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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
第一章 転生編
22/60

いろんな意味で謎の獣耳美少女

 白い美少女、白の外套は前世のコートみたいなもので、黒のワイシャツっぽいものと茶色のショートパンツを着ている、白髪黄眼の女の子。

 ぴょっこと生えている獣耳と尻尾が彼女を獣人族だということを教えてくれる。

 ナナリーはパッと見た感じ猫っぽかったが、この人は犬?いや狼?狐か?

 見た目からじゃどれかは判別できなかった、混合種族かもしれない。

 体格は比較的スレンダーというか未発達というか、俺よりもかなり小柄で人族基準で15くらいだが、この世界での判断基準は全くあてにならない。

 前世ですら童顔や老け顔がいて正しい年齢を言い当てるのも難しいのに、こっちの世界では完全に無理ゲーだ。

 色々わからないことはあるが彼女について特筆すべき点が二つ。


 一つ目は、背中に下げた大剣。

 黒い刀身に白と金で模様が描かれていて、芸術的な価値も高そうだ。

 だが、驚くべき点はなんといってもそのありえないくらいの大きさだろう。

 斜め差しだからこそギリギリ背負えているが、普通の大剣に比べても明らかにでかすぎる、大柄な男が持っていてもただの脳筋野郎にしか見えない。

 小人族(ドワーフ)が大木槌を扱っているのと感覚は似ているのかもしれないが、彼女があの大剣をブンブン振り回すところはちょっと想像できない。

 まさにファンタジーってやつだ、ありえないことが平然と実在する世界ってスゲー。


 二つ目は、気づく人は気づいているかもしれないが、溢れ出る魔力。

 色は緑色なので属性は風ということになるが、そもそも溢れ出る魔力っていうのがおかしな話だ。

 師匠に魔法の手ほどきを初めて受けた日のこと、師匠は自分の魔力を魔指を使うことによって見せた。

 つまり普通に過ごしている間は、注視しない限り人から発する魔力を見ることはおろか感じることもできないはずなのだ。

 俺だって普通にしていても、俺の持つ特殊な白い魔力を誰にも見られることなく過ごせていることからわかる通り、誰にも察知されていないのだ。

 であるならば、彼女は何故あんなにも魔力を噴き出しているのだろうか。

 可能性としては、わざとそうすることで自分の魔力を鍛えているか、魔力の制御がうまくいってない又は制御を阻害する何か事情があるかの三つだ。

 なんにせよ、あのままでは自分のマナを勢いよく魔力に変換しかなり辛いはず。

 しかし彼女はつらそうな表情は見せず、逆に生き生きしているようにさえ見える。

 となるともともと持っている魔力保有量が多いのか、魂が生成するマナの量が多いのか、はたまたその両方か。

 真偽は詳しく見てみないとわからない。


 とまぁ、つらつらと第一印象やらなにやらを挙げてはみたものの、結局彼女が獣人族の女冒険者であるということ以外何もわからないってことだ。

 助けてもらったペア冒険者は彼女にお礼を言って去っていった、彼女も満足げな表情を見せ足早に去っていった、おっさんズは放置である。

 野次馬共もわらわらと解散していった、俺もギルドに向かっている途中だったな、急ごう。


 彼女のことはちょっと気にはなったが、同業だし機会があれば関わることになるだろうな程度に思い、頭の片隅の方へ追いやった。


 --------------------


 ギルドに着くなり依頼の達成を報告、流れるように昇格した。

 現在四等下級冒険者です、まだまだ上級冒険者への道のりは長い。

 昨日貰ったばかりのピンは返却し、新たに別のものを貰った。

 色は変わらないが形が少し違う、二回ほど緩やかに曲がっている。

 こういう細かいものは今のこの世界の技術力じゃ量産するのも制作するのも難しいはず、それなのにこの規則性のある美しい曲線を見せられると製法が気になる。

 機会があれば見させてもらいたいものだ。


 まだ昼というには早すぎるな。

 さくっと終わらせられそうな依頼をするか、次に上がるための依頼達成数のこともあるし。

 三等に上がるためには15個の依頼を達成し、5回階級依頼を達成する必要がある。

 そうそう、さっき聞いた話だが必要達成数を超えて階級依頼のノルマをクリアできてなかったときは、それ以降の達成数は次の階級を上げるために必要な分に回されるので損はないらしい、ありがたい。


 さっきのことも踏まえて、採取系の依頼は難なく達成できることがわかってるので、道中でケイス森林に群生している植物は、場所も含めてある程度記憶しておいたのでそれらの採取依頼を受注した。

 こういうところで前世のゲームで養われた知識と言うか習性が役に立ってるなぁ。

 始めたばかりのMMORPGゲームは情報が命みたいなところがあったから、とにかく覚えるスピードが遅いと大変なことになることが多い。

 そういう生活から身に着けた記憶力はいろいろなことに役立っている、と言っても記憶と知識は引き継げても体が覚えている技術の大半は失われてしまっている。

 だがこの世界に生まれてもう十七年を過ごした、全盛期と言っていいかはわからないが前世よりは劣っている技術だとしても、並行していくつものゲームをしているわけじゃないから問題はないだろう。


 思った通り何事もなく依頼は達成した、まとめて10個も受けてしまったが効率重視だ、まわりのことは気にしない。

 これも仕事だからな、先に取られて受ける依頼がなくなってもそれは遅かった方が悪いだろう、早い者勝ちと言うやつだ。

 依頼を出した人だってできるだけ早い解決を求めているはず、たとえ新入りの俺がやったとしてもお礼は言われても文句は言われないはずだ。


 --------------------


 今日の昼御飯はギルドに入って右手にあるご飯所のものを食べることにした。

 このご飯所、ナナリーに聞いた話によれば安くてそこそこおいしいが、日替わりで変わる一つのセットメニュー以外ないとのこと。

 ちょっと気になったので食べてみることにした、これがなかなかおいしい。

 そこそこと言うにはもったいない感じだ、ただまぁ味が濃すぎないでもない。

 パンにベーコンとレタスを挟んだものをいくつかと牛乳を渡された。

 はいそこ、昨日も同じもの食べてたとか言わない。


 こうやって座ってゆっくり食べるのもいいもんだなぁ。

 のんびりしていると今まで見ていなかったものに注意を向けるようになった。

 この町に住んでいる冒険者たちがギルドに続々と入ってきているのに気づいたのだ。

 ようやく活動時間になったらしいな、みんな依頼掲示板に群がっている。

 そこそこ荒れているらしく阿鼻叫喚が聞こえてくる、それを聞き流しながらもぐもぐする俺。

 いつもこんな感じならちょっとは学習して、朝早くに起きてくる人がいてもおかしくないと思うんだが。

 今日も俺以外にギルドにいた人と言えば、酔いつぶれて日を跨いでいる人か職員の人くらいで、俺みたいに朝から依頼を受けているのは一パーティ分くらいだ。


 ふと、視界に見たことのある白が動いているのが見えた。

 さっきの獣耳美少女だ。

 依頼の紙を手にしてなにやら受付の人と話しているみたいだ。

 よくよく見ればいい髪だなぁ、ルアに負けず劣らずのモフモフ感を持ちながらも、少しはねてたりはするが基本はストレートの長髪、その上前世では確実に地毛では見られないはずの綺麗な白髪。

 正直めっちゃ好きだわ、髪が綺麗なのはいいことだ。


 手は休めずに黙々とご飯を食べてはいるが、ボーッと彼女の髪に見とれていた。

 髪だけではなく、様子もある程度は見ていた。

 受付の人とかなり話し込んでいるみたいだ。

 ……あ、なんか指さされたぞ?何故俺?

 彼女がこちらを振り返った、やべっ、じっと見てたのばれたのか。

 何でもないようなそぶりでそっぽを向いてご飯を食べる俺だが、気配でこっちに近づいてくる人がいることがわかる。

 チラッと見たら案の定、件の獣耳美少女だ。


 間近で見るとやっぱり綺麗だな、髪だけじゃなくて顔をも童顔な可愛さがあり、立ち居振る舞いは無駄がなくどことなく気品が漂ってくる、実は貴族の出とかじゃなかろうか。

 でもさっき敬語は使ってなかったしなぁ、鍛錬によるものだろうか。

 そうだとしたらとてつもない手練れだ、魔力も受付で話しているときは見えなかったがこの距離だとうっすら漏れ出ているのがわかる。


「そこの君、聞きたいことがあるんだけどいい?」


 ……俺だよな、流れ的に。

 一応周りの確認、うん、そもそも俺しかいなかったよ。


「…別にいいけどさ、君は何者?」

「あ、自己紹介がまだだった!私はイデア。あなたは?」

「俺はリュート、よろしくな。」

「こちらこそ!」


 そういって握手をするとブンブン振り回された、元気なことはいいんだけどあんまりやり過ぎないでほしいな、主に俺の肩のために。


「そ、それで俺に話ってなんだ?」

「はっ、すっかり忘れてた。」


 ぱっと手を離される、よかったちぎれるかと思った。

 こんなにも細くて女の子らしい腕からどうしてあんな膂力が?彼女の謎は深まるばかりだ。


「えっと、今いる冒険者のみんなすごく慌ただしいでしょ?」

「そうだな、まぁ急がなきゃいい依頼は他のやつに持ってかれるだろうしそれが普通じゃないのか?」

「ううん、いつもはもっと落ち着いてるの。そういうってことはやっぱりあなたは新入りさんなんだね。」

「正式に冒険者になったのは昨日からだ、まさに冒険者の卵と言うにふさわしいだろうな。それで、なんであの人たちはあそこまで慌ててるんだ?」

「それは、今日がいつもより依頼の数が少ないからなんだよ。あのままだと依頼を受けられない人が出ちゃうんだ。何か心当たりないかな?」


 途中から薄々気づいていたが、どうやらこの騒ぎの原因は俺の様だ。

 いや、あんだけあったらたくさんやってもいいかと思うだろ。

 まして需要過多だなんて思うわけないじゃないか。

 というか聞き方、心当たりないかなってあるに決まってんじゃん、それわかってて言ってんじゃん。

 ……一回はぐらかしてみようかな。


「あー、まぁそういう日もあるんじゃないか?俺新入りだしそういうのわかんないけど。心当たりとかは特にはないかな?」

「ふーん、さっき受付の人が午前中だけで15個も依頼を受けて全部達成してきた人がいるってきいたんだけどなぁ。」


 くっ、こいつ可愛い顔して中身どす黒いぞ。

 自分で言わせにかかって来てやがる、さっき教えてもらってるんだったら回りくどいことしてないで素直に聞けよ!


「へ、へぇー。そんなすごいことする人もいるんだなぁ。俺もその人みたいに頑張らないとなぁ。」

「むー、まどろっこしいのは嫌い!はっきり聞くけどそれって君だよね?」

「諦めるの早っ!」


 どす黒いとか思ったのは訂正しよう、思いのほか純粋だこの子。


「なんで一回、自分から言うように誘導してきたんだ?」

「だって、過ちはその人が自分の口で認めないと反省しないって、昔読んだ本に書いてあったから。」

「なるほど……。そうだとしても、俺は自分がしたことが一切悪いとは思わないぞ?」


 さっき俺が考えてたことを彼女、イデアに説明した。


「た、確かにそういわれると、何も言えないけど……。」


 説得完了、まぁ正論だし当たり前か。


「そういうわけだ。どっちらにせよ、俺はすぐに中級に上がるつもりだし、そうなれば下級の依頼は受けなくなるからそれまでの辛抱だと思ってくれ。長く待たせるつもりはないからさ。」

「うーん、でも一度にまとめて依頼を受けると何か問題があったときに色々困るでしょ?もし達成できなかったとしたら、それまでの間受けられる依頼がない人が出てくるかもしれないし。」

「いやそれはない、俺は自分ができないことはしない主義だ。できるようになるまではじっと待つし、できることなら早めに済ませたい。だから俺が受けた依頼は必ず達成する。」

「どこからそんな自信が……、なんで言い切れるの?」

「根拠はないけど、経験からわかるというかなんというか…。」

「あやしい……。」


 そりゃ怪しいよな、明らかに何言ってんだこいつって感じだもんな、わかるぞその気持ち。

 俺でもそんなこと言われたら怪しむ。

 でも説明できないんだよ、本当に。

 感覚的になぜかうまくいくってわかるんだよ、前世の時からたまにそういうのがあったんだ。


「……あやしいけど、私はリュートのこと信じてみることにするよ。」


 ?やけにあっさり引き下がったな。

 最初は綺麗だけどめんどくさい奴だと思ったが、根は純粋でいいやつなのか。

 そうしてくれる分には俺もありがたいし。


「その信頼を裏切らないようにほどほどに努力するよ。」

「そこはほどほどじゃなくてもっと頑張ってほしいんだけど…。」

「休息は大事、生き物は働きづめは体にも心にもよくないから適度に休んで無理はしないほうがいい。まぁこれは俺の師匠の受け売りだけどね。」

「ふふ、いいことを言う人だね。それじゃあ私依頼があるから行くけど、こう見えても先輩なんだから困ったときは頼ってくれていいよ?」

「ないとは思うけど、その時はよろしく。」

「うん!じゃあまたね。」


 踵を返して歩く後ろ姿は、今まで見た後ろ姿の中でも一番綺麗で輝いて見えた。

 なにかと縁がありそうだなと、この時の俺はなんとなく察するのであった。

可愛いと綺麗を併せ持つあざとすぎない口調の先輩風吹かせ気味純粋白髪獣耳美少女は作者のドツボです。俺、いつかこの子を主人公にデレッデレにさせるんだ(ネタバレ)。

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