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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
第一章 転生編
16/60

宿屋で学んだことが多すぎる

 あれから少し歩いたところに、ナナリーに地図に書いてもらった宿はあった。

 外見はよくある宿屋って感じだが町の南東方面の森の近くにあり、ギルドからそう遠くなく利便性は上々、おススメというだけあっていい立地だ。

 ただこんないいところにあるのに、本当に高くはないのだろうか。

 一抹の不満を抱きつつも、中に入ることにした。


 『旅の宿セリ』、宿というより旅館みたいな感じで、名前の旅の宿にぴったりな内装をしていた。

 限界口から正面に幅広の廊下と右手の脇道がある、宿泊棟と別館みたいな感じだろうか。

 そとから見る限りではそこまで大きくはないはずなので、あるなら食事処かお風呂か。

 おっと、この世界には風呂はないんだった、ということは食事処と考えるのが妥当か。

 もしかしたら泊まるのと食事は別料金で、泊まるだけなら格安ってことかな?

 安いのにはそれなりに理由があるってことか、納得。

 それなら金銭的には困らないかな、住さえ整えられれば料理は自分ですればいいし、その分他のことに回せる。

 いづれ武器とか防具とかそろえないといけないしな、流石に木剣ではこの先つらいだろう。

 防具はなくてもいいけど、今の俺の服はカーキ色の半そでシャツと狐色のズボンという、村人感満載の服だ、せめて外套くらいは買っておきたい。

 服とか装備はいろいろやりたいことがあるから、いろいろ買わないとな。


 でも今何を考えても捕らぬ狸の皮算用、まだ部屋だってとれていない。

 一度落ち着いてから考えることにしよう。


「すみませーん、誰かー。」


 ギルドの時も今も、カウンターには誰もいなかった。

 呼ばなきゃ出てこないって、郊外の町とはいえサービス精神足りてないんじゃないか?

 まぁ、おもてなしの国、日本の心を持った俺はそう考えてるが、この世界じゃこれが普通だったりするのかもしれない、敬語のことと言い慣れなきゃいけないことはたくさんだ。


 呼んでからしばらく待ったが人が出てくる気配もなく、もしかしたら誰もいないんじゃないかと思ってしまうほど静かだ。

 と、考えていたところでようやく気付いた、カウンターの上に呼び鈴あるじゃん。

 なんて馬鹿なんだ俺は、と思いながらも早速鳴らしてみる。


 ちりんちりーん


 鈴の音が館内に響く、確かにこの音なら静かな場所なら聞こえるだろう。


 数分待った、誰も来る気配はない。

 ……聞こえなかっただけかな?もう一回ならそう。


 ちりんちりーん


 また数分待った、やはり誰も来ない。

 誰もいない?まさかそんなことないな……。


 ちりんちりーん


 さらに数分待った、うん、これ誰もいないパターンだ。

 でも扉開いてたしなぁ、と振り返ったその時。


「ただいま帰りました~、ってお客さん!?なんで……、あぁ!!すみません、外出中の立て札出すの忘れていました!だいぶお待ちになられましたか?」

「え、あ、いやそんなに待ってないだす、ついさっき来たばかりだす。」

「そ、そうですか?ならいいのですが…。」


 いや、そこそこ待ったんだけどね。

 やっぱりとっさに出るよね、日本人の気遣いが。

 一瞬、敬語が出そうになったが、しどろもどろに答えたからなんとかなった、なったはず、なってると思いたい。

 ていうか、やっぱり誰もいなかったんだな、それに気づかない俺も俺か。

 次は気を付けよう。


「えっと、ん゛ん。いらっしゃいませぇ!旅の宿セリへようこそおいでくださいました、私この宿の女将をしております、セリと申します。」

「俺はリュートだ、初めまして。」


 美しく腰を折り挨拶をしてくれた女将さん、セリさんは紺色の長髪と紫がかった瞳、和装とも割烹着とも言えない服だったがなんとなく日本味漂う人だった。


「当宿は宿泊とお食事を分割してますが、どのようなご利用をなさいますか?」


 さっき俺が考えた通り、食事は別になっているみたいだ。


「宿泊のみで。ギルドで安くて長く泊まれる宿を教えてほしいって頼んだらここをおススメされたんだ。ここはどのくらい泊まっていられるんだ?」

「最長となりますと、一ヶ月です。前払いで一日5ブロズ、一か月分ですと割引されるので1シルバと4シルですねぇ。」


 この世界は貨幣はブロ、ブロズ、シル、シルバ、ゴル、ゴルドの六単位で10ブロで一ブロズ、10ブロズで1シルといったように、十倍ずつで単位上がりする。


 父さんから聞いた話では定住していない人が一ヶ月生活する間に消費する金額は少なくて3シルバ、多くて5シルバだったはず。

 なので、道中でできるだけ節約して今俺はだいたい1ゴル、つまり10シルバぐらい持っている。


 それを鑑みると、一月の生活費の最低額の四分の一も使わないここの宿代はかなり安い。

 旅の途中で町に寄ったときの一回の食事代が平均で1ブロズ、これを一日三食一ヶ月分だと9シル。

 替えの服はいくつか持っているから、今の時点で衣服に使う金額はゼロ。

 これらの条件で衣食住をすべて満たすと、2シルバと3シル。

 父さんの話の最低金額を下回った!

 消耗品などを買ったとしても大した金額にはならないはずだから、余裕を持って暮していけるはずだ。

 いい宿紹介してくれたなぁ、後でナナリーにお礼言っておこう。


「どうなされます?」

「じゃあ、一ヶ月分で。」

「わかりました。それでは種族名はなんですか?」

「種族?なんでそんなことを?」


 冒険者登録するときも種族名を記入させられたが、それは身分証明にもなるので聞いて当然だと思ったが、宿に泊まるのにわざわざ言う意味があるのだろうか。


「種族によっては泊まるお部屋によって不便が生じますから、種族にあったお部屋を提供させていただいております。」


 なるほど、そこまでは考えが至らなかった。

 本当にいい宿だ、ここは泊まる人のことをちゃんと考えている。

 そうか、確かに種族が違えば考え方も感じ方も違う、これからいろんな人と関わるかもしれないんだからこういうことは覚えておくべきだな。


「もしかして、宿に泊まるのは初めてですか?お若いですし。」

「実は、ついこの間田舎の村を出たばかりで旅も町も初めてで、なにも知らないんだ。もし間違ったことをしていたら教えてもらえるとありがたい。」

「はいはい♪承りました!それにしても、初めての旅しかも御一人で!寂しかったりしません?」

「大丈夫、俺は自分がやりたいことをするために村を出たから、逆にワクワクしてるくらいだよ。」

「いいですね、そういうの!!」


 女将さんは感情豊かに話しかけてくれるので、人見知り治りかけの俺でもとても話しやすく。

 こういう人が接客業に向いているんだな。


「ふふっ、本当に若いっていいですねぇ♪私も昔はもっとつやつやなお肌だったんですけどねぇ。」

「昔って、言うほど年を取ってないように見えるけど。」

「あら、嬉しい。私こう見えて58歳なんです、えっへん。」

「えぇ!嘘だろ、絶対!二十代後半にしか見えないぞ。」

「実は、私の両親は人族と蛇人(さーぺんたー)なんですけどなんと相性がぴったりだったおかげで、私はいろいろと便利な体質なんです!例えば……。」


 すぅっ、と女将さんが目を細めてこっちを見たと、俺の体の動きが極端に鈍くなった。

 なんだ!どういうことだ!?


「蛇人は極稀に魔眼をもって生まれる子がいるんですけど、私のは普通のよりも強力で相手の動きを止めれちゃうくらい、ってなんで動けてるんですか!!」

「いや、そんなの、俺が、わかるわけ、てか、早く解いて!」


 女将さんはなにか驚いてるみたいだが、根性でどうにかなるものだと伝えておいた。

 それにしても、蛇人に混合種族に魔眼か。

 たった一日の間に初めて見るものや聞くことがいっぱいだ。

 俺のゲームに関してのみ働く知識欲が荒ぶってる、この町に図書館とかあったら行こう、絶対に。


「さぁさ、お部屋にご案内しますよ♪リュートさんのお部屋はこの廊下の突き当りを右に曲がって、手前から三つ目の部屋です。なにかございましたらいつでもお呼びかけくださいね♪」

「ありがとう。」

「いえいえ、それではごゆっくり♪」


 部屋は広すぎず狭すぎず、置かれているのはベッドと机くらいなものだが、快適に過ごせそうだ。

 とりあえず、今日すべきことは全部終えた。

 まだ、昼前だしすこしゆっくりしたら町を散策しよう。

今回は独自設定てんこ盛りでした。


活動報告にて設定その1・2を投稿したので、そちらを見ていただけると少しはわかるかも?


もしわからないこととか、ここおかしいんじゃないかと思った方は、コメントをしていただけるとありがたいです。

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