幸せの絶頂からの転落
色々と拙いものになると思われますが、楽しんで読んで頂けたら幸いです。
「あぁ疲れた……。今回はぎりぎりだったなぁ……」
開放感からかついつい独り言がもれる。
なのに、周囲から同僚達の肯定的な返事が返ってきた。
今回はハードな物件が多く、社員総出で朝までコースだったのだ。
うちは小さい会社の割に仕事が多すぎる。
人件費をケチった結果がこれだ……。
仕事の疲れから、仰け反るたびにギシィと鳴るオンボロ椅子を鳴らしていると、視界の隅で慌てて逃げ出す社長の姿が見えた。
やばい、忘れてた。
「社長が逃げたぞ! 捕まえろ!」
俺は夜勤で疲れ果てゾンビのようになっている社員達を慌ててけしかけた。
グッタリしたり、うつらうつらと船を漕いでいた社員達が俺の声を聞いて机を跳ね飛ばすようにして動き出すと社長を追いかけていく。
社長はいつも明けの日は高い飯を奢ってくれるのだが、それにはまず捕まえなくては行けない。
きっと社長なりの育成法なんだろう。
その証拠に今日もガチ逃げだ。
しばらく眺めていたところ、無事に取り押さえられ泣き喚いている社長を見て満足したので帰ろうと立ち上がると、同僚に呼び止められた。
「どうしたんだ白瀬。お前いつも真っ先にたかりに行くのに」
「失礼な。今日は用事があるんだよ。先に帰るから連中にも言っといて」
「まぁいいけど、お前がただ飯逃すなんて珍しいな」
俺はどういう印象なんだ。
「じゃ、そういうわけだから」
俺は、社員達に捕まり胴上げ状態で運ばれていく社長の横をすり抜けると、会社を出た。
それから電車を乗り継いで、時刻はもうすぐ十一時。
今日は前々から楽しみにしていた宝くじの当選結果の発表日だ。
ネットで確認してもいいけれど、こういうのは店頭で確認するのが通の楽しみというか、俺の数少ない趣味の一つだ。
まぁ、当たった事などないんだが……。
そんな事を考えている間に宝くじ売場が見えてきた。
ここは家の近所のショッピングモールに併設されている売場で、いつもなら数人は並んでいるのだが、今日はまだ誰もいないようだ。
俺は窓口に近づくと、カバンから宝くじを取り出し、両手で持って窓口に差し出す。
「これ、お願いします!」
さながらラブレターのように差し出しだされた宝くじを店員のお姉さんが苦笑気味に受け取り、確認してくれている。
この確認作業を待つ間のドキドキ感がたまらなくいいのだ。
俺は、いつもこの宝くじ売場で確認して貰っている。
家が近いのもあるが、ここで3等が出ました! と、でかでかとプレートに書かれているのが好みなのだ。
3等、いいじゃないか現実的で。
このプレートが良い味を出してると思う。
看板を眺めながら、待つ事しばらく。
二セットで二十枚程度の数のはずが、店員さんの確認作業が妙に長いのが気になった。
もしかしてそこそこ高額が出たのか? と、気になり覗いてみると店員さんは最後の一枚を何度も確認しているようだ。
「うそ……当たってる?」
確認作業を眺めていた俺の耳に店員さんがポツリとこぼした一言が聞こえてきた。
俺は素早く賞金額の一覧に視線を移すと、賞金額の一覧には一等が五億、二等が二千万、三等が百万とある。
貧乏リーマンの俺にとっては十万でも大金だ。
しかし、店員さんのリアクションからして十万やそこらではなさそうだ。
百万は行ってる反応に見えた。
二等の可能性も無くはないんだろうが、2等なんてそうそうでやしない。
――つまり三等。
百万か、おめでとう、俺。
まぁ、たまには社長に奢ってやるのも悪くないかもしれない。
なんて考えていたら店内から視線を感じた。
店員のお姉さんが、なんともいえない表情で俺を見ている。
確認作業が終わったようだ。
「あ、あのお客様、落ち着いて聞いてください」
なんだろう、この前置き。
辺に期待してしまうじゃないか。
「1等がご当選されているようです」
ん?
「あの、今なんて……?」
いやいや、3等じゃなくて?
どっかにドッキリ大成功のプラカードを持ってるスタッフさんが待機しているんじゃ?
プラカードを探して周囲を探っていた俺に店員さんがもう一度伝えてくれる。
「1等。五億がご当選されています!」
「ほ、本当ですか? 冗談じゃないですよね?」
「本当です。おめでとうございます!」
小声で顔を寄せながら満面の笑みで伝えてくれる店員さんの言葉が鼓膜を伝わり、脳に伝わると同時、俺は叫びだした。
「まじですか! 五億! やったああ!」
5億、5億である。
もはやなんで店員さんが小声で伝えてくれたかなんて考える暇もなく叫び、はしゃぎ、転げまわる。
少々どころではなく大人気ないが、もはやそれどころではない。
あまりの感激に、この喜びの度合いを表現しようと、さらなる奇行を披露しようとしたのだが。
信じられない激痛が体中を駆け巡った。
「おおおお! やったああ! 五億! 五ぉあああ! 痛あああッ!」
俺の人生で味わったことのないレベルの激痛が体を駆け巡る。
骨折や打身、打撲などの痛みとは全く違う全身の神経が焼きつくような痛みだ。
一瞬、病気も考えたが、ずっと健康体で、夜勤の時を除けば食事にも気を使ってきたはずだ。
なのに全身の激痛は治まるどころかさらに激しさを増していき、視界が霞みだす。
俺は激痛の中で、当選くじを強く握り締める。
「あがッ……ッ!」
もはやほとんど声も出ない、周囲の買物客や店員のお姉さんが何があったのかわからずかたまっている。
どんどん激しくなってくる激痛に俺は最後の力を振り絞って抗った。
「まだだあああ!」
もう俺は、死ぬ。
妙な確信を得た俺は、やっておかなければならない事があることを思い出した。
気合で体勢を立て直し、周囲からどよめきが上がる中、家に向かってよろよろと歩き出す。
なんとか自宅のアパートまで辿りつき、自宅のドアまで移動すると、ガクガクと震える腕を押さえつけて鍵を開ける。
ドアを開けっ放しにして家に入ると、寝室へ向かい、なんとか意識を保ちながら机の上のパソコンの電源を入れるとDドライブを完全に消去した。
こいつだけは俺の手で消滅させなければならなかったのだ……。
もう悔いはないと倒れこんだ俺に愛猫のみーちゃんが擦り寄ってきた。
せめて、最後は愛するもふもふの中で……。
俺は、みーちゃんのもふもふに顔を突っ込もうとして……。
「ニャッ!」
みーちゃんの猫パンチによって、俺の意識は刈り取られた……。
――
ふと、意識を取り戻していることに気がついた。
周囲があまりに暗いため気づくのが遅れたようだ。
あの全身の激痛は嘘のように消え去っている。
だが、体の感覚は確かにあるのに首も手足もどこも動いてはくれない。
あの原因不明の激痛は何だったんだろう。
すると、仕事や家族、五億の行方など、疑問でいっぱいの俺の耳に話し声が聞こえてきた。
「これで起動しなかったら絶対私のせいだよね……。資金も全部使い切っちゃったし……」
「何言ってんのさ、これの召喚と定着の費用が一番かかってるんだよ? そもそもあたし自身成功してる自信はないってのに」
2人とも知らない声だ。
起動や定着に成功?
手術の話なのだろうか。
「僕は自信あるよ! 完璧だよ!」
と元気のいい3人目の声が聞こえてきた。
3人とも声が高いことから女性のようだが、3人目はやけに声が高いし子供だろうか。
「テールはそうだろうねぇ……。おかげで定着はほぼ無抵抗だったし、見事なもんだよ」
テール、おそらく名前だろう。
流暢な日本語の割りにずいぶんハイカラな名前だ。
テールは褒められたのが嬉しかったのか、フフーンと嬉しそうな様子だ。
「でも、カルムの召喚だってすごかったよ! あんな小さな陣だったのにあんなになって!」
「やめとくれよ。本来あんな規模になりっこないんだからさ……。やっぱりこれでだめだったらあたしのせいかねぇ」
落ち着いた声の女性はカルムというらしい。
やはりというか日本人っぽい感じではないな。それに、今度は陣か……。
なんか召喚で陣までくるともう俺の病気は相当深刻で、家族はこんな怪しげな連中に俺を預けてしまったんじゃないかと心配になってくるな。
「そんなことないよ。陣はあんなになったけど、安定はしてたよね? 実際定着したコアに問題はなかったと思うし、やっぱり私のが……」
「ほらほら。落ち込むんじゃないよ。あたしたちはロワの技術には一目置いてるし、あのままじゃ留年だったんだ。感謝してるよ」
さっきから、落ち込みっぱなしの声の持ち主はロワかな。
うーん、いまさらだけどここ日本なんだろうか。
喋っている言語はどう聞いても日本語にしか聞こえないけど、出てくる名前がみんな日本名じゃないよなぁ……。
「そら、落ち込むのは起動が失敗してからにしな。失敗したら来年までたっぷり落ち込んだらいいさ」
「うん。そうだね。まずは起動するかどうか試してみないと」
「僕は自信あるよ! なんたってお金全部使いきって完成させたからね!」
テールは気楽でいいねなんて流されている。
三人はどういった関係なんだろう。
なにが起動するのか知らないけど、この3人のやり取りを聞いていると応援したくなるな。
「じゃ、起動するよ?」
ロワの確認にうなずく気配が伝わってくる。
すると、俺の全身に波のような何かが染み渡っていく感覚を感じ、それまでまったく動かなかった手足が動くのを感じ、視界がじわじわとピントが合うように鮮明になっていく。
俺の体が起動するの?
今までのそういう流れだったの?
不安になった俺は視力だけでも早く回復させようと目に集中すると視界が一気に晴れ、不安そうにこちらを窺う三人を捉えていた。
一人はちょっとクセのあるくすんだ金髪のショートヘアに澄んだ青い瞳。
煤だらけの学校制服のような服装に小さめなローブを羽織っている。
華奢な体躯と合わさって美人っていうより可愛いっていうような感じだ。
ちゃんと身支度を整えたら美少女になりそうだが、自信なさげな雰囲気が見事に相殺させている。
おそらくこの子がロワだろう。
次に、その隣にいるロワと揃いの制服にやはり同じローブを羽織った人物がカルムだろうか。
カルムは頭に短い捩れた角のようなものをつけていて、肌は褐色。燃えるような瞳とふわっとした瞳を同じ色のロングヘアーを持つ美人さんだ。
最後に3人目の人物、テールなんだが……。
これは妖精とかそういうあれなんだろうか。
サイズは手のひらより大きいくらいで、空中に浮遊した石に座りながら嬉しそうにこちらを伺っている。
テールはシャツと短パンという虫捕り少年みたいな格好をしていて、髪は明るい茶色に髪と同じ色の瞳を輝かせている。
どうも女の子かと思っていたら男の子みたいだ。
「起動したよ! やった! やったぁ!」
「これでひとまずは安心できるね」
「ねぇねぇロワ。もう動けるのかな?」
ロワ、カルム、テールが一様に嬉しそうな表情をしているのが見て取れる。
俺は今の状況が掴めずにかたまっていたが、妖精っぽい男の子の一言で自分の体が動けることに気付いた。
まずは手を動かし、足も軽く動かしてみる。
手も足もちゃんと動くようだが首と腰が何かに固定されていて動かせない。
「ふむふむ。ちゃんと動けるみたいだね。指示出してないのに動いたのはやっぱり、ちょっと不具合があるのかな?」
ちょっと動いてみただけなのに不具合扱いとかちょっと悲しい。
「とりあえず暴れだす気配もないし、固定具を外して立たせてみようか」
どうもひっかかる発言が気になるが、様子を見ていると、2人がロックを外してくれたので、何歩か歩いてみせる。
おぉという歓声が、なかなか心地いい。
さらに、首が自由になったことで、ここが大きめな倉庫みたいな建物であることがわかった。
周囲には石材や、薬品瓶がちらばっていて、地面には魔法陣のような複雑な円形の模様が描かれている。
あまりにも怪しすぎる医療施設に今さらながら自分の体がどうなっているのか心配になり、自分の体を確認してみたのだが……。
なんだこれ。
俺の体は石っぽい鉱物に覆われているようだ。
あの激痛にしては外傷がないと思ったのだが、こんなギプスをつけるような怪我をしていたのだろうか。
ていうかこれ、ギプスにしては関節部分がおかしい。
腕を曲げようと思うと継ぎ目も無い石柱みたいなギプスがグニャッと曲がる。
気持ち悪いことこの上ない。
なにより手だ。指がない。
ていうか丸いボールみたいなのがついているだけ。
……これが手みたいだ。
首は回そうと思うとグルグル回るし、腕も足も関節を無視して逆方向にもグニャグニャ曲がる。
もうこれどう考えても元の体じゃないな。
だってギプスの下の感覚がないもん……。
そこでふと、机の上にある大きめなガラス容器に何かが写りこんでいる事に気がついた。
丸いボールみたいな胴体と手。
模様のない細い柱みたいな腕と脚。
そして胴体からニョッキリ生えている目のように何かがついた石柱。
これに該当する物体は見渡す限り一つしかない。
つまり……これが俺か。
「だせぇぇぇぇッ!!」
「「「喋ったぁぁぁ!!」」」
三人は驚き、身構えながら俺から距離を取る。
「だせぇ! 酷過ぎる! なんなの!? コレが俺!? 嫌だぁぁ!」
どうしてこうなった。
気絶して、目覚めたらこんな体に……。
ないだろ!
ロボになりたいとは思ってもこれじゃねーよ!
あんまりな状態に俺が叫き散らしていると、
「ひど、ひどいよ! 一生懸命作ったのに! それに、凄く格好いいのに!」
様子を窺っていた金髪の少女ロワが俺に食ってかかってきた。
どうも俺の発言が気に入らないようだ。
ていうか、この子今、格好いいって言ったのか?
これを?
信じられない一言に、俺はもう一度自分の体を見下ろし、確信を持って言い返す。
「ちょ、待ってくれ。これ、格好いいか? いやいや、ないだろ!」
さすがにこれはないだろ。
デザインもそうだが、間接もないのにグニャグニャ動くのが最高に気持ち悪い。
俺は、身振り手振りを交えながらこの体について言及していたところ……。
「うぅ……かっこ、いいもん……」
ロワは、俯いて今にも泣き出しそうになっていた……。
やぺぇ。
さすがに、女の子を泣かせるのは体裁が悪い。
「あ、あれぇ、でもよく見たらカッコイイかもなぁ……。特にこの手先なんて……無理だよ! 嘘つけねぇよ! かっこ悪いわぁっ!」
「うわああん! また言ったああ!」
泣き出してしまった。
ロボ好きとしての矜持がこれを許さなかったんだ……。
俺は、泣かせてしまったロワから目を逸らし、助けを求めようと周囲の人物を見渡したところ、ロワの後ろにいた赤髪の女性、カルムと目が合う。
俺の視線に気付いたカルムは頭を掻きながら困ったような笑みを浮かべると、切り出した。
「悪いね。あたしはカルムってんだ。まぁ、ロワは置いといて、そろそろあんたが何者なのか教えてもらってもいいかい?」
やはり、赤髪の女性はカルムであっていたらしい。
やっと現状がわかりそうだ。
俺は、泣きながら俺の胴体をバシバシ叩いているロワを放置して、名乗り返す。
「俺は白瀬滝也だ。ただの会社勤めのリーマンで、目覚めたらこんな体になっているし、今の状況がさっぱりわからないんだけど……俺に何が?」
さっきまで取り乱していたし、少々決まりが悪い。
頬に該当しそうな位置をポリポリと掻こうとして指が無い事を思い出し、またしてもブルーになっていると、俺の言葉を聞いてかロワもカルムも凍りついたようになっている事に気付いた。
なにかまずい事いったかなと二人を窺っていたところ、恐る恐るといった様子でロワが口を開く。
「シラセ・タキヤ様……ですか? あ、あの。もしかして王族の関係者であらせられるのでしょうか……?」
んん?
「いや、俺はその、王族? とやらじゃないよ」
ロワは目に見えてほっとした表情をして、
「よ、よかったぁ……。でも、なんで喋れるの? それに、魂には考える能力は無いはずなのに……」
確かにそうだ。
さっき見た感じ俺には口が無い。
なんで喋れるのか俺もわからないしこっちが聞きたいくらいだ。
それより今魂とか言ったか?
俺は、内心びびりつつ、聞いてみる事にした。
「あの……魂って何? 俺、さっきまで家にいたはずでさ、それがどうしてこ――」
「おええぇっ!」
えぇ!?
俺の話を聞いていたカルムが突然、ゲロゲロと吐き始めた。
カルムは吐きながら号泣しているようで、四つん這いになりながら俯いている。
すると、そんなカルムがゆっくりと顔を上げて……。
「ごめんよぉ! 召喚したのだって悪気は無かったんだよぉ!」
吐いたものをベットリとつけたまま俺に抱きつき、謝罪を始めた。
なんで急に謝るの!?
召喚ってなんのことだ?
つか、臭い!
抱きついてくる吐瀉物まみれのカルムを押しのけていると、ロワが申し訳なさそうにカルムの話を補足してくれる。
「その……私達はゴーレムのコアに入れる魂を召喚したんだけど……その、生きてる君の魂だけ召喚してしまったようで……」
召喚とか魂とかよくわからないが、更に細かく補足してくれているロワいわく。
俺はどうも、うっかりか何かでこんな体にされたらしい……。
それに、召喚やらが本当だとして、あのさっきから楽しそうに俺達を見ている妖精、テールの存在……。
ここ、日本じゃないな。
日本じゃないっていうか、信じられないけど、違う世界、なのか?
「あ、あの、大丈夫……ですか?」
俺は相当呆けていたようで、ロワが心配そうにそわそわしながら聞いてくる。
「あ、あぁ、まぁちょっとっていうかかなり驚いたけど、大丈夫かな。……一応聞くけど、戻せる?」
「その、ごめんなさい……戻せません……」
ロワは申し訳なさそうに手をギュッと握ると、俯きながら答えた。
そっかぁ……。
戻せないのかぁ。
まぁ、やっちゃったもんはしょうがないし、泣き喚いても戻れないのなら切り替えていくしかないよな。
とりあえず、この状況を何とかしないと……。
俺は、せっかくの美人を台無しにして俺に謝罪を繰り返しているカルムを宥めようとしたのだが……。
感極まったのか、突然力んだカルムに押し倒された。
「ごめんよおおお! うっぷ……許してええっ!」
突然押し倒された俺は驚いてカルムの顔を見ると、カルムはマウントを取った状態で今にもまた吐き出しそうだ。
……やばい。
この体勢はやばい。
「ま、待て! ほら! 俺はもう気にしてないから! 頼むから泣きやんでくれよ! うわっ! や、やめてええっ!」
俺の上で泣き叫んでいたカルムがまたゲロゲロと吐き出し、俺の体に降り注ぐ。
こんな体にされた上にこの仕打ち。
あんまりだ。
結局、俺はカルムにされるがままゲロゲロと浴び続ける事となった……。