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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
第一章 転生編
2/60

いつかの日のために

 転生してまず初めに習慣づいたことは、寝ることだった。

 というか寝る以外に選択の余地なんてなかった。

 だってまだ生まれて間もないし、手先や足先、肘や膝の関節が動かしづらかった。

 じたばたして確認したから間違いない。

 しかもたった数十秒動くだけで疲れてぐっすり眠ってしまった。

 動いては寝る、動いては寝るを数回繰り返すとだいたい次の日になっている。

 半日程は睡眠時間に消えていることだろう。


 月に数回、現両親が外に連れ出してくれることがあり、それが唯一の娯楽だった。

 だが、前世との違いというものを確認できるいい機会だ。

 色々なものを見て覚えておけば、成長して自由に動けるようになった時役に立つだろう。

 例えば、家畜なんかはそれぞれ前世の動物たちと似ているところと違うところがある。

 牛?は翼が生えている、ただし小さくて飛べないようだが。

 豚?は足が八本ある、まるで蜘蛛みたいだ。

 鶏?は鶏冠が角になっていた、ちなみにこっちの鶏?は飛ぶ。


 そういった生活を続けること早1年、ようやく這って移動することができるようになった。

 こんなに活発な1歳児いないんじゃないかというくらい、これでもか!と動き回った。

 正直に言って半年過ぎた頃には周辺の地域は周り尽くして暇だったのだ。

 そんな俺を見た両親は最初はとても喜んでいたのだが、自由奔放に動き回る俺がどこかで怪我をするんじゃないかと必死に捕まえようとしてきた。

 だが、そんなに簡単に捕まってたまるか!!

 俺と両親の追いかけっこが始まったのがこの頃だ。

 毎日俺が捕まるか、疲れて眠ってしまうまでこの攻防は続いた。


 それからさらに1年すぎる頃には、既に両足で地面を駆けることが出来るくらいには成長した。

 そしてようやく、ちゃんとした言語が喋られるようになった。

 前は「あー」だの「うー」だのうめき声しかあげられなかったから、大きな進歩だ。

 流石に話せるようになってすぐに流暢に会話するわけにはいかないから、極力余計なことは言わないよう注意した。

 文字も勉強するようにした、とは言っても神のサービスとやらのおかげで、この世界で使われている公用語(ノクス語と言うらしい)はほとんど読めるのだが、これも誰にも学んでないのに読み書きができてしまうのは些か怪しいので、しているふりだとしても必要なことだった。


 さらにさらに1年後。


「おとーさん、ごほんよませてー」

「ああ、いいぞ。全くうちの息子は頭が良すぎるんじゃないか?」


 ある程度、文字を学ぶ(ふり)をしたところで、次のステップ、この世界の常識を知るために本を読み漁った。

 父親は読書家で博学だったが、生粋の親バカであることが功を奏して、疑われることなく勉学に励むことが出来たのはかなり大きい。

 ちなみに、今読んでいる本は『剣術指南書:初級』である。

 やはり冒険者になるには剣術の一つや二つ習う必要がある。

 かといって、3歳児の俺が出来る事といったら筋トレとかこういった本を読んで知識をつけるくらいだ。


「あら?また本を読んでいるのね。リュートは本当に頭のいい子ね。将来どう成長するのか。今から楽しみだわ。」

「そうだな。どんな道に進んでも父さん達はリュートのこと、応援しているからな。」

「うん、ありがとう!おとーさん!おかーさん!」


 この演技にも慣れたものだ。

 最初は気恥ずかしさで頭を掻きむしりたくなったが、今ではこの2人が嬉しそうな顔見せてくれるなら、続けてもいいかなと思うようになった。


「……ねぇ、あなた。今夜あたりどうかしら?」

「あぁ、そうだな。リュートが眠ってからゆっくりな。」


 ただ、できればそういう発言は他所でやって頂きたい。

 まだ幼いからと言っても実の息子の前だぞ?

 まぁ仲がいいことはいいんだが。


 それからそれからさらに2年が過ぎた。


「いってきまーす。」

「行ってらっしゃい。暗くなる前には帰ってくるのよ。」

「わかってるよ、母さん。」


 5歳になった俺は1人で外出する許可を得た。

 すぐさま、俺は外の世界に飛び出した。

 近くの森に入って走り回ったり、近所に住んでいる同い年くらいの友達と一緒に遊んだりした。

 中身は前世と合わせて既に20歳を超えてはいるが、無邪気に遊ぶのも楽しいものだ。

 多分、前世も含めて約10年もの間、外で思う存分体を動かすことをしなかった反動が出ているのだろう。

 だが、ただ遊んでいる訳では無い。

 両親に心配をかけることなく、体を鍛える方法がこれだったのだ。

 時間も潰せて、体も鍛えられる、一石二鳥だ。


 日が沈み始めると、自然とみんなが帰路につく。

 俺もそれに合わせて家へ帰った。


「ただいまー。」

「おかえりなさい。まだ晩御飯も出来てないし、体を拭いてきなさい。だいぶ汚れてるみたいだし。」

「うん、そうするよ。父さんも一緒に行こうよ、背中拭いてあげるよ。」

「おぉそうか。じゃあ行くか。」


 この世界には風呂という文化はないらしい、こうやって体を拭くくらいしかしない。

 久しぶりに入ってみたいと何度も思った。

 独り立ちしたら、風呂のある家を作ろう。


「ちゃんと綺麗にしてきたよ。晩御飯出来てる?」

「もう出来てるわよ。ミナを連れてきてくれる?」

「はーい。」


 ミナとは、俺の妹である。

 あの会話があった夜なのかどうかはわからないが、いつの間にやらお腹が大きくなっていた。

 子供が産まれるまでは十月十日というし、あの日の前後であることは間違いない。

 ミナは父親似で茶色の髪に青い目をしていた。

 両親のどちらとも違う瞳の色だが、この世界ではよくあることのようだ。

 俺は母似で、前世と同じ黒髪黒目だが両親とも黒目ではない。

 まぁ俺の場合は神のサービスが原因なのだが。


 そんなこんなで、日々を平穏に過ごしている。

 将来、俺はどんな事があっても冒険者になる道を諦めることはない。

 それが、俺がこの世界で1番やりたいことだからだ。

 だから、今のうちにに自分に出来ることはやっておこうと思う。

 新しい世界で生きていくため、俺は努力し続けるのだ!

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