Act02 地獄は平等に訪れる!?抜け出せ必殺アンダー・フラッシャー!!
球印の股間の検査し終えて、医師は気が重かった。何年医師を経験しても慣れるものではない、罪もない人間に死刑判決を言い渡すのは。
「お疲れ様です」
とりあえず患者を労う医師。
「で、で、どーでした?どれくらい進化しました」
何も知らず医師の気も知らず、ワクワクしている球印。
「進化って、ふぅぅぅ~~」
彼のあまりの能天気ぶりに呆れる医師。これから天国から地獄へ光の速さで、途中で体が堪え切れず燃え尽きてしまうほど落下してしまうというのに…しかし医師は心を鬼にし、
「単刀直入に言うて、ガンですわ」
突き落とした。
「おお~すげえ進化…って、がにィ~~~!?」
球印はぬか喜びした後、一気に青ざめる。何のことだかサッパリ分からない状態だったので、
「だから、ガンやて、性器にガンができとる」
念を押して医師は言い放った。
「ガ、ガンだって~~~!!!」
悲鳴を上げてしまった球印。しかもガンと「なんだってー」が偶然合体し、寒いギャグと化してしまった。さすがの彼も、
「き、聞いたことがある、”ガン”という病気を…死ぬ…死ぬ病気じゃあねーか…」
癌については知っていたようだ。
「まあ死ぬねェ…このまま放っとけばあなァ」
「イヤだ…死にたくねえ…死にたくねええ…死にたねえよぉぉぉーーーーぅ!!」
医師の駄目押しに、ついに泣きわめき始めた球印。先程とは打って変わってこの態度、正に高級料理を食そうとした所にハエが入って食せなくなった時のような絶望である。
「このままではって言うてるやろう…治療すりゃあ治ります」
「ホンマ?」
救いの言葉に泣き止む球印。
「ああ、ただ病状は深刻でね…ガンの進行度はステージ4なんですよ」
救いのロープを切る宣告。
「ステージ4?ステージ言われてもイマイチピンと来ねえ、ドラクエでいうとどれ位?」
ゲームでの例えを要求してきた球印。
「ドラクエはステージで区切られてへんからなァ…まあロンタルギアのとこ位かな?」
素直に応じる医師。
「ええええええええーーーやべーーじゃああああんーー!!!」
ロンタルギアの高難易度を知っていた球印は、またも地獄へ突き落とされた。
「だーから普通の治療法では無理なんですよ、特殊な治療法が必要なんです」
「ホイミ?」
球印は話題がゲームから離れられない。
「ドラクエとかもういい。まずはこいつを飲んでください」
医師は業を煮やし、妙な薬を手渡した。
「これは…?」
カプセルを渡され、疑問した球印。色は普通赤白か、青白の筈、それなのにこれは"赤黒"である。白のところが黒になっている、何か怪しい、そう思ったのだ。
「”シックピル”という特殊な薬です。努力次第でどんな病気も治すことができる、夢の…薬や」
「治る…??やったーーーー!!…ってど、努力…?」
治る、と聞き、再び地獄から駆け上がれた球印。しかし努力と聞き、嫌な予感が駆け巡る、彼は努力など殆どしてこなかったからだ。
「そりゃあ努力しなきゃあな。ダンベル買っただけで痩せると思ってる主婦か!こいつを飲んだ後、行動するということや。治すため、いろいろやってもらわなあかん」
「何を…するんだ??」
行動、と聞き、球印は更に嫌さ加減が増した。
「とりあえず飲んで、話はそれからや」
《うっ!…くっ!…怪しい…最高に怪しいぞ…》
強引に進めてくる医師だが、球印の嫌悪感は消えておらず、素直に口に運ぶことができなかった。
《飲まなければ治らねえんだな、死ぬんだよな…しかし…ううっ、飲めねえ、手が、身体が動かねえっ!!…》
心の中で、球印は自分に言い聞かせた。が!やはり身体が動かない。
「なにしとんのです?飲まないことには治りませんよ」
苛立つ医師。
《ううっ…なんだ、この薬から発するこのオーラは…》
嫌悪感を通り越し、薬から何か感じた。匂いではない、異様な圧力を感じる、説明するとすればこんな言葉しか出てこない。
《フィールドが張られている感がする…口までもってけねえ…》
汗ばむ球印。
「お前はこう考えてるな…薬から凄まじいオーラを感じると…」
なんと!医師は読んでいた!心を!!勿論超能力などではない、長年の"勘"である。
「緊張してっからそう感じる…ただそれだけや。悪臭放つドリアンでさえ、口の中に入れてしまえば美味しい味がするもの、余計なこと考えず飲んでしまえばええ」
医師ももう必死である。
《ちくしょう!普段は何も考えず突き進めるのに…ヤクザ連れてる女にも平気でナンパできるのに…進めねえ…思いきれねえ…》
"考えずに動ける!"このチャラ男独特の性格にに多少なりとも誇りがある球印。
「ささっ、早く。飲まなければ死ぬんですよ…」
急かす医師。
《ぐぐっ…これは…飲む前にも相当な努力が必要…どうすれば…》
球印は考えた。一生で一番頭を使っているのかもしれない。
《そ、そうか、口の中に入れようとするから駄目なんだ!!》
突破口!?を見つけ出したのだろうか。
《そうだ!!ケツの中にぶちこめばっ…》
なんと!座薬にするというのか!焦るあまり、発想がぶっ飛んでしまっている!
球印は早速、その狂った考えを実行に移す、ズボンの中に手を入れ、己の尻の穴にカプセルを入れようとする。座薬など経験もしたことなかったが、意外にあっさりと入れることが出来た。
「やったァーー!!ついに入れたったぞーーォ!!」
球印は大喜び、達成感がすさまじい。しかし医師はその光景に大怒り、
「座薬じゃあねェェェーーーーゥ!!」
怒るのも無理はない、口からと尻からとでは、到達点が違う、後者では大腸や胃まで到達出来ない、肛門で止まってしまい、意味がなくなるのだ。この薬は希少な上に恐ろしく高価、無駄には出来ない。
すかさず医師は、球印のズボンをパンツと共に剥ぎ取り、丸出しにした尻を蹴飛ばし薬取り出し、糞がこびり付いているのにもかかわらず、空中で握り取り、そして素早く奴を喉を掴み、すかさず無理やり口の中にぶちこんだ!
「ぎゃうえ!!」
奇声に近い悲鳴を上げる球印、無理もない。
「汚くないでェ!口の中なんてもんは、みんな気付いてへんが、バイ菌だらけなんや、その汚さはウンコレベルなんやでェ!」
医師は大袈裟な蘊蓄を叫んだ。
余談だが実際に口の中は雑菌だらけ、とくに朝起きた時のそれは排泄物の中の雑菌の数に匹敵する。だから歯を磨かずに朝食を採ると、まるで糞を食べる時と同じ雑菌を食べているということになるのだ。
そして医師は、
「ウンコだと思って食え!」
無茶ぶりを強いた。
「思ったら食えるかィ!」
全力で否定した球印。しかし、抵抗も虚しく、医師の手が口の中にクリーンヒットした。
「ゴエエェェ!!!」
鳥のヒナに餌を与えるかの如く薬を飲み込まされた。初めからこうすれば良かったと医師は思った。
遂に球印は怪しい薬を飲んでしまった。そしてすぐに効果が出てきた。
「うおおっ!こ、股間が、あ、熱い!!」
股間が焼けた石を入れられたような急激に熱を帯び、球印は混乱してきた。
「効いてきたな、そこから更に恰好良くなる」
効果は順調のようだと確信する医師。
「いててェ!チ、チン○が痛エェ!!」
次に猛烈な痛みが走り、泣き叫ぶ球印。
「うほほォ!た、勃ってきてる!!」
己の股間の変化に、球印は変な悲鳴を上げてしまった。
「勃つってレベルやないでェ、これは正に、あなたの言っとった」
医師はもう興奮している。想像以上に効いているようだ。
「で、でかくなっていく!」
性器が長くなっていくだけではない、太くもなっていっている。どんなエロ本、アダルトビデオを見ても、球印はこれほどまでにはならなかった。
「そう、進化や!チン○がパワーアップしとるんやァァーー!!」
興奮のあまり、医師は叫んだ。
「やぁっったぁぁーー!!て、あれ?病気だったんじゃ?もうソッコー治ったんか??」
それを聞いて喜び、疑問する球印。
「パワーアップはした、が、まだ治ってへん、ガン細胞はしっかりのこっている。治すには、またパワーを集める必要がある」
「どーやって?」
医師の説明に、残念がる前に質問した球印。
「ぶっちゃけ…闘うんや!」
「は?はぁ~~~!?」
漫画や小説の登場人物でしかかけられない言葉を耳にし、最大級の疑問符を発する球印。
「闘って勝って、倒してポイントを集めるのや」
「す、すんません、ちょいと意味わかんねえ…」
構わず解説し続ける医師だが、球印は当然ついていけない。
「病人同人で闘う、シックパワーで相手を殺すとポイントが入る、それを10ポイント貯まると、病気が治るって寸法よぉ」
「シックパワー??な、なんじゃあそりゃあ??」
更に、今度は聞いたことのない単語に、当然聞き返す球印。
「フフ…もう既に君の身体にも宿っとるよ…巨大化した股間がその証拠。シックピルが与えし武器、それこそがシックパワーやああ!!」
大事なことなのだろう、わからせようとプロレス実況顔負けの熱のある解説に、
「なにににーーーーィ?!」
球印はこれまた必殺技を打つ時のような驚きの絶叫を放った。
「撃ってみい!解き放ってみい!!」
「撃ってェェーー??なんだそれ??あ!でもなんか、撃てる気がする!!なんだか撃てそうな気がするーーー!!」
普通なら医師の発言の意味が解らない筈である、しかし一瞬考えたものの、すぐに球印には分かったのだ!本能的に、誰に教わらなくても、セック〇のやり方がわかるように。医師は素早く球印の後ろに回った。
「光っている!先っぽが光ってやがる!!昼間のパパみたいに!!」
古いCMに例えた球印。発射の準備ができたように感じた。
「うっしゃあーーーー!!」
いよいよ発射できる!球印は吠えた!
「だああーーー!!ちょっと待てーーー!!」
「えっ!?」
「あかん!!この中で出すなや!!」
ここで医師は焦って止めようとした!聞き返したものの発射しそうだったので、右手で球印の右肩を鷲掴みにしてようやく落ち着いた。
「中で出すな?フフ…」
アダルトビデオの用語に聞こえた球印は、吹いた。
「診察室を…命を救う貴重な聖域を壊す気か!!外で出せ、ビームを!!」
どうやら発射されるものは、少なくとも部屋を潰してしまうほどの威力を予想した医師。
「外に向けて!!来い!!」
「ええっ!?」
医師は球印の左ひじを右手でつかみ、そのまま部屋から出させ、上り階段から屋上へと連れ出した。
そこから見える古びた、今は使われていない6階建ての廃ビルを指し、
「そこでいい!よし!!放てェェーーーーィ!!」
命じた!
「ふぉおおおおおーーーーーーー!!!!」
いよいよ発射か?球印!
「アンダァフフフラァッシュッシュッウゥゥーー!!」
掛け声とともに股間から強烈な光が放たれた!!
《なにその掛け声??》
医師の心は急に冷めた。
発射された光は、見えていた廃ビルの上3階の部分を完全に消滅させた!
「なっ!?なんだこれ!!?す、スッゲーー!!し、進化なんてレベルじゃあねーー!!!」
「これが”シックパワー”じゃよ球印…お主は今、伝説の剣を手に入れたのじゃ」
「剣というか大砲のような…って何でジジイ言葉??なんでRPGみたくなっとんねん…」
驚く球印に、冗談交じりにに返す医師、それに突っ込む球印、すっかり関西弁のツッコミが板についたようだ。
「雰囲気でもう…なってまったんやなあ…」
この医師はノリがいい。
「闘うっつってたな…もう闘えるやん、格闘家だろうが軍隊だろうが、金色に変身する宇宙人だろーが負けやしねー!オレは今、最強の力を手に入れたのだーーー!!!」
球印は興奮し、漫画のキャラのようなセリフで、漫画のキャラを超えたなどと夢見がちな事を口走った。現実と架空は、決して交わることはないのだ。
「そう、軍隊にも金色にも負けぬかもしれん、ただし…」
「…あれ?つっ!?あつっ!!」
医師の言葉も聞こえぬほどの興奮、しかしそれは痛みと共に覚め、
「いてっ!あれえ?痛えぞ…いて!いてててぇ!!!」
悶絶に変わった。
「何だあこりゃあ!どーなってンだ!凄まじく痛え!どんどん痛くなっていきやがるゥ!!」
「そりゃそうだろ、あれほどのパワーを放出したんねんから」
「はい?てててててッ!」
自らの股間を掴まずにはいられない、圧力で痛みを緩和させようにも収まらず苦しむ球印に、医師は答えたが、うまく耳に入らなかった。
「シックパワーつーのは、使えば使う程病状が悪化する、痛むのも当然よ」
今度の医師の言葉は、耳に入っていったようだ、球印は痛みで涙目になりながらも医師の口を見つめ、次の言葉を聞く準備を整えた。
「しかし!病状が悪化するほど、シックパワーの攻撃力は増す、つまり病気が重くなればなるほど強くなる、闘いが有利になっていく」
医師は語る、汗をかきながら。球印は聞く、汗をかきながら。
「てて、ゆーか…病気悪くなったら…死ぬじゃん!」
「駆け引きやな、そこは」
怯えながら問う球印に、さらりと答える医師。
「力を得るには、何かを捨てなきゃああかん。それが、たとえ、命であってもな。モーターレースでスピードのある車体を選べば当然事故で死ぬリスクも高くなる、ということや」
「つまり生き残るためには、敵に、病気に殺されない為には、シックパワーを…ててて…う…うまく使えという事かあ…あてて…」
医師の力説に、痛がりながら必至こいて受け答える球印。
「ゲームみたいでいいじゃあないすか、うん!」
「良くねーわ!そんな命をかけたデス・ゲーム…」
チャラ男にだからさぞゲームが好きそうだと感じた医師だが、さすがに限度の超えたゲームは拒絶された。
「病気を治す、それだけで誰もが命かけるねんで…ゲームになるだけでもありがたいと思わな…」
「ちくしょー!俺自慢じゃあねーがゲーム苦手なんだよなー。ドラクエすらクリアしたことねー!!」
なんと球印はゲーム自体が苦手らしい、医師もこれは意外だった。
「心配すんな、RPGやあない、アクションゲームや」
「アクションゲームもなあ…スーマリクリアしたことないねん…」
医師の想像以上に、球印はゲーム音痴らしい。
「まあでも大丈夫や、あれだけのビームだせんねんから、立ちしょんゲームやから」
まーた医師の下ネタだ、職業柄、体のあちこちを弄る必要があるので、そんな類には慣れている、と、いうか、その程度では下ネタとは思っていないのだ。
「立ちしょんって…へへ…アクション言うてたじゃん…」
「だから、”悪を倒す立ちしょん”略してアクションや」
「ギャルでも思いつかん略しかたや…」
下らないトークで盛り上がれる程、球印は平常心を取り戻しつつある。元々チャラ男なので、あまり落ち込む性格ではないのだ。
「だってギャル、立ちしょん出来へんもん」
医師はまた、とんでもないことを口走った。が、
「意外にギャル、無理矢理しますよ、立ちしょん」
国民の1%も知らない、重箱をつつくような知識で返してきた。
「ああ、そういやあ大阪でもオバハンが立ちしょんするわあ…」
医師も思い出した。双方ともバラエティ番組から得た知識らしい。
雰囲気が通常に戻ってきた。球印も痛みが引いてきた、というか怒りが痛みを忘れさせていた。
「ちくしょしょしょおう!!なんで俺がこんな目に!!何も…何も悪いことなどしてねーのに!この球印圭、何の罪もないのにィ!!」
確かに彼は不良になることや盗みや犯罪を犯す事など無かった。何というか、幼少の頃からずっと軽い人生を歩んできたのだ。
「地獄っていうのは人を選ばへん、罪も悪も関係なしに、平等に訪れるもんや…」
医師は世の中の理をそのまま説いた。
「畜生!芸能界なんかを見てると、むしろ善人の方が地獄行くような気がするぜ…病気という名の地獄に…」
「善人はストレスたまりやすいからなあ…そしてそのストレスは悪人によって押しつけられている…やから悪人の方が長生きしやがるという悲しき現実がある…」
「畜生う!!俺も悪人になったろかなあ…」
球印はもうぐれる寸前だ。ただ医師の言った通り、彼がストレスを溜める性格ではない、が、生死が懸かると別だ。
「まあ待て、どうせならその力で悪を倒してストレスを発散させるってのはどーよ?ポイントはたまらんがストレスなくすことによって病気が改善されるかもしれへん」
医師は正義の味方になることを進めた。
「なあるほど、でもめったやたらにすると、こっちが罪人になって刑務所にぶち込まれねーか?」
何気に常識的な事を心配する球印。
「なあに…そのアンダーフラッシャーならば死体も証拠も残さずに消滅させられるさ…だから罪には問われへん」
「なんか軽いヒーローにもなれそうや…」
危ない事を吹き込む医師に、球印は乗せられた。
「地獄っていうのは誰しもが必ず一度は訪れる…ただそれを乗り越えたとき…命のありがたみという素晴らしい天国が待っているもんやでェ…」
危ない人間が、意外な正論を説いた。彼は作家性がある、詩人の才があるのかもしれない。
球印は知らぬが、破れていた祖父の詩の先にはこうつづられていた。
ー生死を賭けた戦いの果ての無駄なし。
金も霞む命の有り難み得る。
球印鎮幸 ー
医師、岩尾木もその考えは同じだ。
「何ずっとくっちゃべってんねん!!こちとらずっと診察待っとんねん」
「はやくしろよ!藪医者!!」
こんな病院でも患者は来ており、そして待ちわびていたのだ。
「おおっと!やべーやべー忘れとったわ」
己の漫才、コントの長さに、今気づいた二人。
「うざいから、奴らをアンダーフラッシャーで吹っ飛ばしてくれ…」
危険思想がまた発動した医師。
「よっしゃー!アンダァァ…」
そして乗る球印。
「あーー!!冗談や…真に受けんといて…」
己の出した指示の恐ろしさに気づき、直ぐさま医師は止めようとした。が!止められなかった!
何ということだ!アンダーフラッシャーという、球印圭の陰茎から発射された光は、恩師であるはずの医師、岩尾木に向かって放たれてしまったのだ!
直撃してしまった医師の躰は、無事であるはずが無い、全身の皮膚、そして内蔵までも一瞬にして焼け消え、骨だけに、しかも焼けて白骨となってしまったのだ!半ば自業自得とはいえ、何とも壮絶な殉職である。
もちろん、診察室も無事ではすまなかった。球印の目の前にあった壁、棚、医療器具等が崩壊しており、崩れかけた天井から破片がパラパラと落ちてきた音に、放心状態だった球印は我に帰り、慌てふためいた。待合室の患者達もパニックとなっていた。
「や…やべえ…どうすりゃいいんだよコレ…」
彼程度にどうにかなる考えが思い付く筈もなく、取ろうとする行動は、
「に…逃げるっきゃあねェ……」
診察室から一目散に逃げ出す球印、しかし彼を止める者はいない、犯人だとは思われなかったからだ。幸運にも病院から無事に脱出することが出来た。
ヤバイ!怖い!球印は全速力で逃げながら何度も心の中でつぶやいていた。どこに行けばいいのかわからない、このままでは捕まるということはチャラ男でも解っていた。とりあえずビルとビルの間、ホームレスがたむろしていそうな裏通りを発見、そこに身を隠すことにした。
しかしそこには何者かが!悪運が尽きたのか、警察だ、逮捕される…球印は一瞬絶望したが、そんなはずがない、警察の筈があるわけがない、その目の前の者は小学生くらいの少女だったからだ。しかも様子が変だった、明らかに具合が悪そうだったからである。しかし、この少女から発せられる殺気は何だ?戦いの素人でもわかる異様な殺気…
一体何者なのか?そして球印の運命はーー