Act03 透明人間!? 謎の力シックパワーの恐怖!!
球印圭は凍りついていた。
睨まれている!捕食される寸前だ。こんな窮地は今までの人生で出会った記憶が無い、今の今まで窮地を脱出してきたばかりなのにこれだ。しかもこんな裏通りの狭い場所で…まるで罠に掛かったみたいだ。まさに一難去ってまた一難、いや十難、百難位あるかもしれないと感じてしまう。目の前の少女に、何故かそんな驚異を覚えるのだ。ただでさえせまっ苦しい場所なのに、もう潰されそうな雰囲気だ。
その少女は、背丈は小学校低学年位か、赤いシャツに赤いパジャマ風のズボンと赤ずくしだが、肌は透き通るような色白で、灰色のワッチ帽を被り前髪は少し出ており、髪形は三つ編みでルックスはいい方なのか。
《な…何でこの俺が…こんなガキに…》
解るわけがなかった。しかし異様な恐怖、死が間近に迫ってくる感覚があるのは事実。少女から発せられる何かに怯えちまっているのは紛れもない事実なのだ。
しかしその殺気も束の間、少女がふらつき始めた。しかし球印はそれにすらビクついてしまう、もはや彼女の一挙手一投足に恐怖する程になっていたのだ。少女の目が閉じてきた、そしてか細い声で、
「血…が…足りへ…ん……」
そのまま倒れてしまう、それに対しても球印はビビった。
倒れて殺気も失せた少女には、流石に球印も恐怖心は失せていた。少女に近づきまじまじと目視する球印、安全な存在になったか確かめている、どうやら大丈夫のようだ。
球印はいいことを思いついた、
《このガキを病院まで連れて行ってやりゃあ、母親からカネとかお礼が貰えるぜ…へへ…》
彼は忘れていた、たった今、病院から逃げてきた事を…
少女を背中に抱え、病院へ直行しようとした、が!背後に気配が!球印は直ぐさま振り向く、すると何者かが居て、その者がナイフを突き出してきたのだ!間一髪!球印は避けたが、
「アぅ!!」
悲鳴を上げた!どうやら完全には避けきれなかったようで、右腕を少し斬られた、傷口から血がマーライオンの口から出てくる様に流れている、球印は思う、出血多量で死ぬんじゃあないかと慌てふためいていた、その時、
「血ばかり見てんじゃあない、奴を見ろ…奴を……」
耳元からささやき声が!そう、肩にいる少女からだ。
球印は訳もわからず、相手に注目した。髪はボサボサでしかも肩まで伸びきっており、180センチはあろう男であった。しかし不思議なのは、彼の肌の色だ。鼻から上は小麦色で、その下は透けるように色白だったのだ。
《馬鹿な…漂白剤で体洗っているのか??》
肌の色を、そしてこんな男がいつの間に後ろに!と疑問を感じた球印、その肌をよく見てやろうと思ったその時!男が見えなくなったのだ。
球印は理解した!少女の殺気は自分ではなくこいつに向けられていた事を理解した!
まさか!消えたのか!?あり得ない!またも慌てふためく球印に、
「奴の病は…尋常性白斑…や」
「えっ?ジンジョー、なんて??」
少女のこのささやきに、当然理解出来ない球印、
「肌が白くなる…病気や…それを通り越して…透明に…」
「は?は~~??もー訳わかんねーー」
少女は朦朧としながらも語るが、まだ球印は理解出来てない。
「いわゆる…シックパワーや」
「シックパワー??それって、ビームとか出すやつだろーが」
球印はその単語を知っていた。が、それがまだまだ奥が深いということを、これから思い知らされる事となる。
「…シックパワーってのは一つじゃあない…侵されとる病気ごとに能力は変わって…くるんや…」
「なに!それじゃあ何種類もあるっつーことか?」
「ああ…アイドルの個性の種類とは…違ってな…」
少女は頷いた。球印はシックパワーがなんたるかを理解したようだ。これで自分は〇ンコが病気だからシックパワーがチン〇から出る、ということは解った。が、奴の病気、尋常なんちゃらがよく解らなかった。
説明しよう!尋常性白斑とは、皮膚の色素が失われ、白くなっていく病気である。過去にはマイ〇ル・ジャクソンも発症しており、黒人ですら白人のようになってしまうのだ。かなりマイナーな病気な為、球印が理解出来るはずもなかった。
ここで半色白の男が、
「なんだっぺ?アイドルと違うってのはよ~」
話に乗ってきた、どうやら東北出身らしい。しかも消えながらしゃべっているので薄気味悪いと球印は感じた。
「最近のアイドルは個性を売りにしていることが多い…が、実際の個性は薄っぺらい、変なキャラ作っとるだけや、性格なんて一種類しかない!言うても過言やないな…」
消えている男と球印は吹いた。
「言えてるぜぇ~、喋り方とか全部一緒だもんな」
「アイドルはやっぱキャラじゃあなくって実力なんよ、口パクとか他人に作詞作曲任せてる時点で…全然あかん」
「ブログとかやってる暇あったらよ~、作詞ぐらいしろって話だよな…」
球印と少女は関係のない事を語りはじめた。少女の気力な少し戻ってきたようだ。そこに、
「てェェェかよォォォォゥ!!おめーらこれから殺されるってえのに、呑気にくっちゃべってんじゃあねーべ!!」
消えている男が切れてきた。足音がこちらに向かってくる、ヤバイ!と少女は感づいた。そして逃げろと球印に指示するが、振り向こうとした瞬間、背中の右腕辺りに激痛が!そして少女も少し呻いた、どうやら二人とも刺されたようだ。しかもどんどん切り傷が出来てくる、消えている男が攻撃してきているのだ。もがいているので、急所には当たらないものの、ダメージは凄まじい。悲鳴を上げる球印だが、少女の方は堪えているようだ。
たまらず、球印は少女を放り投げてしまった。少女はそのまま倒れこんだ。
反撃だ!奴と闘うしかない!少女は寝こんだ躰でそう告げた。が、
「はぁ!?いやいやどー戦えっつーんだ?あんなビックリ人間とよー!」
「なんかあるはずや…パンチとかキックとか、唾とか…」
「ねーって!出来ねーって!唾って何やねん…」
球印は人生で喧嘩したことなど殆どない、ましてやこれは殆ど殺しy合いである、拒絶して当然と言えよう。
「正直…戦えるのは…あんたしか…おらん…あたしは…血を出しすぎて…シックパワーが…出せへん…」
少女は悔しがった。
「畜生…前の戦いでパワーを全部使ってもうた…」
この少女の言葉に、消え男は笑い、
「へへ…流石の白尻も、こうなるともーもうお終えだなァ…」
この挑発に白尻は、
「ちくっしょう…このタイミングで仕掛けてきやがって…芸の最中にCM入れてくるフジ〇レビのバラエティ番組みてーにゲスい奴だぜ…」
空間が歪ませるような目つきで睨み付けた。ちなみにフ〇テレビは生放送中、書道家が作品を書き上げている最中になんとコマーシャルを入れ、開けには書き終えていたという、空気の読めない、編集したことが丸わかりの演出を平気でやってしまう放送局である。
この二人のやりとりで球印は三つのことを理解した!この少女の名がシラシリだということ、そしてその白尻はかなり強いということ、しかし今は満身創痍であることを。
「ちくっくっしょう!!シックパワーすら撃てりゃああんな奴…」
白尻は悔しさを隠せない、何とも個性的な悔しがり方だ。
ちなみに彼女は少女なのに男みたいな言葉を発しているが、球印は気にも止めていない。簡単な話、女が男言葉を使うのは現実では当たり前だからだ。むしろ女言葉を使う者など皆無であり、架空の世界やオカマバーでしか使われない。
しかしここで、白尻の嘆きに球印は思い出した。
「そうか!シックパワーや!俺にも打てたんだ…」
この発言に白尻は、
「なに!マジっすか?」
僅かではあるが、希望を見出した白尻、まさかこんな所で病人にであえるとは。わくわくしながら、
「ど、どんなんや?」
白尻は問うた。
「へへ…すげえぞ…ビームが出せんだぜ…チ〇コからビームをよ!」
その言葉に白尻は、
「何!チン〇から?ということは、そっちの病気か?」
掘り下げようとした
「そっちって何だよ」
球印は聞き返した。
「性病か?」
「癌じゃァ!!死にそうなぐれーのなァ!!」
白尻の失礼な態度に、球印は怒鳴った。
「すんません…」
謝罪した、白尻は中二病の気があるが、謝れる子供だった。そして察知した、死にそうなぐらい、ということは相当重い病気だと。
シックパワーは病気が重ければ重いほど強くなる性質がある。白尻はチ〇コの威力を期待した。
「何ィ?チン〇からビームだってェ?」
消え男はその言葉を聞いており、恐怖した。彼もまたシックパワーの性質を知っていたのだ。そんな強力な力はこの狭い場所では避けきれない、「ウヘー!」と叫びながら反対側に逃げだした。
逃がすな!撃て!と白尻は指示し、「ヨッシャー」と球印はズボンを素早く降ろし、構えた。それを見た白尻は、
《こ…こなれてるな…ズボンの降ろし方が…しょんべんするときいつもスボンを降ろしてるらしいな…いやいや…社会の窓から出せや…リンゴの皮剥きが下手くそな奴みたいな…実までむいて芯だけにしてしまうみたいな奴やん…》
心の中で例え突っ込んだ。
ここで球印は、とんでもない事を勧めてきた。
「見てみいシラシリとやら、俺のチン〇を…もうすぐすげえモンが出るぜェェ!!」
「何でいちいちあんたの息子を見なきゃあならんのよ…そんなミミズみたいなもん…」
何故か見せようとする球印に、白尻は白けた。
「こんなにぶっといミミズがあるか!」
球印は突っ込んだ。
「早よしてくれ!ポイントが逃げてまう!ビームで仕留めるんやぁ!」
ポイントとはまだよく解ってない球印。詳しく説明してくれる筈の相手を間違えて殺してしまったからだ、その疑問は置いといて、とりあえずビームで相手を仕留めることにした。
「アンダァァァフラァァァッッッシュュ!!!」
勇ましい掛け声をあげた球印。そして男性器の先がチカリと光った。