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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
二章 修行編(仮)
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中級昇進試験 2

 街道を歩く俺、その後ろをついてくるイデア。

 会話は言わずもがな、ありはしない。

 とりあえず、あの場の空気から逃れるためだけに外へ出たはいいものの、どこへ行こうか悩んでいるうちにだいぶ遠いところまで来てしまった。


 どうしようか……。

 意を決して話しかけてみるか。


「……なぁ。」


 俺が立ち止まり振り返ってみると、イデアは俺に合わせて立ち止まりはしたが、どこか遠くを見るような目でぽーっと何かを考えているような状態だった。

 自分に声をかけられていることにも気づかないほどだ。


「……あ、私?」

「他に誰がいるんだよ。」

「そ、そうだよね。えーっと、何かな?」


 少し待ってみると、気を取り戻して何でもないように会話をする。

 うーん、気丈にふるまおうとしているのはわかるが、気にしすぎてむしろ固くなっているな。

 先日の件があったからか、どう接していいのかわからないのだろう。

 それは俺も同じことだ。


 だがそれはそれ、これはこれだ。

 俺の中級昇進がかかっているのだ、背に腹は代えられない。

 こんなところで足止めを食らってはいられない。

 たとえ気まずかろうと、自ら率先して話を進めていかなければならない。

 本来、試験官であるイデアが先導するのだとしても!


「試験のことだ、内容は試験官に一任されてるんだろ?俺は何をすればいい。」

「あー、そうだったね。どうしようかな……。」

「まさか何も決めてなかったのか?」

「うん。昨日、依頼の達成報告をし終わって帰ろうとしたときに、ギルドマスター直々に受けてみないかって誘われて、何をするのか細かくは教えてもらってなかったから。私もこんなことになるとは思ってもみなかったよ。」


 イデアの口ぶりからすると、彼女が試験を受けたときは同じやり方ではなかったと言う事か。

 そう言えばつい最近ギルマスの応対室に行った時、忙しそうにしてたな。

 この前の事件の後だったか、ということはまだ大規模掃討作戦とやらに手をまわしているんだろう。

 まぁ、二三日じゃ終わらないだろうし、仕方ないか。


「それじゃ、どうするつもりなんだ?」

「うーん……。」


 顎に手を当てて考えるイデア。

 いつに間にか初めてあった時と同じような振る舞いに戻っている、気にしなければ大丈夫なようだ。

 うんうんと唸っているのに合わせて、頭頂部の耳がピコピコ動いている。

 頭を働かせると連動して動くみたいだな、他の獣人もそうなのだろうか。

 でもナナリーはそんなことないよな、個人差があるのかもしれない。

 なんてくだらないことを考えていたら、イデアの耳がピコーンッとはね上がる。


「いい事思いついた!」

「お、おぉ。そりゃよかった。」


 案が思いついたのはいいことだが、勢いでこっちに迫ってくるのはどうしてだろうか。

 ち、近い、一歩後ずさってもなおそう思うほどの距離だ。

 普段のイデアの他人との距離感が気になるところだが、それよりもまずは直近のことを考えよう。

 もう一歩下がってから、冷静に尋ねる。


「改めて聞くが、これからどうするつもりだ?」


 するとイデアは手を差し出し、眩い笑顔でこう言った。


「私と、パーティを組もう!」

「………はい?」


 俺はその単純明快な言葉を聞いても、イデアがなにを意図して言っているのか瞬時に理解することはできなかった。


 ----------------------


 あれから三日後の朝、俺はいつもより早く起きていろいろと準備をしていた。

 今日は普段の持ち物に加えて弁当を含む数日分の食糧とそれを調理するための調理器具、そして村を出てきた時から愛用している寝袋を用意している。

 少し重い荷物を持って部屋を出る。

 宿の玄関口にいたここの女将のセリさんに挨拶と昨日頼んだことの確認をしておく。


「おはよう、女将。昨日言ってた件、よろしく頼む。」

「おはようございます、リュートさん。大丈夫です、任せちゃってください♪部屋の荷物はきちんと私が責任もって管理しますから、安心して行ってきてくださいね!」

「あぁ、行ってくる。」


 そう言って俺は宿を出ると、いつも向かうギルド方面と反対方向の、町の南にある関所へ向かった。


 なぜこんなにも大荷物で、しかもギルドへ向かわないのか。

 それは三日前、イデアが俺にパーティを組もうと言ったことが原因だ。

 いきなりの誘いで何が何だかわからなかったので、一から説明するよう頼んだ。


 イデア曰く、

「私とパーティを組めば、一緒に中級の依頼を受けられるでしょ?それを利用して、私が選んだ依頼をパーティとして受けて、リュートが中級の依頼を受けられるだけの実力があるか判断すればいいと思うの。勿論私も手伝うけど、事前情報とか必要なものの準備とかは自分でしてもらうよ。そうじゃないと、本当に実力があるかどうかわからないからね。これでどうかな?」

 だそうだ。


 よくあの短時間でそこまで考え付くものだと感心した、若いのに(実年齢は知らないが)中級冒険者をやっているだけあるな。

 俺はその案を了承し、一度ギルドへ戻っていろいろと手続きなどを行った。

 その際に、中級昇進試験を受けた人たちにまた会ってしまい、また負のオーラを纏った視線を向けられた。

 しかもイデアがパーティ申請をしているところを目撃され、射殺さんと言わんばかりの強い負のオーラとなった視線が浴びせかけられることになったのだが、まあそれは置いておこう。


 そして三日後の朝に町の南の関所を待ち合わせ場所にして、各自依頼の準備に取り掛かった。

 今回受けた依頼は『メル雪山に生息する魔物の確認及び討伐』である。

 俺はこの三日の間に図書館へ行き情報を集めたり、メルフィス洋服店へ外套を受け取りに行ったり、雪山の野営に必要なものを買いに行ったりと自分にできる限りの準備をした。

 後は余った時間に新しい魔法の研究などもしたし、しっかり睡眠もとった。

 万全の状態である、あとは気を引き締めて挑むのみだ。


 関所を出てすぐのところに、ピョコピョコと頭頂部の耳をせわしなく動かしているイデアを見つけた。


「おはよう。」

「あ、来たね。おはよう!それじゃあ早速行こう。目指すはメル雪山!」


 朝から元気だ、もうあの件のことも吹っ切ったようだしお互い問題はなさそうだ。

 イデアが歩みはじめ、俺もまたついていくように前へ踏み出した。

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