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CHANGE THE WORLD!  作者: 保田八助
世『怪』編
4/5

第一綴 凍エ姫 其の参

久々の投稿になります!




「恐らく、彼女の魅力はそのミステリアスさにあると思うんだよ。」

元勝はペーパーフラワーを作りながら僕にそう熱心に話し掛けてくる。

僕と元勝は「暇なら一ヶ月後の文化祭の準備の手伝いをしてほしい」とクラス長の筑萌に言われ、話すくらいならどうせ作業しながらでもできるだろうということで、現在飾り付けのペーパーフラワー製作を行っている。てゆーか元勝は副クラス長である。こいつ文化祭の準備あるのに帰ろうとしてたのか…

「美しいけれど近寄り難い、まるで薔薇の花みたいな感じ、そこがかなりいいよな…1組の「プリティ・シュガー」佐藤さんとも、8組の「フォーエバー・ビューティ」十和さんとも違う、オンリーワンなイメージがあるんだよ。他の人とは決定的に何かが違うんだよなぁ…お前もそう思うだろ?」

「知らないよ…俺に共感を得ようとするなって…お前、さっきからずっと喋ってるけど作業は進んでるのか?」

「あたぼうよ、かれこれ25個程作りましたよ~」

「ええっ…俺まだ15個だぞ!?クソッ、喋ってる奴に負けた…」

しかもこんな元勝に…(我ながらひどい言い様だ)

「ふはは、俺はながら作業が得意なのだァーーっ!」元勝がそう得意げに言う。

「でもこれで二人合わせて約40個…1クラスの飾り付けには充分な量だな。」

「そうだな。よし、百夜さーん?」

元勝が大声でそう呼ぶと、ベランダでほかの飾り付けの製作を行っている筑萌が「はーい」と言って教室に戻ってきた。

「名前が呼ばれた気がしたけど、どうかしたの?」

「いや、飾り付けのペーパーフラワーって何個くらい作るのかなぁって思って…今40個なんだけど、後どのくらい?」

「もう40個作ったんだ!じゃああと160個だね!」

「…は?」

「今回は2クラス使えるから多めにしようかなって思ってね、200個作って至る所に花を散りばめようかなって!」

本当にズッコケそうになった。

2クラスぶち抜き…?

ってかなんで元勝は殆ど把握してないんだよ!

「おい、元勝。お前200個も必要じゃねえか!それに2クラスぶち抜きだなんて聞いてな…」

ふと横を見る。


元勝は、鞄ごと居なくなっていた。

あいつ逃げやがった!あの野郎一人だけ抜け駆けしやがって…うらやま、いや、許せない!

「筑萌悪い、俺ちょっとあいつ追ってくるから、ここで待っててくれ。」

「あ、うん、分かった。でも霊くん…鞄は背負って行く必要ないよね?」


…バレていた。

「ははは、そそそそれもそうだな!よしじゃあ鞄は置いて、さぁあいつを捕まえるぞー!」

僕はまるでその場をはぐらかすかのように、鞄を置いてから教室から全力で走って出て行った。

その後玄関で靴を履こうとしていた元勝を取り抑え、教室に無理矢理送還。結局その後二時間ほどかけ85個まで作成したところで7時半、僕の「門限」の時間が近くなったので、その日は解散となった。

「じゃあまた明日ね~!明日で全部終わらせる予定で進めようね~!」

マジか…筑萌は計画性があるんだか無いんだか分からない。まぁとにかくやると言った時は本当にやる奴だ。明日に向けて、今日は早く寝ようと思った。


「あ、そういえば」

元勝が思い出したようにそう言う。

「ん、どうしたんだ?急に」

「いやぁな、ちょっと湯木芽さんのことで話したいことが…」

「まだあるの!?どんだけ嬉しいんだ?」

「いや、そうじゃなくて」

隣の席になった事にここまで喜べるってのも凄い事だなと思ったが、元勝の様子はどうやらそんな感じでは無かった。

「ん…?じゃあどうしたんだ?」

「ん、ちょっと気になることがあったんだよね。なんかこう、どっか突っかかるようなってか、違和感を感じることが…」

元勝は先程とはうってかわって、真剣な様子だった。

「違和感…?どういう意味だそれ?」

「なんてゆーかさ…」

元勝は少し悩んだ後、

「氷、かな。」そう短く言った。

「氷?」

「ああ、氷。なんて言うか、彼女喋らないし、表情も殆ど変わらないしさ。実際に寒がりなのかもな、授業中も手袋して、椅子に座布団敷いてたし。そういえば、湯木芽さんが消しゴムを落とした時、拾ってあげても『机の上に置いててちょうだい』だけだったな…話し掛けても無視か「そう」の二つ返事だったし、高飛車っていう奴なのかな?いや、俺が嫌われてるっていう可能性もあるか。」

元勝はそうやって多少冗談を交えながら話した後、

「まぁそういうのは関係なく、とにかく冷たいんだよな…態度がじゃなく、彼女の存在自体が。」

真面目な顔に戻ってそう言った。

存在が、冷たい。

「綺麗なんだけどな…『綺麗なバラには刺がある』っていうかさ、見てるくらいが丁度いいのかも。近付いたら怪我をするっていうかさ。」

「…そっか、そんな事があったんだな。まぁきっとまだ緊張してるんじゃないのか?この時期に転校して来て馴染みづらいだろうし。」

「まぁそれもそうだな。…って、霊。そういえばお前時間大丈夫なのか?」

「ん、あぁ忘れてた、じゃあ俺はこの辺で。」

「おうよ。あ、そういえば俺今ちょっと体調悪いから明日もし俺が来なかったら一人でペーパーフラワー製作お願いなー!」

「嫌だよ!休んだら許さねえからな!」

そんな冗談を交わして元勝と別れた後、帰り道で僕はさっきの元勝の言葉を思い出し、少し立ち止まり考えていた。


冷たいんだよな。彼女の存在自体が────


「存在が冷たい、か…」

彼女の何が元勝に何故そう思わせたのだろう。

やっぱまだ転校したてで馴染めないっていうのが大きいのかな…しかし、転校してすぐにここまで高慢な事を言うのも多少無理がある気がする。それにそれはあくまでも態度が冷たいであり、存在が冷たいと言うにはそれはそうたらしめる理由には足りな過ぎる。

じゃあ一体何故、元勝はそう感じたんだろう?

「…やっぱ分かんねえや。」

僕はそう呟き、考えるのをやめ、歩く速さを少し上げ、再び家に向かう足を進めた。



湯木芽 冷華という転校生の事が一段落着いた今になってみて僕は、簡単な推測で湯木芽 冷華という少女の事を解ろうとしていたこの時の自分の事を、軽薄だと、とてつもない馬鹿者だと叱責してやりたい。彼女という人間が、彼女が抱えている物の重さがどれほどの物かも知らずに理解出来ると思い上がっていた、そんな自分を罵倒してやりたい。最も人が過去に戻るなんてことも、過去を取り消すなんてことも、


不可能以外の何者でもないのだが。





読んでくれてありがとうございます!

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