風により最初の爆発で全身を焼かれた奴らを追い打ちした。


「グォオオオアアアアアアアァァァァァ……!!」


 獣の断末魔が響き渡り、光の粒子となって消えていく。


 ふぅ、なんとかなったな。

 俺が予想した弱点は大方合っていたんじゃないだろうか。

 とはいえ、いつもこれが通用するわけではない。

 五体くらいの魔物を一人で相手することはなんら問題ないが、それは前もって気が付いていることが前提の話だ。

 考える時間がなければ役に立つ立たない以前の問題だ。

 もし俺一人だったら魔物に気づくのに遅れていたし、逃げるか隠れていただろう。

 今回はイデアがいてくれたからよかったものの、これから一人で冒険していこうとするのなら、すべての困難を自分の力だけで解決していく必要があるということになる。


 前世でプレイしたオンラインゲームは数えられないくらいしてきたが、基本的にソロプレイだった。

 ぼっちでコミュ障だったからな、みなまで言わずともわかるだろう?

 そんな俺でも極稀にではあったがほかのソロプレイヤーとパーティを組んだり、レイドクエストに参加したこともある。

 それぞれの得意分野で役割分担し、助け合いながら戦える。

 達成感をわかちあえるというのも、まぁ悪くない。

 そういうときにいつも仲間がいることの重要性を感じる、この一件でも改めて考えさせられた。

 今回に関しては役割分担というか利用活用みたいなことをしていたわけだが、そこは労うことでカバーしよう。

 後ろのほうでぐったりしているイデアに若干の申し訳なさを、今さらながらに感じつつ駆け寄った。

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