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sickズ ~余命幾ばくもない戦士たち~  作者: 念平夢
Chapter3 狂犬(ガング)
7/8

Act06 突然襲撃!!俺はスライムなんかじゃあねえ!!

 球印圭は、人生で褒められたことがあまりない。不幸せ、てことではないが、"褒められてない"ことは唯一のコンプレックスであった。

 だが、褒められた。小学生程の少女に、いや、正確にいえば"シックGO"というアプリにである。しかし、少しも嬉しくない。何故ならそれは、肥満者が「スタイルいいね」と言われても嬉しくないのと同じ、いや、それの方がまだましに聞こえる言葉だったからだ。

 病力(シッパ)持ちにはポイントというものが付くが、球印のポイントの数がとんでもなかった。シックピルを飲み、病力持ちになったばかりの者は、大体10~50ポイント位である。

 ところが、球印のポイントは、何と1800であった。病気を治すのに必要なポイント数は100~500位、つまり、彼を殺せば一発で治るということである。

 白尻もこれには「はぐれメタル」と揶揄(やゆ)し、

「凄いやん!こんな付くことありえへん!カッコええ!」

と褒め言葉のように言っていたが、よくよく考えてみると、ちっとも嬉しくない、はっきり言って、"死"の宣告と同じじゃあないかと。

 ポイントが多いからと言って、病力が強いって訳でもない、ぶっちゃけただの"懸賞金"じゃあないかとも、球印は思った。


 三日前の色々な出来事のお陰で、今いる自宅でも落ち着かない球印。テレビをつけてみると「医師が白骨化!薬品事故による焼死か?」というニュースに心臓を撃たれたような衝撃が走ったが事故と片づけられてラッキー!どうやら病力で人殺しても大丈夫だとは本当のようで安心した。

 しかし、あのポイントのことがやはり気になる。狙われている気がする、指名手配されている気がして、恐怖を拭えない。

 恐怖だけではない、股間が頻繁に痛くなる、そう、癌なのだ。心も体も苦しい、最悪である。

 お陰様で、用を足すことすらうまく出来ない、便器の中に上手く尿を入れることが出来ない、震えて狙いが定まらない上、尿が真っ直ぐ飛ばず横にそれてしまうのだ。便器の周りを汚し、掃除しなければならずストレスも溜まっていた。男はこういう苦労をたまにするのだ。


「ワンッ!!」

球印は驚いた、玄関から突然犬の鳴き声を聞いた、鼓膜が破れんばかりの大音量で。明らかに玄関に向かって吠えているというのが分かる。

 一体何の用だ?呼び鈴鳴らせよ!と思ったが、瞬間、嫌な予感が頭を過ぎった。ひょっとしたら、襲ってきたのか?病力持ちが?と。

 ひょっとしたら、病力持ち居場所を察知する機械やアプリでもあるのか?様々な予感が暗くなってしまっている球印を襲う。

 しかし、好都合だと言える。なぜなら、こちらも戦わなければならない、病力持ちを倒しポイントを得て、病気を治さなければならないからだ。幸い両親は仕事に出ており、今は自分一人しか家にいない、巻き込まずに済む、存分に戦える。


 玄関のドアが勢いよく開く、いや、壊されたのだ!ドアは前にけたたましい音を立て倒れた。鉄で出来ていたにもかかわらず、砲丸でぶつけられたようにへこんでいた。

 拍子で沸き上がった煙が引くと、左手に何かをぶら下げたパンチパーマの男が立っていた。


「ヘッ!試合開始ってヤツかい…?」

この球印の独り言は、戦う覚悟が出来ている表れである。昔の彼は喧嘩する事すら怯えていたが、三日前の白尻との出会い、須賀路という病力持ちとの殺し合い、そして癌発覚のショックで、そんな些細な恐怖はかき消え、死と隣合わせの状態でも冷静でいられるようになった。

 つまり、人格が変化、というより、進化したと言えよう。


 パンチパーマの男は、スマートフォンのカメラを球印に向けていた。そして、ビンゴが揃ったかのように喜んだ。

「ほほー、こいつがポイント男かァ…」

そう言われ、奴のニヤケ顔といい、球印はカチンときた。

「何なんだァーてめーはよー、ケンカ売ってんのかてめー!」

ありふれたヤンキーのような態度に出る球印。

「売ってるゥ?そりゃあね、それだけのモン持ってりゃあセールスマンが来るってもんよォ」

「ウチはそんな、金なんてェ持ってねーぜ」

「しらばっくれんなァ、ポイントだよポ・イ・ン・ト」

「ヤ、ヤロォォォゥ…」

やはりパンチパーマは、球印のポイントを狙っていた。

 パンチパーマは、持ってる(カバン)を、いや、よく見るとあれは(カゴ)だ。それを二、三回叩いた。更によく見ると、小型犬らしきものがいるではないか。

 ヤバイ!球印に嫌な予感が走った。犬をよく見てみると、小刻みに震えている。病気なのか?あの犬は…ま、まさか…


 犬と目が合った瞬間!球印はすかさず左横に跳んだ。

「ガウ!!」

犬は吠えた!と同時に、轟音とともに奥のドアが割れ、台風にでも合うかのように外れて更に奥に飛んでいった!

 球印は戦慄した。あの犬の口から何かが発射された、間違いなく犬は病力持ちだ!直感で避けていなければ御陀仏だった!と。

「あ~惜しい惜しい、もー少しで当たるところだったのになァァ…」

パンチパーマは笑っていた、あまり残念がっていない、おちょくってるように見えた。家を壊された上、これでは球印の怒りは沸騰せざる負えない。

「てっめめめめーェェ!」

球印は”てめえ”と言ったのだが、怒りの余り妙な伸ばし方になってしまった。


「さあ!今度はかわせるかなあ?」

パンチパーマは笑いながら更に小馬鹿にする、今度は犬籠を揺すった、どうやら合図を送っているらしい、攻撃しろと。

 このままでは…避けたとしてもまた家を壊される、親にどやされるし、それ以前にこんな奴の好きにさせたくない!と球印は思った。

 合図…?そうか?こちらも攻撃しろと合図を送ればいい、股間に。球印は、チン〇をいじり回した。

 激痛が!来た!攻撃出来る!痛みにもかかわらず、球印は笑みを浮かべた、マゾみたいだ。

「かわす?笑わせるなよ!はぐれメタルじゃああるめーしいつまでも逃げてると思うなよ!」

そう言うと球印は素早くズボンを下ろした。


「バーカ!おめーのションベン如きでェェィ、俺の愛犬の”波動犬”が消せるかよォォォゥ!!」

パンチパーマは必殺技のネーミングセンスが無かった!

「ションベン?そうかな?チン〇から出てくるのは黄色だけじゃあないぜ、白いのも出てくるしィ、そしてェェァ!」

球印は犬籠に標準を合わせる!そしてネーミングセンスもおかしい!アンダーフラッシャーではなかったのか、パンチパーマのセンスが移ってしまったようだ。

「カメハ〇波かもしれないんだぜェェェィィン!!」

犬が吠えた!同時に球印のチ〇コも光る!

 破壊光線は、同時に放たれた!


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