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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
第一章 転生編
17/60

ギルマスは強面いい人だった

 宿で荷物を整理した後、時間もちょうどいいころだったので昼飯をついでに町を散策することにした。

 今日の俺の昼飯はサンドイッチもどきだ、もどきなのはパンの部分がハンバーガーのバンズを薄くしたみたいな見た目なのだ。

 初めはハンバーガーもどきだと思ったのだが、店主がサンドイッチとして売っていたのでサンドイッチもどきになった、パリパリに焼かれた肉とシャキシャキのレタスっぽい野菜が絶妙にマッチしていて美味しかった。

 このサンドイッチ、食パン一切れサイズで俺の知るサンドイッチより、二回りは大きいのに価格が3ブロだった。

 余裕はあると言っても、何があるかわからないからできるだけ節約していきたい俺としては、大きくて安くてうまいのはありがたい、帰りにも買っていこう。


 街を歩きながら貰った地図に文字やら印やらを書いていて気づいたことがある。

 例えば左前方にある肉屋と八百屋の間に細い路地があるのだが、地図にはそんな道はない。

 そこには全身を覆う貫頭衣を着た人がちらほら、きっとスラムが形成されている場所につながってるんじゃないだろうか。

 こういった路地がいくつかあった、でもこの町のことはまだ知らないことの方が多いとしても、いまのところ治安が悪いとは思えない。

 それにその人たちは俺のイメージしていたスラムに生きる人とは違う気がした。

 ギラギラギスギスしているわけではなく、絶望というよりはなんというか諦めに近い悲壮感が伝わってくる。

 向こうから積極的に絡んでくる様子もなさそうなので、できるだけ近づかないように気を付けておこう。


 一先ず、宿の周辺とギルドまでの道、ギルド周辺と歩きながらこれから利用しそうな施設や店を確認しておいた。

 とりあえずはこれで当分は困ることはない、次は情報収集だな。

 ナナリーに聞けばいいかな?この町での知り合いって言ったら、ナナリーかセリさんしかいないし。

 しっかり話を聞けるのはナナリーだけだろう、さっき町のことなら何でも聞いてって言ってたけど周辺地域のこととかも知ってることがあるなら聞いておきたい。

 早速、ギルドへ向かうことにした。


 --------------------


 気のせいかな、周りからの視線がすごい気がする。

 あ、もしやさっきのことで目を付けられたのか、というかそれ以外に心当たりがない。

 好奇の目線は人並みに嫌いだ、変なことで注目は浴びたくないのは誰もが思うだろう。

 居心地の悪さを感じつつ受付へ、今は四人の女性がてきぱきと冒険者の列を解消していっている、その中にナナリーの姿はない。

 うーん、俺も並んで読んでもらった方が早いかな?

 なんてことを考えていたら肩をたたかれた、振り向くとそこにいたのは俺より少し年上くらいの四人組の男女パーティだった。

 そのうちのリーダーっぽい男が話しかけてきた。


「キミ、ちょっといい?今日、冒険者になったばかりの新人だよね。」

「そうだけど、なに?あんたらも新入りから金巻き上げようとする質の人?」

「そんなことしないよ!…そんないいかたするってことは、今日の昼前に酔っ払いの集団に絡まれたのはキミってことでいいのかな?」

「まぁね。それがどうしたっていうんだ?もしかして、偉い人だったりしたのか、でもあんなだらしないぐずぐずのおっさんが?」


 いろいろ考えたがあいつらが偉いポジションに付けるとは到底思えない。

 一人で勝手に考え込んでいると、いつの間にか先頭の男は後ろのメンバーと何やら話をし始めていた。

 用は済んだってことでいいのかな?さっさと列に並ぼう。

 するとまた、俺が列に並ぼうとするのを邪魔する人が現れた。

 まぁこっちとしては好都合だったが。


「あ、やっときた!リュートさん!!」

「ん?お、ナナリー。ちょうどよかった、ちょっと話が聞きたくて」

「そんなことよりこっち!早く来てください!!」

「は?ちょ、いきなり引っ張んなって、おぉい!」


 横から耳と尻尾をぴょこぴょこさせながら現れたナナリーは、俺の服をがっちりつかんで俺を引きづって行く。

 流石、人族よりも身体能力が優れた獣人族というべきか、俺よりも小さい体格なはずなのに少し抗ったくらいじゃどうにもならない力だ、すごいな。

 俺も将来は野良パーティとか組むようになるかもしれないし、種族ごとの得意な分野とかも知っておいたら後々便利そうだ、これも後で聞こう。


 ズルズルと音を立てながら連れてこられたのは、ギルドの内部の職員のみが立ち入りを許されるところ、ってさっき通った扉に張り紙がされていた。

 やっぱりさっきの人たちも聞いてきたことでお偉いさんのところにでも連れてかれるのかな。

 どうしよう、そのせいで俺がこれから冒険者としての活動ができなくなったら、とても困ることになるんだが。

 でも、俺は何も間違ったことなんてしていない、もしかしたらあのおっさんたちは貴族の血筋だったとかで、金にものを言わせて俺を悪者につるし上げたりするのかも。

 もしそうなったら……、いやマイナスの考えはよそう。

 不安な気持ちになっている間に、目的の場所についたらしい。


 支部統括者応対室、てことはこのさきにいるのはギルマス!?すでにやばい空気が漂ってきてないか…。


「ナナリーです。件の少年をお連れしました。」

「入りたまえ。」


 ナナリーがノックして声をかけると部屋の中から、威圧感のあるかすれた低い声が言葉短かに返す。

 この感覚、なんか今までに似たようなことがあった気が…。

 あー、これはあれだ。

 前世で生徒指導の先生に呼ばれたときが、こんなんだったわ。

 で、そういう時に限って十中八九怒られる時なんだよね、帰りたくなってきた。


「失礼します。…なにしてるんですか、入りますよ?」

「…なぁ、ナナリー。俺今から何言われるんだ?」

「それは、今からこの中でじっくりと教えて差し上げますから。」


 そういうナナリーの顔はいい笑顔だった、逆に怖いのでやめていただきたい。

 だが、ここで引き返すわけにもいかず、結局しぶしぶはいることにした。


 そこにいたのは、さっきの声からイメージした強面で強そうな壮年の男の人が向かいの席に座っている、正直怖い。

 パッと見は人族みたいだが、実際はどうなのかわからない、モノクル越しの眼光がこちらに刺さる、マジ怖い。

 この人がギルドマスターか、雰囲気から確かにと思わせるだけの力を感じられる、やっぱり怖い。


「君が今日入った新入りか。まぁ楽にするといい、無理な敬語も不要だ、普段通りで構わない。」

「あ、あぁ、わかった。」

「私は冒険者ギルドセントリアス支部のギルドマスター、ガルートだ。」

「俺はリュート。」


 思ったほどキツく当たられていない、というか丁重に扱われている?

 いやまだわからない、油断はできないぞ。

 別に悪いことはしていないが緊張するな。

 くっ、今までにこんなに帰りたいと思ったことがあるだろうか。


「君には聞きたいことがあってここに呼んだ。単刀直入に聞こう、君は六人組のパーティをギルド内で囲まれたところを返り討ちにした、とそこにいるナナリー君から聞いた。それは事実か?」

「あぁ、間違いなく俺一人でやった。」

「ふむ…。」


 やっぱりそのことか、嘘をつくつもりはないがこういう雰囲気だと、一言一言に注意を払わなければいけないので疲れそうだ。


「彼らはまだ気絶したままでここの医務室に突っ込んである。皆一様に水月、つまりは鳩尾に打撲痕があった、その木剣でやったのか?」

「まぁそうだけど…。」

「見せてもらっても?」

「……いいけど。」


 木剣を渡した、じっくり回し見てすこし素振りをした後返された。

 ガルートさんとの体格差的に短剣みたい扱ってたけど、それ俺が作った当初は両手剣のつもりだったんだけどなぁ、いや今じゃ俺も片手で使ってるけどさ。


「ずいぶん使い込まれているな、いつからこれを?」

「三年前くらいだったかな、前使ってたのが折れたから新しく作り直したんだ。今度折れたら武器屋にでも行くつもりだけど、それがどうしたっていうんだ?」

「……順を追って説明しよう。まず、君が倒した六人組のパーティはそこそこ有名でな。ギルドの等級については聞いているか?」

「いやこれから聞こうと思ってきたところだ。」

「なら私から説明しよう。」


 ギルドマスターからわざわざ説明していただけるとは、ありがたいなぁ帰りたいです。


「まずギルドの等級には個人で得るものとパーティで得るものがある。一個人の総力につけられる等級をランク、そこに連携やパーティ構成をあわせた等級をクラスと言う。ランクやクラスの高さによって受けられるようになる依頼の難度が変わる。」

「まぁ、自分の実力に見合わない依頼を受けても達成できないからな。」


 ギルドマスターのガルートさんが重く頷く。


「ランクはギルド側から支給されるピンの色と形で変わる、下から白・灰・黒の順に下級・中級・上級と変わり、形に応じて一等から五等まで分かれる。クラスはスカーフの色で変わる、色はランクと同じだが等級は模様で決まる。他にもいくつか特別なものがあるんだがそれは後で聞いてくれ。」

「わかったけど、それと今回のことに何の関係が?」

「君が倒したあの男たちは一人一人のランクは高くないがクラスが四等中級とそこそこのパーティだ。」


 確かに、あの連携があればそこそこの魔物なら何とかなるかもしれない、まぁ結局はそこそこだが。

 俺は師匠に、悪魔に手ほどきを受けて一人前と認められたんだ、そこそこなんて言われる奴には負けられない。


「で、それと俺の木剣とどう関係してるんだ?」

「実力のあるパーティにはそれに見合う装備をしているものだ、あの男たちの装備は二等下級者相当の装備を着けていた、新人ではそう簡単に攻撃が入るとは思えない。が、君は今日冒険者になったばかりだというが、その今にも折れそうな剣で勝るというのは奇妙だという話さ。」

「そんなに不思議なことかな…。俺の師匠に教わった武術なら素手のほうが強いし、俺が木剣を使ったのは手加減も含めてだったから、本気でやればあのくらいの装備なら壊せると思うけど。」

「それはなおさら奇妙だな、まぁ私は面白いと思うがね。」


 フッ、と笑みを浮かべるロマンスグレー・ガルートさん。


「じゃあ今回の件は御咎めなしってことか?」

「そういうことだ。むしろ他の冒険者からは感謝されるんじゃないか。周りからの評判は悪かったし被害にあったものも少なくはない。」


 なるほど、ということはさっきの視線は別段悪い感情から来たものではないってことか、それがわかっただけでも気が晴れた。

 席を立ったギルマス、俺もそれに従って席を立つとギルマスはこちらに手を差し出した。


「何はともあれ、君も私たちの仲間だ。これからの君の活躍を楽しみにさせてもらうよ。」

「あぁ、目が飛び出るほどびっくりさせてやるよ。」

「ワハハ、期待しているよ。」


 軽く握手を交わして、支部統括者応対室を後にした。

 ギルマスいい人だったな。

 これから頑張っていこうという気になれた。

 話をしているうちにもう日が暮れ始めていたらしい。聞こうと思っていたことがいくつもあったのだが仕方がない、明日の朝なら人も少ないしナナリーと話ができるだろう。


 ギルド職員用の通路を通り、受付のカウンターから外に出るとさっきの男女の四人組が再度声をかけてきた、どうやら俺のことを待っていたらしい。


「あ、キミ!待っていたよ、何をしていたんだい?」

「ん?あぁ、さっきの。ギルマスに呼ばれてたんだよ、あんたが聞いてきたことについてな。」

「なるほどね。」

「それで何か用か?」

「実は僕らは六人組に被害を受けた者たちで作ったパーティなんだ。キミにはとても感謝しているんだ、僕らの仇を取ってくれてありがとう。ぜひお礼をさせてほしいんだが。」

「いやいいいよ。……あー、どうしてもって言うなら俺はまだまだ新人だからわからないことが多いんだ。もし何かあったら、その時に助けてくれればいいよ。」

「わかった、いつでも頼ってくれ。」


 今日は濃い一日だったな、いろんなことがあった気がする。

 明日からは俺も冒険者として生きていくわけだ、緊張するなぁ。

 俺ができることを俺なりに頑張っていきたい。

活動報告にて、設定その三を投稿しました。

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