あなたの息子さんは今どこに?
Q あなたから見て、あなたの息子さんは正常だったといえますか。
A あのこはね、正常さを喪失したり忘れたり忘れた演技をしたり、あるいはただ脇に置いたり、小ちゃな池の底に沈めては、朝になるとまた取りに戻ったり。毎日まいにち見てるこっちがくたびれる感じ、私には簡単に答えれないなって。
動きはしてた、当然。あのこが健全な男の子だったのかどうかは、そいや考えたことなかったな私。
Q あなたの息子さんが今いる場所についての、あなたの考えをお聞かせ願えますでしょうか?
A 居場所なんて分かんないっつってんでしょが。本当もう、なんなのあんたたち何度もなんども。
Q あなたの息子さんはあなたに呪われても当然の存在なのでしょうか?
A あのね、私のことを魔女と呼んで、あれやこれや建てる前にもっと目力確保してからきてほしいなって。
Q ねぇねぇあんたってオレらのこととか未来のオレらの息子らのこととかも呪う気なん?
A 起こりえることだわね、まずそれが一つ。それから、そういうことが起きるのを回避することは難しい、ということも覚えといてほしいかなって。起こったことを起こらなかったことにする努力とか起きてなかった時のこと、あんたたちはそういうことを考えるでしょう、みちたりた蜂しかいない世界なんてないって知っているでしょう。望みは捨てなさい、としかいえないんだってこっちとしては。
Q 質問を変えます。あなたの息子さんがいたのはバレー部でした、これはご存知でしたか。
A もちろん知ってるけど。
Q 行方不明のあなたの息子さんはいまや行方不明の彼、ということになってますが、彼は前まで、あの清潔感のある彼、といういい方をされていました。ですがここのところ彼はむしろ不潔になりたがっていたと一部の男バレ部員が証言していて、このことをあなたはご存じでしたか。
A 初耳。
Q らしくなさすぎると連中は同意したし皆が思っています、皆いってます。どうしても置いていかないといけなかったんですかね。こんなふうに僕たちを置いていくなんて。僕たち何度もなんども考えてるんです、こんな置いていき方はないと、彼らしくないと。終わらなかった言葉があるんです、彼の教えてくれた幻聴を食べやすい形にするやり方や、じぶんの耳を忘れてしまうくらいのスピード、僕たちの約束だってそうだ。確実過ぎるフライデイを爆破するためのバンドを作ろうって、でも本と、そういった関係があるのかないのかも分からないものたちを僕たちは今回のことでどれかはピースになっているのかもと考え続けているだけでもうずっと堂々巡りです僕たちは彼のなめらかさにきっと恋をしていたひどすぎる彼はいいました僕たちと一しょにいる場所でならカフカの手紙が勝手にすぐに咲いてくるそれが嬉しいと嬉しかったなのに僕たちを置いていくことがどうしてできたんですかそれよりももっと大切な肉離れなんてあるんでしょうか教えろよクセぇんだよ魔女のいるとこってさぁ! あぁクっセぇなもぉ! 腹立つことばっかだ、他の誰にも今回のことは口に出して僕たちの前で話すことを僕たちは許してない、ねぇだからあなたが教えてくださいよ。大切な肉離れ?
A 肉離れは、きっとしてない。あんたたちの見方はともかく、私の息子なんだから。
Q もう一度訊きます、あなたの息子さんは今どこに?
A 一つだけだけどそれでいえることは確かにある、あのこやあんたたちのこれまでのすべての合唱コンクールで不必要だったすべてのものを混ぜてつくった美しい色あんたたちの知らない色、今のあのこの眠る場所はとても美しいところだってことだけは。
Q どうしても彼のことで訊きたいことがあります。プールの時に僕らの裸足と、彼の裸足はとても似ているって、話題になったことがありました。見た目もそうですし願いごとを足裏に埋め込んでいるところ、過去に叶ったのだかどうなのかも分からない願いごとを埋め込んでいるところなんかは、特に。
僕らと彼は似ていましたいっとき。いつまでもとはもうその時点から思ってなかったです、だけど似てて、似てて驚き、笑えてきたのにもちょっと驚き、似ていました。うれしかった、似ていたすごく。 そう、僕らには彼が内気な人間にしか見えなかった。本当のところは違ったのでしょうか?
A 疑いの余地なくあのこはそりゃもう内気だったさ。辛い選択をしなきゃならない時の舌の裏で苦痛を隠してるあのこの癖とか。あんたたちと出会ったことは大きなことだったと私は思うんだけど?
Q そこにあるそれはストローですか、あなたの後悔ですか?
A ここにあるように見えるこれは、私の冬の必需品だったことがあるモノです。
Q 僕らはここに来るまで歩いてきたんですが今年の四月って雨ふりばかりで通学路には落ちて濡れた花びら。僕らの靴裏、それに新一年生たちの靴裏。それで途中、ちょっと思いついて僕らは靴裏にくっついているものや道にはりついているどこの誰かも分からない声たちにインタビューをしてみたんです。
声たちはいいました。
「スキップする犬についていくのがやっとのボク」
「腐っていくリモコン。それを口にくわえているだけの係です」
「俺がいる教室の屑籠は穴だらけだ。誰が何のために撃つんだ」
「僕の場合、今日のことを唾としか呼べなくなっても差し支えない。僕は普段、唾を忘れている。僕は普段、唾を吐いている。唾だけは否定できないし誰も飲めない唾」
「彼は回ってきたマイクを手に取り、次の瞬間にそいつと交尾してみせたんだった。確かに影響受けてるかもな」
「滑り止め付きの手袋が今すぐ見たい」
「春物を集めたら、誰でもなかった」
「ブログやりてぇブロガーになりてぇけど解毒しなきゃだだけど名前だけはもうある。彦星スーサイズス、って名前にすんの」
「まだ卵の章」
「もういいよ可燃性で」
「くわえた花の枯れる音」
「薄いなこの手」
「県立高校で出会うべきブレイク」
「栞がわりにはならないさ」
「奇跡が皆無の通学路」
「約束を引きちぎることで治せる裂け目があまりに多すぎる」
「踏まれっぱなしの空耳みたいだったら良かったのかな、あの時あの場所で」
「やがて来る要約に、どうかお前たち全員殺されてろ」
「フローリングに砂糖をこぼさないようにして、ずっと生きていたい僕は本とにそういう生き方がいいのに」
「タイトルは新宿ランドセル」
「十六歳。とっくに楽器類だった?」
「そこそこの僕の苦労をそこそこの冬だった冬の気配が残っているテーブルに載せたいだけ」
「誰とも壁とも、ぶつかったりしんくなる、どこにも行けんくなるように俺を苦くしてよじぶんでも分かるくらいの苦味です神さま。いつも何度でも苦いから俺の体も苦くしてほしいですだ、もうどこにもぶつかれないレベルで苦い俺がいいんすマジ」
「中学生なら誰でも、目には見えないファミレスでほおづえをついていないといけない夜があるものだ。今のこれは大切な肉離れ、だけど個人的にはあの夜からどんどん離れていくってことが、すごい悲しい」
僕らはもしかしたら本とはあなたの息子さんがどこにいるのか、知りたくないのかもしれないんです、だからお願いだから、これがどういうことなのか教えてください。あなたが教えてください、何をほんとは建てるべきなんでしょうか教えてくださいお願いします。
A 月が綺麗ですね。
Q オレらあんたと戦って勝てる?
A それはないしょのハーフムーン。
Q 今日は、いやもうこれで伺いたいことは本気で最後です。あなたが息子さんに今一番伝えるべきだと感じているのは、どういったことなのでしょうか。
A 選びとってほしい、なんでもいい、それを自分に示してみせて。今そうしたいものをちゃんとそれを、その手にとって。強く握って。




