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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
第一章 転生編
14/60

冒険者ギルド

 俺がコノ村を出て十日、近くの町に寄ったり商人の馬車に護衛も兼ねて同乗させてもらったりして、ようやく王都郊外の町『セントリアス』についた。

 名前だけ聞いたら、中枢都市っぽい名前だが都会か田舎かで言えば田舎だ、コノ村ほどではないが。

 コノ村は基本木造建築の、いわゆるログハウスのものが多かった。

 だが王都郊外であるここ、セントリアスは石造りの建造物が数多く建立している。

 今俺が歩いている通りでは店への呼び込みをする人たちがひしめき、ひときわ賑やかで発展の度合いが顕著に見られて面白かった。

 前世でも商店街がある町ではこんな感じなんだろうけど、生憎近くにデパートがあったため行ったことがないのでわからないが、イメージとしてはこんな感じなのだろう。


 それよりも、コノ村が第三次産業なんてもの存在していたのかわからないくらい辺境の地だったことがありありとわかった。

 別に閑散としていたわけではないのだが、各家の人たちが周りの人たちと協力し合って生きていたので、貨幣はあるにはあったが基本物々交換だった。

 まぁ父さんが学者で村の子供たちに勉強を教えていて、俺も一緒に習ったので一般常識や貨幣の使い方は大丈夫だ。

 物価が前世とどのくらい違うのかわからないがここで知って行けばいいと思う、何事も人生経験だ。


 それにしても、ここは今まで見たことないものが多いな。

 人通りも多いのはもちろんのこと、物流もしっかりしていて荷馬車とみられるものが何台も通っている。

 そのうちの一つにとんでもない馬車があった。

 その特徴は一目瞭然、とてつもなく大きいのだ、目測で通常の荷馬車の三倍くらいだ。

 馬?もでかい、荷台もでかい、御者台に乗ってる人もでかい、巨人族みたいなものだろうか。

 それにつながって、周りの人をよく見ると普通の人には無い特徴を持つ人が結構いることに気づいた。

 耳が側頭部からじゃなく頭頂部にあったり尻尾が生えている獣人族、いくつもの荷物を片手で担ぎ上げて運ぶ角の生えた鬼人族、全身が魔物みたいではあるが人型で意思疎通のできる魔人族、ほかにも様々な種族であふれかえっている。

 話には聞いていたが、コノ村とその周辺の村や町には今まで見かけなかったのでここでより一層ファンタジー色が強くなった。

 わくわくがとまらないぜ(小並感)。

 街の散策はこれからの楽しみに取っておくとして、まずは冒険者ギルドに向かわなければ。


 冒険者ギルド、正式名称は冒険者組合連合ギルド。

 名前の通り、初めは各町村で作られた冒険者組合、それが共同してできた冒険者組合連合、さらにそれに加えてサポート・支援・取り締まりができるよう国がまとめたものが今の形になった。

 主に個人・自治体・国からの依頼を受け仕事をこなす何でも屋的なもので、時には国家間の戦争に駆り出され、時にはいきなり襲来した凶悪な魔物に対しての防衛なんかもやらされるが、めったにないことらしい。


 冒険者になる上で懸念している事案がある、それは仕事があるかどうかだ。

 ざっと見た感じ、通り過ぎる人たちの中で冒険者のような人は度々見かけた。

 多くはないが少なくもない、これだけの人数がいるのなら依頼の数よりも冒険者の人数のほうが多そうだということ。

 ここの来るまでに多少のお金は持っているのだが、せいぜい一週間分くらいだろう。

 まぁ飢え死にする心配はゼロだから対して深く考えてはいないのだが、せっかく冒険者になってもなにもできないんじゃつまらない。


 --------------------


 ここでちょっと別の話をしよう。

 かなり昔の話になるのだが、中学三年の春から始めたあるゲームがあった。

 当時の俺はそのゲームしかやってないんじゃないかってくらいはまっていたと思う。

 個人作成のゲームだったから度々アップデートが入って飽きることなくやった。

 ただそのゲームは周りの評価が芳しくなく、結局俺が高校に入るときにはそれ以上改良・進展することがなくなってしまった。


 そのゲームはサンドボックスとロールプレイングを合わせたオンラインゲームで、グラフィックもゲーム性もかなり作りこまれていて配信当初は大人気だった。

 だがこのゲームが周りから悪く言われるようになったのは遅くはなかった。

 みんなが口をそろえてこう言った、現実的すぎて難しすぎると。


 普通のオンラインゲームでのステータスは多くて、HP(体力)・VIT(生命力)・MP(魔力)・STR(攻撃力)・INT(魔攻)・DEF(防御力)・MND(魔防)・AGI(素早さ)・DEX(器用さ)・CRI(会心)・LUK(運)、の計11個が妥当だろう。

 しかしこのゲームにはこれらの他に追加で十個ある。

 例えば、MEN(筋持久力)というものがあった。

 文字通り筋肉の持久力のステータスで、これが低いと重い物は持てないし、軽くても長い間持っていられなかったり、長時間の移動ができなかったりして、これを上げなければまともにゲームを進めることすらできない。

 他の九個も似たように上げておかなければ必ず後で行き詰るものばかり、正直言って時間のないものからすればただのクソゲーだ。

 さらにこのゲームはステ振り形式じゃなく、プレイヤーの行動から反映して上昇するタイプだった。

 ただでさえ行動することすらままならないのに長時間かけてじっくりとやりこまなければならなかった。


 しかし、この経験が生かされる時がようやく来たわけだ。

 このゲーム、みんなが言う通り現実的すぎる、つまり現実を忠実に再現していると言える。

 ロールプレイング要素では筋肉の効率的な鍛え方や人に可能な動きを、サンドボックス要素ではサバイバル術や味・栄養・調理速度の三拍子そろった料理をいくつも調べ、このゲームに合ったものを研究した。

 普段現実にかかわることは大したやる気も集中力も出なかった俺が、このゲームをやっている一年の間で無人島に放り出されても五年は生きながらえるくらいの知識を手に入れた。


 これに加えて、この世界に生まれて幸運だったのがプランさんと出会えたことだろう。

 プランさんは植物に関しては超一流だということは、コノ村みんなが知っている。

 だが実は、プランさんはもともと生物全般に詳しかったのだ。

 師匠との修業の合間、昼食の時は俺と師匠とプランさんの三人で食べていた。

 その時にいろいろと話しを聞かせてもらった、おかげでこの世界の一般的な生き物の知識はすべて頭の中に入っている。

 前世の知識と今世の知識、この二つを合わせれば野宿だろうがなんだろうが生きていくことは容易いというわけだ。


 --------------------


 道行く人に場所を訪ねながら、ついに冒険者ギルドまでたどり着いた。

 多分、今日だけで前世より多くの人と長い時間話したと思う、俺の人見知りもこの旅の途中で改善したみたいだ。

 『冒険者ギルド:セントリアス支部』と書かれた看板が入口の上にでかでかと飾ってあった、外観は石を土台にした木造で、組合所というよりもかなり大きな酒場って感じだ。

 でもこっちのほうが冒険者ギルドの支部って感じはするな。

 何はともあれ早速入ってみよう。


 内装は外観に違わず酒場っぽい、というか酒を飲んでるおっさんがちらほらいる。

 看板があったから間違いではないはずだ。

 一抹の不安を覚えながらも奥へ入っていく。

 入口の正面をまっすぐ行ったところにカウンターがあり、さらに奥に本棚が所狭しと置いてある、きっと資料などが置いてあるに違いない。

 ということはここが受付でいいはず、誰もいないけど。


「すみませーん。」


 声をかければだれか出てくるだろうと呼んでみたのだが、何かが動く気配すらない。

 呼び鈴みたいなものがあるのかと探してみたが、それらしきものは見当たらなかった。

 全員出払っているってことはないはずだ、ないと思いたい、ないといいなぁ。


「誰か、いませんかー。」


やはり返事はない、一度出直した方がいいだろうか、一応宿とか探しておきたいし。

 と考えていたその時、ヒョコッ、とかなり奥の方の本棚から獣人の耳らしきものが見えた。

 なぜ隠れているのだろう、いや隠れきれてないけど。

 ……教えてあげた方がいいかな。


「あの、そこの獣人の人、耳はみ出てるよ?」


 ビクッ、と耳が動いた、驚かせてしまっただろうか。

 少しして、しぶしぶというかおずおずというか、ゆっくりと獣人の人がでてきた。

 獣人は今まで見たことはないので正しいかはわからないが、普通の人間基準で年の頃は十代後半、亜麻色の短髪と耳、そして猫のような細長の尻尾の女の子だった。

 その女の子は恐る恐る話しかけてきた。


「えと、よ、ようこそ、冒険者ギルド、セントリアス支部へ。ご、ご依頼でしたら別の担当者がおりますので、戻るまでの間ギルド内でお待ちください。」

「あ、いや新しく冒険者になるから、その登録のためにきたんだ。」

「は、はい!わかりました、少々お待ちください。」


 ぎこちない動きで奥のほうへ戻っていった獣人少女。

 なんであんなに緊張してるんだろう、俺の顔怖いかな、そんなはずはないと思うが。

 しばらく待っていると、獣人少女が帰ってきた。


「この紙にお名前と年齢、種族名などの必要事項を書くのですが、できますか?世界の識字率は低いですから、できないのであれば代筆しますが。」

「大丈夫、自分でできるよ。」

「よかった、ではお願いします。」


 そう言って紙と炭筆を渡されたのですらすら書き進める、読むのも書くのも神様のサービスのおかげで問題ない、しっかり勉強もしたし。


「これでいいかな?」

「はい、承りました。……あの、最初隠れていてすみませんでした。実は先日受付の仕事を任されたばかりで、その、緊張してしまって……、本当にすみませんでした!」


 頭を下げる獣人少女、別にそんなに気にすることでもないと思うけど、初めてならなおさらだ。


「頭を上げて、初めは誰だって緊張するし、失敗だってする。それでもこれから頑張って行こうって思って、少しづつできるようになればいい。」

「はい!ありがとうございます!」


 最初とは打って変わって明るくなった、こっちが本来の彼女だろう。

 それにしてもほかの受付係はどこに行ったんだ?


「実は、今ちょうど大事な会議中で受け付けはみんなそっちに出てるんです。私は受付では新米ですからお留守番です。この時間帯だと人も少ないですから。」


 なるほど、そういうわけか。


「受付は新米ってことはもとは別部署だったのか。」

「はい、資料整理と在庫管理をしてました。」

「ふむふむ、資料整理ってことはいろいろ情報とかもってたりするのか?」

「もちろんです!この町のことなら何でも私に聞いてください!」


 これはありがたいな、ちょうど知りたいことがあったんだ。


「じゃあ、この町と町の周辺の地図とかってどこで買えるんだ?」

「地図なら、……はいどうぞ。」

「え、タダでいいのか?」

「地図くらいならギルドにたくさんありますから、それと町の東西南北の最端と中央広場にも町の地図ならありますよ。」

「そうなのか?見かけなかったな、後で確認しておくか。」


 思いのほか地図が早く手に入ってよかった、いちいち人に道を聞くのは煩わしかったからな。

 えっと、……俺の思ってたのと違うな、これ。


「この地図、地図記号ないんだけど。」

「ちずきごう?なんですかそれ。」


 マジか、地図記号がなかったらどこに何があるかわからないじゃないか!

 ……とりあえず必要最低限のことだけ聞いておこう。


「えっと、ギルドは地図で言うとどの辺?」

「ここです。」


 迷わず指さされた場所は、最南端と中央広場の間くらいのところだった。


「なるほど、ありがとう。」

「いえいえ、どういたしましてです。他に何か聞きたいことはありませんか?」

「そうだな……。じゃあ、この近くで安くて長く泊まれるいい宿とかある?」

「それならおススメがありますよ!『旅の宿セリ』っていうところなんですけど、地図にどこか書きましょうか?」

「お願いするよ。」


 よし、宿を探す手間が省けてよかった。

 一時はどうなることかと思ったが、これで安心だ。

 それもこの獣人少女のおかげだな。


「なにからなにまでありがとな、俺はリュート。また何か聞きに来るかもしれないから、その時はよろしくな。」

「はい!私はナナリーです、よろしくお願いします!」


 そういって獣人少女、ナナリーは笑顔で答えた。

ナナリーは初の同年代の女の子ですが、ヒロインではないです。いつでてくるんだメインヒロイン(作者が出していないだけ)

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