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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
第一章 転生編
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秘密は誰でも持っているもの

「…転生してきた、とな?」


 俺のいきなりな発言に驚くと思っていたんだが、かなり落ちつた様子で聞き返してくる。

 というかもう少し驚いてくれてもいいんじゃないだろうか。

 一大決心で言った発言が、聞こえてなかったくらいにむなしい。


「あぁ。前世では魔法とか魔物とかそういうのはなかったし、家畜だってあんな素っ頓狂な角とか翼はなかった。この世界に比べるとかなり平和だったよ。」

「ふむ……、魔法がないとはかなり不便ではないかの?皆が使えるわけではないが、あれほど便利な力はあるまい。」

「そうでもないんだ。代わりに科学っていう技術があってな、想像出来ないかもしれないけどこっちより発展してるんだぜ?」

「ほほぅ……。」


 手で顎を撫で、何か思案するような表情を見せる師匠。

 ……さっき思ったことは訂正しておこう。

 師匠は俺の話を真剣に聞いて、なおかつ信じてくれと言った俺との約束を守るために真剣に考えてくれているんだ。

 それに驚かれてあたふたされるよりこっちのほうが話が進みやすいしな。


「……とりあえず、お主が転生者であるということはわかった。じゃが、その話を聞くに新たに魔法を生み出せたこととは繋がらんじゃろ?」


 やっぱりもう一回訂正。

 この人、新しい魔法にしか興味ないわ。

 俺が転生してきたとかもはやどうでもいいって顔だこれ。

 ……説明するの嫌になってきたぞ。

 でもいまさらやめても言うまで聞いてきそうだしなぁ、はぁ。


「実は繋がってるんだよ。…俺の前世の世界ではパズルゲームというのがあってだな。」

「ぱずるげーむ?なんじゃそれは。」

「数字とか言葉とか図形とかを使う遊びなんだが、今から説明しようってなると時間がかかるからとりあえず今は、そういうものがあるって体で聞いてくれ。」


 俺は持っている木剣で地面に火属性魔法『ファイアボール』の魔法陣を描く。

 すごくありがちなな名前である。

 これは『魔法使いになるために:初心者用』に載っていた火属性魔法の一つ。

 名前の通り、火の球を正面へ放つ魔法だ。

 非常に安直な名前付けだと思う、だからと言って代案があるわけではないけど。


「師匠も知ってる魔法で説明するぞ。まずこの『ファイアボール』なんだが、こうして…。」


 『ファイアボール』の魔法陣、その内円と外円の間に二つの円を同じ幅を開けて描く。

 魔法陣の模様が綺麗に三分割される形になった。


「どうだ、なにかわからないか?」

「うぅむ、…見た目が綺麗になっただけでそれ以外はなににもわからんぞ。」

「まぁそうだろうな、普通これだけじゃわからん。でもこうすると…。」


 さらに魔法陣に円の中心から八等分するように線を縦にひく。


「これなら、もしかしたらわかるかも。」

「………ダメじゃ、わからん。もう考えるのも煩わしくなってきたわい、答えをきかせてくれんかのう。」

「しょうがないな。ここと、ここに注目してみてくれ。」


 八等分と三分割で細分され模様が切れている部分を二か所指さす。


「この二か所、よく見ると線で分けられた同じ大きさのマスの中で、同じ位置で模様が分断されているのがわかるか?」

「言われてみれば、確かに似た場所ではあるが……、たまたまじゃないのか?」

「その通り。こうやって……。」


 隣に同じ『ファイアボール』の魔法陣を、今度は地面ではなくちゃんと魔指を使って描く。

 描き終えても魔力は込めない、代わりに魔指を保持したまま魔法陣の、先ほど指摘した部分に触れるようにしながら五本の指を乗せる。

 そして、


「こうだ!」


 そのまま腕を回転させる。

 すると、指が触れていた部分の円周部分が腕の動きに合わせて回転し、何かがはまったような音が響いた。

 それはまるで、コップに入ったヒビが元に戻ったかのような、今まで不完全だったものが完全になったかのような音だった。

 俺はその音の意味を知り、ようやく魔法陣の仕組みを完全に把握した。

 変化した魔法陣を見た師匠は今までに見たことのない驚いた表情を見せた。

 俺は構わず魔力を込め、そして発動する。


 ゴオゥッ


 噴き出した炎は『ファイアボール』の魔法陣を改変したものには思えないほどの熱量と大きさだった。

 本来はもう少し大きいが、通常サイズをマッチくらいだと想定すると、これは松明くらいにはなる。

 およそ十倍ほどの大きさだろうか。

 威力の差は言うまでもない、この火力ならその辺にいるゴブリンなんて一瞬で消し炭にできそうだ。


 俺も初めて見たからかなり驚いたが、それ以上にどうも師匠の様子がおかしい。


「な、なんということだ、これはワシらの……!?」

「なんだ、何か言ったか?」

「あ、いや、うぅむ………。」


 独り言だろうか、唸るようにして考え込んでしまった。


「…説明つづけるぞ?今ある魔法陣は全部遺跡や神殿で見つかったものだって師匠が言ってただろ?その時点で少し怪しいなって思ってたんだよ。そのまま使える魔法陣だったから疑問に思わなかったんだろうけど、魔法って普通は魔物に対して使われるもので『ファイアボール』にしてもほかの攻撃魔法にしても、威力が低すぎるんじゃないか?今ほどいい武器が作れるわけじゃない古代の人がちょっと火の玉を出すくらいの魔法を大仰に遺跡の壁とか神殿の奥深くに残すと思うか?だから俺は何か仕掛けがあると思ったんだ。」


 俺は持ってきた白本(ノート)を再度開いた。

 そこに書かれた魔法陣の仕組みと予想されるもの。


 一つ、魔法陣の模様はなんらかの規則性があり、その模様一つ一つが魔法を構成する要素として分けられている。

 二つ、魔法陣によって発動する魔法は、魔力を込めたものの思い・考えを汲み様々な場面での適切な変化ができる。

 三つ、詠唱は魔法陣を構成する要素の一つであり、また魔指を使わず魔法陣を呼び出すようなものである。


 一つ目の仕組みはさっきの魔法で事実だと確定した。

 前もって白本にはさっきやったような魔法陣を改変する前とした後を書き記してあり、そこから同じ属性や同じ指向性を持った魔法を見比べ、同じ模様が入っている別の属性魔法などを確認してある。

 そこからある程度の模様の持つ要素を自分なりにまとめた。

 例を挙げると、『ファイアボール』は「詠唱」「攻撃」「火」「変化」「放出」の五つの要素から成り立っていると考えている。

 この要素の組み合わせで、昔の人たちは魔法陣を組み立てていったんだと思う。

 そして、遺跡や神殿で残された魔法陣に手が加えられていたのは、おそらく他民族から知識を奪われないようにするためだと思う。

 魔物とだけ戦っていたわけじゃなく、別部族と領土争いなどもしていたと考えたからだ。

 魔法を多く扱えるということはアドバンテージが大きくなるといううこと、知られれば対策を立てられ攻め落とされてしまう。

 そうならないように、魔法陣を同じ部族でしかわからないようにしたんだろう。

 結局は他の部族のも同じように改変していて、読まれてしまっただろうから意味はないと思うが。


 二つ目、三つ目は初めて使った俺のオリジナルの魔法から証明された。

 あの魔法陣に組み込まれた要素はたった一つ、「変化」だけだ。

 ただ魔力を込めるとき、円形になるように考えながら込めた。

 結果は、俺が考えた通りの円、魔指で描いた魔法陣の外円が浮かび上がった。

 ちなみにその時、その円に触れることがわかったので魔法陣を描いたままの時点でも、魔指さえ使っていれば魔法陣を持って移動することも可能だろうとわかった。

 そして、俺が作った魔法陣には内円と五芒星がなく、師匠は失敗するぞと言っていたが結果魔法は発動した。

 このことから、全ての魔法陣に共通して存在する内円と五芒星も模様の一つじゃないかと考えた。

 全てに共通する要素、「詠唱」しかないだろうと。


 これらのことから、俺は既存の要素で俺の知っているものから新しい魔法を作り出すことは可能になったというわけだ。

 正直に言ってかなりチートかもしれないと、わかったときに思ったがそう簡単にいかないみたいで、仕組みはわかったがまだ理屈や構成がわからない。

 そのあたりは、これから手探りでやっていくしかないだろう。


 白本に今日の成果やわかったことを手短にわかりやすくまとめる。

 その間なにやら師匠がぶつぶつと独り言を言っては頭を抱えている。

 まぁ何で悩んでいるかはだいたい想像つくが。


「師匠、今日話したこと俺は公表するつもりはないからな。」

「ほへ?な、なぜじゃ、これからのお主の人生を考えるなら、知名度の面で役に立つじゃろうて。」

「いや、俺転生してきた身で、この世界のこととか魔法のこととかを客観的というか、思い込みがない状態でみれたからこそ気づけたわけであって。もとはよそ者の俺が、というか俺じゃなくてもいきなり魔法の仕組みはこうですよー、とかいって魔法技術を急速に発展させたりしたら便利にはなるかもしれないけど、混乱とか迷惑する人が必ず出てくると思うんだ。今の研究者か次の世代の人たちかはわからないけどゆっくり少しづつ進めていくものだと思う。だから、俺は公表しないし師匠にも言わないでいてほしい。」


 無茶なお願いだとはわかっている。

 今日話したことだけで、世界がガラッと変わってしまうようなことだ。

 それでも俺がどう考えているかは伝えておきたかった。


「そうか………、お主の考えはわかった。確かにそうじゃろう、世界には秘密のままにしておいたほうがいいことはたくさんあるじゃろう。」

「わかってくれて助かるよ、ありがとう。」


 師匠は俺の言葉を聞いて、俺の気持ちを理解して、俺の頼みを聞いてくれた。

 嬉しいのと同時にこの人を信頼してよかったと、心の底から思う。


「ふぉっふぉっふぉ、爺は口が堅いでのう。……じゃがまぁ、お主だけ秘密を話して終わりというのも割に合わんじゃろう、ワシも話すとするかのう。」

「お、なになに、どんなこと教えてくれるの。」


 そういえば、師匠のことってあんまり知らないんだよな。

 すごくいい人で武術も魔法もすごいってことくらい、あ、あと何やかんや言ってもプランさん第一なひとだってくらいかな。

 どんな話が聞けるんだろう、わくわく。


「実はワシ、今まで黙っとったんじゃがニンゲンじゃなくて悪魔なんじゃよ。」

「……………はい?」

「婆さんがワシを召喚(よびだ)してのう、五十年くらい前じゃったかのう。」

「……え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 秘密は誰にでもある、信頼して相手に話したり相談したりもする。

 俺の話もたいがい大きすぎる話だけど、師匠の秘密のほうがインパクトが強すぎて今の俺はそれどころじゃなかった。

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