Act05 戦闘決着!透明野郎はパスタがお好き!?
「ぺっぺっぺっぺっぺっぺっぺっぺっぺ……」
須賀路の断末魔が連呼され続ける。少女から発せられた白き”血”の弾丸を喰らい続けて。
球印は唖然としている、それは素人がこのような光景を見たら言葉を失うだろう。東北訛の断末魔で笑う余裕もなかった。
「ぺっぺェェェェェ…」
叫びながら須賀路は2メートル程すっ飛んだ。
弾丸を撃ち終わり、息を切らしながら舌打ちをする白尻。球印はその微かな音を聞き逃さなかった。まさか…
立ち上がった!須賀路冬眠から覚めた熊のように…球印の嫌な予感が的中したのだ。奴は生きていた!服はボロボロになっているものの、まだ殺せる状態だった。
これなら俺の方が威力は上じゃん、と思った球印だったが、次の白尻の言葉に、考えを改めさせられることになる。
「あかんわ…威力が全然…足りへん…3連戦は…やっぱ…きつすぎ…」
白尻が膝をつく、万全の状態であればどんだけの威力なんだと球印は考えた。が!そんな暇はないようだ。
「ぺー!!許せねー!!見せつけてやるっぺっぺっぺーーッ!!」
須賀路は叫んだ!完全に頭にきている、これだけやられればガンジーでもキレるだろう。
「ぺぺぺぺぺぺぺぺ…」
須賀路が力みながら、何かを唱えている。それを見た白尻は、
「や、やべえ!気合いを入れてるっぺ!」
危機を感じた、東北訛が移っていた。
「何だっぺ」
「奴の病力の攻撃が来るっぺ!」
聞く球印にも方言が移っていた。これだけ訛を聞いていると移るのも無理はない。白尻にどんな攻撃だと聞く間もなく、
「ぺぺェーーーッッ!!」
須賀路は攻撃を発動した!心なしか発行したように感じた。
球印の目の前が真っ暗になった!突然である、何も見えなくなったのだ!停電になったわけでもない、それならば少しは見えるはず、これは本当に、一切、何も見えないのだ!
「こ!恐えええええええ!!」
当然、球印はパニックに陥る。そして白尻はとんでもない光景を目撃する!周りが、目の前のチャラ男が、そして自分の体まで、透明になっていくではないか!
「暗え!ど、どーなってんだァ!!見えなくなっちまった!見えねえ!何も見えねェーー!!」
狂乱する球印、何故彼の目が見えなくなったのか、何でや?白尻は考えた。
答えが出た!そして球印に助言した。
「目玉まで透明になっているからや!だから見えへんのや、人間目ン玉に光集めて物を見る、それが透明になっちまったら…」
「俺透明になってんのかよ!奴の病力か?」
「yes!広範囲にパワー広げやがったんや!」
即理解した球印に、白尻は少し安心した。
「ぺっへへへ…」
勝ち誇り笑う須賀路、二人は憤る、もう"ぺ"を聞いくのはうんざりだ、韓流俳優かと…しかしここで白尻は気付いた。
「そうか須賀路…てめーも見えへんのやろ…透明やからな…」
「何?」
「さっきのナイフ攻撃がその証拠や…あれだけ突いておきながら、急所を突けなかったのが証拠、映画でよくあるマシンガン攻撃か、都合よく主人公に当たらないという…」
球印の疑問を挟みながらも、白尻は問いた。
「ぺっ!それがどうしたんだっぺ!」
強がる須賀路だが、動揺していることに白尻は見逃さなかった。
「おめーら、もう打つ手なし、殺されるだけの奴らが、粋がるんじゃあねェーー!」
須賀路は叫んだ。ここで球印が、
「殺すとか、捕まるぜェ、重罪だ、怖くねーのかよ!」
常識的な質問してきた。これに須賀路は大笑い。
「バァカめーー!!病力で殺しやっても、罪には問われねーんだよ!!」
「が!…マジかよ…」
この答えに球印は驚くしかなかった、これが本当だったら、もう常識がおかしい!と思った。
「そうやねん…病力で人殺してもOKやねん…何でかホンマ解らん…世の中狂っとるとしか思えん…ま、D・ト〇ンプが大統領になってる時点でもう世は狂ってるがな…」
白尻もその不条理を知っていた。
球印は納得するしかなかった、そういう世の中だと。それと同時に安心した、医者を間違って殺めたことは無罪放免になると。
「トラン〇はマジ、意味分かんねーよなァ…国境の壁を作ってメキシコに払わせるとか、いや金もってんねんから、テメーが払えって話だよなァ」
球印もそれを感じていた、後の二人も頷いた。これは彼らだけの思いではない、世界中の人間がそう思っているのだ。
足音が聞こえる!そう、須賀路は突っ込んで来たのだ!
ヤバイ!球印は身構えた、が!奴が途中で足を止めた、いや、止められたのか?
「何ィィーー!!」
須賀路が驚くのも無理はない。足が粘着テープか何かで貼り付いているのだ。
「フフ…あたしの血が弾丸だけと思ったかい?ベットリしたものにもなれるということや…」
何と!粘着テープの正体は白尻の血液だったのだ!
さて、問題はここからだ、こんな時間稼ぎをしたところで、攻撃する病力が戻ってくるわけがなし、球印に攻撃させようとも今パニック状態だし…
しかし、ここで奇跡が起きようとしていた。
「イ、痛え!コ、股間が急に…イテテテテェ…!」
球印が痛み出した、そう、この痛みこそが奇跡なのだ!
「痛い?ええぞ!よし!」
「何がよし!だ!このガキャア!!」
白尻の喜びに球印はパニクりながらキレる!
「いやいや、病力が撃てる合図や!それは!」
「何!マジ?」
今の言葉に一気に落ち着いた球印。
漫画やああるまいし、こんな都合良く奇跡が、と思った白尻だったが、よく考えるに、精神が乱れていたから発作が起こったんやあないか、起これば病力が撃てる、目くらにされたのが逆に好都合だったんや!とも思った。
「うっしゃあーー!撃てェーー!」
「ウオオオオオオオゥゥ!!」
白尻球印は叫ぶ!バサッという音がした、球印がズボンを下ろしたのだ。光っている!さっきとは比べものにならないくらいに!透明になっているのに股間が目映いくらいに光っているのを白尻は目撃する、彼女はイケると確信した。
しかしここで困ったことが、どっちの方向に撃てばいいのか解らなかった。が、ここでまたも奇跡が、
「撃たせるかァーーボケェーー!!」
須賀路がここで声を張り上げたのが、彼にとって致命的だった。そう、球印に場所を悟られたのだ!
「そこかァーーボケェーー!!」
遂に!球印の性器から、光線が発射された!
突然、球印の目が見えるようになった、透明だった体や景色も元の色をつけ始めた、目の前にあった凄まじい光景…それは須賀路と、その腹に見える向こう側の景色だった。
どういうことだ?腹だけ透明なのか?球印は不思議がったが、直ぐに謎は解けた。奴の土手っ腹に穴が開いているのだと、俺の股間光線が決まったのだと。
口から血を吐く須賀路、そして、
「ぺっ…ぺぺ…ペペロンチーノ…」
そう言いながら仰向けに倒れ、息絶えた。まさか断末魔が方言を通り越してパスタの名前になるとは、二人は少し吹いてしまった。
闘いは終わった。この命を懸けた闘いに勝利したのだ。最も須賀路との闘いに、だが。
生き残ったことを確信し、球印、白尻の二人は安堵のため息をついた。
「ふう…終わったァ…どうやらハッピーエンドで終わったようだな」
球印が安堵の言葉を切り出すと、
「ハッピーエンドって訳でもないで…確かにこいつは卑怯者だったがなァ…好きで戦ってた訳ではなかった…病気直したくてやむを得ず戦っとったんや…そんなの殺したって…ハッピーな訳がない…」
白尻はそう言うと、須賀路の亡骸に向かって手を合わせ合掌した。
「病人同士の闘いに、ハッピーエンドなんてないのかもな…」
この白尻の言葉に、球印は、深い考えをする奴だと思い、一緒に合掌した。
「ペペロンチーノが好きだったんだなあ、次生まれてくる時は、パスタに生まれ変われればええなあ…」
球印のこのボケに、白尻は
「それを言うならイタリア人やで…」
と、笑いながら突っ込んだ。
「イヤー助かったわ、なんかホンマ、ありがとう」
白尻が礼をした。先程までの険しい表情とはうって変わって、可愛らしい笑顔を見せた。
その顔を見て球印は三つの思いが過ぎった。「かわいい、将来美人になりそうだ」「友達になりたい」そして「大きくなったらヤりたい」と。
「フフ…ま、まあ俺でよければ、いつでも力を貸すぜ」
球印は取りあえず、彼女を死なせたくないと考えた。その為には守ってやらなければならない、そして将来性行為まで行く為には、親交を深めなければならない、と。
「借りたいのは山々やけど、かなり厳しい闘いになるで」
「なァに、俺のセック、いやマックスパワーはすっげー威力なんだぜェ、コンクリートをも貫通すんだぜェーー!!」
白尻は一応断りを入れたが、チャラ男の性欲は止められなかった。
《コンクリート貫通位で得意になられても…》
白尻は呆れ、思った。
「これからもよ…テ!イテテテ!」
これからも宜しく、この超イケメン、球印圭を!と自己紹介しようと思った矢先、突如股間に激痛が!
「ウオオーー!!イテェ!メッチャ痛え!ウワタタタ…」
これまで経験したことがないほどの凄まじい激痛が球印を襲った!まるで性器の先に針を突き刺されたようなものだ。もだえ苦しむ男に白尻は、
「これは…レベルアップの反応やで」
と声かけるも、相手は全く聞ける状態ではなかった。苦しみ、のたうち回る球印に、なんと彼女は、
「やかましい!泣きわめくんだったら、痛さではなく、その程度で痛がる自分の心の弱さに泣け!!」
一喝したのだ!これには球印も痛みを忘れ注目してしまった、この痛みもかき消す程、地面すら揺れる程の凄まじい喝だった。
「いや…だってよ…メチャクチャな痛さ…」
「知っとるさ、レベルアップするときの壮絶さは、だがこの程度で音を上げてちゃあ、これからの闘いにも、病気にも勝てねえ」
確かに、と球印は股間を押さえながら思った。しかも力を貸すと言っておきながら、情けない姿を…自分を恥ずかしがった。で、ここで球印は、引っ掛かった言葉を問いただした。
「レ…レベルアップって…テテテ…」
「病力が上がるっちゅう事や、ポイント持ってる敵倒して、貯まるとレベルが上がる、ただその時、一時的に激痛が出てくるけどな」
一時的?そういえば痛みが消えていることに気付いた球印、そして、
「ポイントってRPGで言えば経験値みてーなもんか?」
と、理解した。
「そんなもんやな…ただ最近のRPGは金払えばレベル上げられるなァ…」
スマートフォンRPGの課金システムを皮肉る白尻、球印も笑った。
「ポイントってのは病力持っとる者についとって、それぞれ数が違う」
「強い奴程ポイント高いのか?」
「そーとは限らへん、そいつが今まで取ったポイントが全部貰えるって訳でもない、二~三割位か、それプラス初めから持ってるポイントが貰えるっちゅうわけや」
「レベルはどれ位取れば上がるんだ?」
「最初は100ポイント位かな?もちろん、レベル上がるごとに必要な数は増えていくがね」
白尻はポイントについて説いた。そしてスマートフォンを取り出し、
付属のカメラを球印に向けた。
「何だ?色男を、待ち受け画面にしたいってか?」
「"シックGO"っちゅうアプリがあってな、病力持ちを写すと、ポイントとかレベルがわかるっちゅうモンや」
球印のナルシストボケをスルーし、白尻はアプリで彼を写した。
白尻は驚愕した!
「こ…これは…はぐれメタルやんけ…」
こんな言葉を言われ、球印も驚愕した。